極私的2007年エロマンガ10大ニュース

10位 阿ロ云が創刊12年目くらいにして公式HP立ち上げ

流行り廃りというか創刊休刊廃刊誌名変更の激しいエロマンガ雑誌の中にあって、だいたい12年くらい発行を続けている古株の阿ロ云(平綴じ限定だと最古参?)が、ようやくホームページを立ち上げた。同時に発行元のヒット出版社、姉妹紙の少女天国の2つのHPも立ち上げられており、執筆陣による日替わり更新ブログ、編集部ブログ、ラフイラストの紹介など、なかなか内容が充実している。一時期、ネット上の情報発信を控える形になっていた師走の翁が個人ブログを始めていることもファンにはうれしいところ。ただ、少々ミソがついたのは、編集部ブログの最初のエントリが、阿ロ云を中心に作品を発表していた真海のトレス問題を認め、雑誌掲載と単行本の販売の停止を告知するものとなってしまったこと。いち作家として決して実力に劣っていたわけではないだけに惜しまれる部分もあるが、判断は正しいものと支持したい。一般マンガに目を向けると、追放された真海の過ちが可愛く見えるほどのパクリも横行する昨今だけに。



9位 三和出版系の「DO! BOOKS!」、白夜書房系の「まんがの森本店」が閉店

エロマンガを発行する出版社の直営店として一部好事家に親しまれていた、三和出版系の秋葉原「DO! BOOKS!」と、白夜書房(グループ会社にコアマガジン)系の高田馬場まんがの森本店」が、閉店した。「DO! BOOKS!」は早売り店の機能も兼ね在庫の豊富さが魅力、「まんがの森本店」は自社単行本の表紙をテレホンカードにした特典をつけたり、サイン本販売や原画展示などを積極的に行っていた。立地条件の面で、「DO! BOOKS!」は秋葉原という激戦区にあり、「まんがの森本店」は早稲田通りから裏路地を入らなければならず、少なからず影響があったものと見られる。「DO! BOOKS!」の跡地には実写アダルトの専門店がオープンした。なお「DO! BOOKS!」のポイントカードサービスは、ヒット出版社グループ系の秋葉原「オータムリーフ」に引き継がれたほか、「まんがの森本店」は閉店と同時に店頭で無料配布していた「月刊まんがの森」を休刊させている。



8位 エロマンガ関連イベントがロフトプラスワンで開催

エロマンガ家、エロマンガファン、エロマンガ編集者、および関連業界人が集まったイベントが、1月に「エロマンガイズデッドオアアライブ」として、3月に「エロマンガスタディーズ」として開催された。

エロマンガをメインにしたイベントは、2005年8月の「エロマンガ IS DEAD (OR ALIVE) 4」以来(と思われる)。詳細はLINK先を参照のこと。3月の「Vol.1」内で主催者の一人の永山薫が今年秋頃にやりたいとしていた「エロマンガ・スタディーズ Vol.2」が見送られた形となった一方、来年1/21には、おそらく見送る多忙の理由になったと思われる永山の最新著作(昼間たかしとの共著)「マンガ論争勃発」に関連して、同人を含む表現規制等の問題をテーマにしたイベントが予定されている。



7位 エロマンガ誌の創刊休刊、今年も相次ぐ

創刊休刊それ自体は恒例行事と言って良いところ、エロマンガファンの記憶に今後長く残るようなショックなケースも含まれた。別項として上位で取り上げる。別項で取り上げるもの以外について、特筆すべき点はない。ゼロエクスは「どこが変わったの?」という評価を覆せるのか。また休刊とは異なるが、ポプリクラブの発行元が晋遊社から子会社のマックスへ移動した。



6位 エロマンガ出身作家の一般誌での活躍が今年も盛ん

特にあげておくべきと思われる作家は、以下の通り。

もちろんこの他にも活躍事例は多々あるが、調査労力との兼ね合いと今後要注目か否かという視点から絞り込んだ。いわゆるオタ系雑誌への登板が今年も目立ち、「阿ロ云」のエースである師走の翁のヤンキン登場など雑誌カラーの壁を越えた登板も見られた。来年の要注目は、月吉ヒロキ黒マ王で開始する「痕」など。成年マークはつかないもののエロに偏った誌面を売りに昨年創刊したコミックヴァルキリーヤングチャンピオン烈は単行本を創刊した。
一方、一般誌での活動をひと段落させたヒヂリレイ(ひぢりれい石川マサキ)は、コミックホットミルクやコミックLOでエロマンガに本格復帰。来年1月発売のコミックアライブで「神ぷろ。」が終了する國津武士の今後も注目される。



5位 コミックパピポが休刊

コミックパピポが10月発売号をもって休刊した。休刊の告知は誌上でなされたものの、後継誌等の予定は公式に示されておらず、増刊誌のコミックレヴォリューションも同じく休刊した。発行元のフランス書院は実質的にエロマンガ事業からの撤退を決めたのではないかとの観測も一部で流れたが、主力作家の一人である後藤羽矢子は自身のHPの掲示板で後継誌の予定に触れており(コメント欄より)、大幅なリニューアルを想定した措置である可能性も残る。
パピポ有害コミック問題が過熱していた1991年に創刊し、以来16年間、主にキュートで可愛らしいエロを追求してきた。誌面で活躍した主な作家として、後藤羽矢子きみおたまこ向正義龍炎狼牙、D.Pなど(個人的には諏訪クニミツの去就が大変気になる)。10年ほど前には、エロゲでブレイクしたNOCCHI大槍葦人名義で執筆していた。



4位 松文館裁判最高裁が上告を棄却、わいせつ物頒布の有罪が確定

2005年6月に控訴審有罪判決が出され、被告の松文館側が上告していた、エロマンガ単行本「蜜室」のわいせつ性をめぐる裁判で、最高裁第1小法廷の裁判官4人が6/14に全会一致で上告棄却を決定、罰金150万円の有罪が確定した。平沢勝栄議員の口利きを端緒とした一連の係争は、斉藤環、奥平康弘、ちばてつやといった有識者らが弁護側証人に立ち、性器の“消し”による修正が妥当な濃さだったかどうかなどが争点になった。しかし控訴審判決は、非常に大雑把に言うと、エロマンガである「蜜室」のエロはAVやエロ雑誌の「実写」よりはエロくないけれども性器や結合状態が生々しく緻密に描かれ思想性や芸術性もない、などとする判断に基づき有罪を認定。わいせつ性の定義や法の適用ラインのあいまいさを改めて印象付けた。
また、有罪確定の約2ヶ月後となる8/23、愛媛の同人作家が性器修正の薄い同人を専門店等を通じて販売していたとされるわいせつ物頒布容疑で逮捕、その同日には、AVの画像修正が甘かったとして同じくわいせつ物頒布容疑でビデ倫強制捜査を受けており、わいせつ性に関する最新の判例が示されたことが警察の行動を後押しした可能性が疑われる。



3位 小野敏洋が「上連雀三平」名義の活動停止か

飲尿女神」「アナルジャスティス」などの著作で知られる上連雀三平が、小野敏洋名義のmixiプロフィールで、上連雀名義での執筆活動を「廃業」すると記載し、ファンの間で波紋を呼んだ。最近の上連雀名義での活動は、コミックRIN誌上でフタナリモノエロマンガ「わたしを有明につれてって! 」の不定期連載などがあった。「廃業」が事実であれば、RIN10月号掲載の第9話が上連雀名義による最後の作品となることになる。なお、一般誌コミックラッシュ誌上で小野名義による連載「そらのカナタの!」は特に問題なく継続中である。



2位 司・桃園書房が破産

コミックドルフィンを発行していた司書房、およびグループ会社でコミックジャンボを発行していた桃園書房が9/5、東京地裁から破産手続き開始の決定を受けた。破産に先立ち、7月末から8月にかけて取引関係者に90%の債務減免を願う書面を送付しており、その後事業再建計画の立案やエロ雑誌数誌の営業譲渡などで建て直しを図った模様だが、今回の措置となった。
破産に至る過程では、自社ビルを売却したりエロ方面からの撤退を進める新オーナーと社員との間で確執が取りざたされたほか、1月発売号で休刊したドルフィンの編集者らが、その前に編集部全員が契約解除されていたジャンボの編集業務を引き継がされるなど、混乱が目立った。その後、ジャンボも7月発売号をもって休刊している。パピポと同じく有害コミック問題が喧しかった頃からの長い歴史を持つドルフィンとジャンボは、特にドルフィンが一時期、後の人気作家を多く輩出してきており、世棄犬博内和代、馬利権造)、ぢたま某、花見沢Q太朗、摩訶不思議、米倉けんご琴吹かづきみやびつづる田嶋安恵などがあげられる。ジャンボは最近だとジョン・K・ペー太など。なお、元ドルフィン編集者らは曙出版に再就職し、グループ会社のメディアックスを発行元とするコミック激ヤバ!を創刊している。
破産後の債務整理に関しては、12/11に財産状況報告集会(債権者集会)が予定されていたが、実際に開かれたのか、返済にあてる財産がどれほど残っており返済が何時になるのか、といったことは未確認。



1位 コミックホットミルクが創刊(復刊)

白夜書房から発行されていたエロマンガ誌「漫画ホットミルク」と同じ誌名を与えられ、8月にコミックホットミルクコアマガジンから創刊された。すでに休刊した「漫画ホットミルク」の直系の後継誌は現コミックゼロエクスだが、往年の有名エロマンガ誌の誌名を復活させる試みがエロマンガファンの期待を集めた一方、実際に創刊された雑誌は懐古趣味とは真逆の方向で、コアマガジンが抱えるエース級の作家や他者の主軸作家をふんだんに投入した贅沢な誌面構成となっている。主力作家は、けものの★A-10如月群真月野定規松本ドリル研究所、石恵、レオバルド、天太郎、流一本など。
B5中綴じ・小口シール付き・コンビニルートでも売られており、同様の販売形態で市場シェアトップであるワニマガジン社快楽天と対抗する形となっている。それを象徴するかのように、快楽天の11月発売号では表紙や掲載作品内にホットミルクを意識したネタが盛り込まれた。今のところエロマンガ業界を活性化させる形で話題を提供しており、来年の行方と売れ行きが注目される。







番外編もやる?