少年ファング 創刊号


 シリウス、REX、ブラッド、アライブと続いた最近1年間の月刊誌創刊ラッシュ。そこからはちょっと別の流れになる。仮想ライバル誌と目されるのはコロコロ、ボンボン、ブンブン。後述するがブラッドも若干、こちらの路線とは交錯する。
 児童向けマンガといえば、おもちゃメーカーやゲームメーカーとのタイアップ。コロ・ボン・ブン既存3誌の今のキラーコンテンツをあげてみると、


 コロコロの断トツさが際立つ。現在はブーム、連載とも終えているが、かつてミニ四駆の「レッツ&ゴー」で一世風靡セピア。ほかにドッジボールベイブレードで当てたことが記憶に新しい。毎年夏には、来年の春のドラえもん映画のマンガ版が数号に渡って連載され、小学生の頃にはその時だけちょくちょく買っていたものだが、Fが逝って声優も代わってリメイク続きの今はどうなってるのか。
 ボンボンは徹頭徹尾ガンダム頼りだったことが如実。腕時計の金属ベルトを使ってシールド装着していたスーパーガンダムこと「プラモ狂四郎」がメディアミックス(当時そんな言葉はなかったが)の最大のヒット。のっかっていたのはガンダムではなく、ガンプラだった。あれから20年以上。コロコロと同版型だった本誌サイズを2006年1月号から一回り大きくして誌面もリニューアル。講談社でよく描いてるベテランを登用し巻き返しを図っているが、メディアミックスがデルトラ・クエストとかいうよく分からない洋モノファンタジー文学というところで、迷走。
 ブンブンのゾロリ+ズッコケ+怪談は、息の長い児童向けコンテンツ。爆発的な人気にはなっていかないだろうが、手堅いところか。コロボンとは多少、ターゲットとする層が教育ママよりな印象をもつ。



 そんな3誌に切り込むファングが擁するメディア展開は、ネトゲ。「ブライトキングダム オンライン」というMMOファンタジーRPGのマンガ版を連載。創刊号は、ゲームのキャラクターがオリジナル音声でしゃべるデータCD-ROMが付録。ファングの創刊日である今日、ゲームも正式サービスを開始。ゲームでは、ロード画面でファングの告知をする。
 ゲームは今流行りの基本料金無料+アイテム課金。最近は月額基本料金制より、こちらの方式を採用するネトゲが増えている。もっとも、たいていは月額で1,500円〜2,000円くらいのアイテム消費になるようバランス調整がされていて、いわゆる廃人や俺TUEEEしたい人だけじゃんじゃんつぎ込んでください、となる。少年ブラッドも8月発売号からやはりMMOファンタジーRPGで「エミルクロニクルオンライン」のマンガ版を連載開始。両者は同じソフトバンク資本。こちらは、ゲーム内イベントの結果によって物語の進行や登場人物の生死が変わったり、レアアイテムがもらえるチケットが本誌付録になる。単なるマンガ化ではなく積極的にリンクさせている(ブラッドはやはり同じSB資本のラノベレーベル・GA文庫との連動企画も用意中のようだがまだ具体的な動きは見えていない)。



 これが、まったく読めないので、困っている。
 素直に考えて、コロ・ボン・ブンと重なる読者層を狙っているのだとすれば、ネトゲを入り口にして客が呼べるとは思えないから。先に並べた、コロ・ボン・ブンのタイアップコンテンツを見返してもらえば分かると思うが、メジャー人気のあることは前提条件。それに比べて「ブライト」「エミル」は、サービスを開始したばかりで知名度認知度プレイヤー数でまったく及びもつかない。また、ネトゲは友達や家族を目の前にしていっしょに遊べない。画面の向こうではともかくモニターの前でスタンドアローンな子供に、その親はいい顔をしないように思う(20年前だってファミコン禁止令の出ている家庭はあったけど)。それにしても、正直、安いタイアップだなぁ……、である。そして、そこのところのチープさには、子供ほど敏感だ。チープで広がりのないコンテンツを学校で友達同士で話題にするほど暇じゃあないだろう。


 つまり、読めないのは、コンテンツとしての強さではなく、なんでブラッドとファングがネトゲをパートナーに選んだのか。別にネトゲだけでなくていいのだから、もっと強いコンテンツとどんどん新たに提携していけばいいのだけど、それでもとりあえず一番手がなぜネトゲなのか。
 そのまんま安く組めたから、という理由はあるのか。適当なコンシューマーゲームのタイトルよりは。ファンタジーRPGの子供人気は未だに高いとして、一方でRPGの大作志向が進んで大型タイトルは媒体を選ぶ(そういう意味ではテイルズを引っ張ってきたREXは頑張った)。じゃあ、組んでもらえそうなファンタジーRPGはないか……というと、ネトゲがあった。ネトゲのほうでも、今年の上半期だけでこれだけの本数がリリースされる中で、ライバルと少しでも差をつけて新規の登録を獲得していくのにマンガは使えるはず、と考えておかしくない。
 両者の思惑が一致を見たとして、それで客が呼べるかというとそれはまた別の話だが……。



 とりあえず、ファングやブラッドの読者でネトゲやってみたいなぁと思ってる小学生や中学生へ。例え無料だとしても、2chに書き込んで憂さを晴らしてるほうがまだ健全だぞ、っと。





 この手の児童向け、あるいは清く正しい路線での少年向けマンガ誌は、参入が後発(初めて?)のブンブンだけが生き残っているのだな。マンガボーイズ(徳間書店、1994年〜1995年)、少年王(光文社、1994〜1997年)、GOTTA(小学館、2000〜2001年)という討ち死の歴史を、ファングやブラッドをどんなふうに教科書としているのか。


 ……だから、作家が新人ばかりなのか?






表紙・巻頭カラー「フール◇フール」(小林ゆき)

 57Pもあるのに、なんでこうも駆け足なストーリー。第1話の中にまず提示しておきたい要素を詰め込むのに精一杯で、コマの一つ一つの荒さが気になる。勢いや雄大さになっていない荒さ。このマンガを読む上で読者に知っておいて欲しいこと、じゃなくて、これを見せたい!というモノに絞ったほうが良かったのでは。


巻中カラー「レイスイーパー」(垣野内成美)

 ベテラン作家は一挙91Pで登場。さすがにこなれていて読みやすい。91Pが苦にならない。一方で、するするいけてしまうので、相対的にアクが強くなるほかのマンガから続けてよむと、テンポが慣れないか。


巻中カラー「ブライトキングダム」(田辺萌々)

 例のネトゲマンガ。ティファに似たヒロインの娘をもっといじって欲しいなぁ。タイアップがだからちょいエロもダメ?


巻中カラー「少女奇談 まこら」(阿部洋一、原作:平野俊貴植竹須美男

 幽霊や妖怪の見える少女が、突然いなくなった母親の手がかりを探しもとめて、着物と手ぬぐいと塗り壁の3妖怪といっしょに旅立ちを決心するまで。
 絵柄のクセに反して、創刊号で一番、正統派と言える少年マンガ。初めての戦いを終え、暗い田舎の夜道を歩く少女を、木の電柱の街灯の下で3妖怪が待ち受ける。その少女に、着物がオーバーコートに、てぬぐいがマフラーに、塗り壁がキーホルダーっぽいモノに変身して、フルアーマー少女に合身するシーンなんかはまさに。
 創刊号には妖怪マグネットがおまけで2個付属。編集部でも力を入れてる連載だろう。それが今のところ、うまく回っている、と見たが。


「超合金トビタケーハチ」(ゑびす屋ぼん子)

 Moo念平かと思ったり思わなかったり。すきな絵柄。ヒョウ柄保健医のおばさん顔がステキ。


巻中カラー「天狗陰陽道」(笠井あゆみ、原作:桑畑絹子)

 BIRZ用の原稿が紛れてた?


「青春5」(沙上るか)

 これ、いますぐ切ってくれ! いますぐ!





 編集長の吉田知正という人は、コミックうさまんをやってた人らしい。


 つまり、ファングは、零式のリベンジでもあるってことだよ! というわけで、来月号も買うよ!



月刊 少年ファング 2006年 09月号 [雑誌]

月刊 少年ファング 2006年 09月号 [雑誌]