世界的な金融危機の拡大と日本企業の海外ビジネスの新たな展開 at 立教大学池袋キャンパス


2008年度連続公開シンポジウム《未来の声を聴こう》法学部講演会−世界的な金融危機の拡大と日本企業の海外ビジネスの新たな展開
http://www.rikkyo.ac.jp/events/2009/03/3332/



昨日は立教大で、うータン(=田中宇)を囲む会に参加。メールで事前登録していったのに、受付では何の確認もなかった。入りは全席の4割程度。
米経済が危機的状況に陥って、昨年の11月あたりから「乞食王子」扱いされるようになってきたと話し始める。アメリカ様を悪く言う政治犯だったはずが、いち早く今の状況を予見していたという持ち上げ方をされるようになって、「陰謀論扱いされてたほうが気楽なんですけどね……」と居心地の悪さを吐露していた。
謙遜ということもあるだろうけど、実際、ここまで先が見えない状況だと、頼られておかしくない人材の一人になりつつあるということだろう。
パネルディスカッションに同席した糸魚川順(元日本興業銀行常務取締役・立教学院理事長)、瓜生健太郎(弁護士・曾我・瓜生・糸賀法律事務所)の2人は、それぞれ独自の視点を披露しようとして、日米同盟と機軸通貨としての米ドルを前提とした議論から抜け出られておらず、抜け出るような方向性を恐れていた(ように聞こえた)。
日米同盟+米ドルの体制とは異なる別の展望を見通すのが、非常に困難なことは分かる。が、エリートであり常人より遥かに実務能力に長けているはずの2人にして、結局のところ現状追認型の思考(現状のルールの枠内で最大限の結果を出す)しか見せられないことには、軽く失望とショックを覚えた。

うータン的には、昨年11月のG20を実質的なドル崩壊への予行演習と見立てた上で、今後のざっとした行方を、

  1. 新たな世界通貨・地域通貨を作り出す
  2. タックスヘイブンヘッジファンド規制で中国やサウジのドルベッグを終了に導く
  3. 石油ベッグ(ロシア含む)
  4. チェンマイイニシアティブの再稼動
  5. 金本位制の再稼動

といったところに見出しているようだった。
いくら金融派生商品がリスクの分散・移転を標榜しても、機軸はドルにあったため、それは見かけ倒しだった。ドルが世界を狭くしていた。広くしてリスクをばらけさせるには複数の機軸が存在したほうがいいのかもしれない。その際、ブロック経済の復活や保護主義政策を再びのさばらせないような協定は不可欠だろうが。
米連銀は、不良債権満額引き受けや破綻寸前の米国債引き受けで、左右の隠しポケットを破裂寸前に膨らませるため、ドルの信頼がさらに落ちるのは確実という見通しは、陰謀論でも何でもなく、1-2年後の事実に育ちつつあると自分も思う。

一連の金融危機まで行き着いた理由を、「欲深さ」にではなく、それが「日常の一部」と化し、誰にも疑問に思わせないようにさせていたと、うータンが指摘していた。小沢の「第七艦隊」発言への周囲の反応についても、「黒船ならぬ黒テポドン」の中で、「日本人の「見えないふり」」と触れている。与党のトップや野党の幹部たちは、決してホンネを表に出さない。代わりに、漢字が読めない、泥酔、といった益体もない話ばかりを表に出してくる。でもホンネを言っていないはずがない、と考える。ホンネを表に出してしまうと何が起きるのか分からない/怖いメディアが書かないのではないか、と思うようになってきた。
訪米で麻生は聞き取れない英語を披露してきただけか? そのように思わせてしまう日本のメディアの報道姿勢が最近、とみに信じられなくなっている。

世界がドルを棄てた日

世界がドルを棄てた日