ジャンプスクエアが増刷されてしまうマンガ業界の5年後10年後は決して明るくない。


予告してたシリウスの話とも微妙に絡むと思いねぇ。*1


12月4日発売の創刊2号目(50万部発行)の売行きが創刊号を上回る勢いとなり、集英社は急きょ6万部の重版を決定した。11月2日発売の創刊号に続く連続重版は、マンガ史上では記録に残る快挙。

http://www.shinbunka.co.jp/

まんが王八王子店の日吉雄さんは「創刊日の夜からサラリーマン層の購入が目立つ。かつてのジャンプ読者に人気の和月さんらが連載しているので、読者が戻ってきたのでは」と話す。
(中略)
05年に講談社が「月刊少年シリウス」を創刊させたのを始めに、「月刊コミックREX」(一迅社)、「月刊少年ブラッド」(モビーダ・エンターテイメント、現フレックスコミックス)、「月刊コミックアライブ」(メディアファクトリー)、「月刊少年ファング」(リイド社)、「COMICリュウ」(徳間書店)、「月刊ヤングキング」(少年画報社)と相次いで創刊したが、「ブラッド」「ファング」はすでに休刊し、他誌も「いずれも苦戦を強いられている」(日吉さん)のが現状だ。また、「プラモ狂四郎」などで人気だった少年向け月刊誌の“老舗”「コミックボンボン」(講談社)も売り上げ不振を理由に休刊するなど、マンガ誌全体の売れ行きは落ち込んでいた。
(中略)
マンガ産業論」などの著書があるマンガ研究家の中野晴行さんは、「マンガからちょっと離れてしまっていた20代後半から30代の読者を再びマンガに戻せた功績は大きく、新たな鉱脈を掘り当てたようなもの。さらに注目度が高まれば、『週刊少年ジャンプ』の読者も目を向けるようになる。昨今の映像化に頼ったヒットではないので、他社もいいヒントになったのでは」と話している。

http://mainichi.jp/enta/mantan/manga/news/20071124mog00m200044000c.html


創刊号の10万部増刷に続いて、創刊2号でも6万部を増刷した、ジャンプスクエア
でも。
天下の集英社月ジャンつぶしてやる仕事じゃねーな、という感じもするのよ。そりゃ売れないよりは増刷するほど売れたほうがメデタイのはそうだけど。
月ジャンがターゲットにしてた小中学生若年層にマンガを普及させる仕事を週ジャンに全おっかぶせにしちゃって5年先10年先はどうなの?、って。


確かに、少年層を直球でターゲットにした新創刊のマンガ誌は、シリウスしかり、休刊したブラッド、ファングしかり、どこも芳しくはない。
2005年から現在までに創刊され、季刊以上のペースで発行する一般向けマンガ誌を創刊順にあげると、

  • 2005年
  • 2006年
    • ブラッド → 休刊
    • フォワード
    • アライブ
    • ファング → 休刊
    • リュウ
    • 月刊ヤンキン
    • Beth
    • ヴァルキリー
    • シルフ
    • REDいちご
  • 2007年
    • ガンボ
    • チャージ
    • エール!
    • ヨシモト → 休刊
    • ジャンプSQ
  • 2008年予定

この中でSQと多少なりとも読者層がかぶるのは、「世帯年収500〜600万円未満」とか「戸建持ち家」とか夢見た属性を除いた年齢層で、チャージ。でも3月の創刊から泣かず飛ばずの印象が強い。*2そしてチャージの読みは外れて、懐かしのジャンプ黄金時代をもう一度読みたい層のため人気作家を惜しげもなく集めたSQが勝利の雄たけびを上げた。購買層としてボリュームゾーンのある第二次ベビーブーマー世代(自分も含まれるけどね)を追っかけて、それがあたった。
けどなぁ。

いしかわ(じゅん) じゃあ「月ジャン」の読者層はどうなっちゃったの?

中野(晴行) 「月ジャン」はもともと三十八万部刷って実売は半分くらいしかない雑誌だから、読者がいない。いないわけじゃないけど、集英社ともなれば、十万台だと読者がいないということになってしまうんですよ(笑)。


「いないことになってしまう」と「いない」は、また違うからね。
いい例が、「小学校高学年から中学生男子を中心とした読者層」をターゲットにして来年創刊予定の少年ライバル集英社が一部撤退をするターゲットを、大賞300万円の新人賞を引っさげて講談社が開拓に乗り出す。マンガ読者を育ててく意味で、ライバルの浮沈の如何はマンガの5年後10年後にとって、大きいはずよ。
まぁ、その講談社も、コロコロとブンブンに敵わず、児童層をターゲットにしたボンボンをつぶしてライバルを立ち上げるんだから、似たようなもんだと言えばそうなんだけど。
だから、SQ(の成功)とライバルの創刊は、低年齢層をターゲットにしたマンガ市場から、これまでマンガ業界をリードしてきた二大出版社がしりぞきつつある象徴的な事例として、憂うべき面があると思うんだけど、どうかね。



それと、SQの派手派手しい実績もいいんだけど、2004年12月に創刊して3周年を迎えたヤングガンガンの健闘振りのほうが、取り上げる価値あると思うんだけど。隔週発売の青年誌の新創刊なんてむちゃくちゃ久しぶりで、しかも1度バウンドで失敗してるスクエニの参入で、当初の不調も1年目のうちにはなんとか建て直して、オリジナル連載のアニメ化を2本出して、頑張ってるのに。一方で同じ隔週発売青年誌のチャージは、まだ何の方向性の見直しもやってない。その点でも、セレブなターゲットを最初に掲げちゃって、今更大きな修正もしにくい高飛車な編集の方針が鼻につく。



あと、「このマンガを読め!」の座談会で、いしかわじゅんのガンボ評が、ものすごく的確、かつ同意。編集長兼任のデジマ社長と3時間くらい話して「“もうじき単行本が出てこれでペイ出来ると思うんですけど”って言ってたけど、単行本なんて絶対売れないよ。でも、方向としては正しい。こういうやり方は絶対あると思う。」、「坊ちゃん」のマンガ版を描いてる江川をくさして「江川達也はなめてるよね。夏目漱石が読んだら、化けて出てくるよ。」。中野の試算だと毎号200万円ほどの赤字を出してるよう。本当に年間でちょうど1億円近い赤字を計上しちゃうんだな。10月に創刊した単行本が売れないのを見て、11月に発行部数を10万部から5万部に減らしたのは、さすがに手を打つのが素早いなとは思ったけど。





*1:つまりシリウスは今週末に延期させて欲しいということだなと思いねぇ。

*2:開始が遅れていたながやす巧新撰組モノの連載がやっと始まって、それ目当ての読者がこれから多少は期待できるか、というところ。