ケータイマンガ品評 メモその2 ― 極端なカメラムーブの事例


「iMENU」→「メニューリスト」→「コミック/書籍」→「全76サイト」→「講談社コミックプラス」へ。
開いたトップページのちょうど真ん中に、“映像化&オススメコミック!!”のコーナー。左から順に「頭文字D」「チーズスイートホーム」「のだめカンタービレ」「テレパシー少女 蘭」の4作品が並ぶ。
先々週からNHK教育でアニメが始まった「テレパシー少女 蘭」を選択。「無料試し読み」へ。706KB。第1巻に収録された“ねらわれた街”編・第1話の冒頭が読める。アニメも同じエピソードを扱う。パソコンでも「Yahoo!コミック」でIEブラウザで同じく試し読みができる(http://comics.yahoo.co.jp/kodansha/ihhdatos01/terepasi01/shoshi/shoshi_0001.html)。
ケータイマンガ版は、ページ単位で取り込み、カメラを移動させる仕組み。コマ単位で切り取り、画面を切り替えていくパターンではない。
第1巻の4-5P目にあたる見開きは、ケータイ画面上で下のように分割されている。


lan camera 2


枠線が薄くて見づらいかもしれないが、全部で10箇所に分割されている。



では、ケータイ画面のカメラは、10箇所をどのように移動していくだろうか。

























カメラ移動は下のようになる。


lan camera 1


①「その娘が/この街にやってきて/これから/大変な日々が/始まるということを」

②「ママッ/トースト/焦げてるよっ」

③「あーあ/フライパンも煙あげてる」

④ 蘭の兄の顔のアップ

⑤「うわっ なんだこれ/また/おふくろかあ」

⑥ 兄の名前の紹介 《磯崎 凛:高校2年》

⑦ 蘭たちの住む街の俯瞰

⑧ 蘭たちの住む街の俯瞰 2

⑨ 作品タイトル 《テレパシー少女「蘭」事件シートねらわれた街》

⑩ 第1話タイトル 《♯1 転校生》



紙媒体で読む時に“通常”ありえそうな視線移動は、あえてここで云々しない(“通常”は②→①の順に読むのではないか、など)。見るのにかける時間、紙と目の距離、興味を持つテーマ(絵、キャラクター、セリフ、原作、etc)などによって、個人差は大きい。



注目されるのは、紙の本の形式を想定して描かれたマンガをケータイマンガの形式に移植した場合、紙媒体で許される読み手の自由度が、このような形で制限を受けるケースが出てくるという点。
たとえば、ケータイマンガでは、⑤→⑦→③→⑨→……といった読み方は出来ない。あるいは、①から⑩までの分割範囲に入っていない部分を(じっくりと)読む・見ることは出来ない。③→④→⑤の順で読むと、③は蘭のセリフである可能性が高いように思うが、仮に④→⑤→③の順で読んだ場合、兄の凛のセリフだと思う可能性も出てくる。
そういった可能性=読み方は、ケータイマンガでは取捨選択を許されにくい。
もちろん紙媒体で読む場合には出来にくい、新たな読み方も派生させるだろう。
しかし、紙媒体で可能な読み方の「緩急」「強弱」は、ケータイマンガでは「均一化」「フラット化」されやすいように思える。
作者が何らかの意図を持って行うコマ割り、セリフの配置、構図などでも、すでに読み手はある程度の誘導を受けるが、ケータイマンガではそれ以上に、ページを分割しカメラ移動を行う移植者の「演出」が同じような誘導において決定的な要素を握っているように思える。