ケータイマンガ品評 メモその6 ―― 本日のブックフェア会場から

  • セルシスブースは、googleの開発した無償モバイルプラットフォーム「Android」を搭載したdocomoスマートフォンHT-03A」のデモ機を展示。スマートフォン市場で先行する、apple+softbankの「iPhone」でのケータイマンガ配信サービスは、昨年の7月から開始済み。その「iPhone」のデモ機も展示されていたが、「Android」とで、ケータイマンガの可読性がおおきく異なるということはなかった。しいていえば、「Android」にあるトラックボール機能を使うと、一般的な携帯電話で中央のボタンを押しながら読んだり、PC向けマンガをマウスのトラックボールを使って読んだりするのに近い感覚で読むことができた。
    • 試読できたタイトルは「ゴルゴ13」と「トライガンマキシマム(フルカラー版)」など。どちらも“紙芝居ビュー”で、切り取られたコマを切り替えていく形式。「ゴルゴ13」は、アルカトラズのような難攻不落の刑務所から、受刑者のフリをして潜入したデューク東郷が、別の受刑者を連れて脱出するストーリー。脱出する際、どうしてもサーチライトに照らされてしまう場所を通らなければいけないが、実は照らされているのに看守には2人が見えていなかったというカラクリを説明するシーンがあり、そこでページの3/4くらいを使った大ゴマの図解。普通の携帯電話の画面だと、この大ゴマの表示は無理なので、3インチ以上あるスマートフォンサイズの画面ならではと感じた。
    • 思わず、2万9,000円ちょっとの機種変更手数料を出して「Android」に乗り換えたくなったが、そうすると携帯電話用のケータイマンガを読めなくなるし、2台目として所持するほどの財力も無いしということで、諦めた。今日のところは。
  • 年内のマンガ配信が発表された、PSPのデモ機は、残念ながら展示は無し。ただ、スマートフォンに比べて画面の大きさと解像度に優れているので、その点で非常に興味がある。「Android」に出すのを諦めた分の資金を、ゲームもしないのにPSPを買う分に回そうと考えるくらい。それと、国内の累計出荷台数はすでに、「iPhone」の約10倍くらいあるようだ(iPhoneが約100万台、PSPが1年前の時点で約1,000万台)。その点で、ケータイマンガの次なる成長市場として、スマートフォンよりも有望かもしれない。DSの任天堂とも、話は進めているんだろうな。
  • 今年に入って本格化している、海外市場向けの配信サービスでは、中国用のデモ機の展示があった。メーカーはNOKIAで、サイト名は「手機漫画 ComicLive」。7タイトルほどが試せて、どれもフルカラー。可読性は、日本のものとほとんど同じ。横書きのため、コマがスクロールする方向が左→右という、逆形式になるくらい。あとは、中国の厳重なWEB規制をぬって、どれだけ面白くて刺激のあるタイトルを揃えられるか。
  • 東アジアの家内製手工業的な拠点でケータイマンガの切り張り・演出作業を行っているある出展者は、最近、受注数が減っているようなことを話していた。ここ数年、市場全体でタイトル数をどんどん増やすことに力を注いできたこともあって、ケータイ向けに加工できるタイトルは、だいたい加工を終えた感じになってるらしい。本当に山場を越えたのか、単に中小出版社がもっと加工賃の安い委託先を見つけただけなのか、そのあたりは不明。
  • 去年の秋に、デジタルコミック協議会が、ケータイマンガの原稿データをコピー盗用されないためのセキュリティ強化の必要性について答申を出したことを受けて、セルシスで「ブックサーフィン」ソフトに暗号化機能を追加したらしい。たとえば、海外の加工屋にデータを出すと、加工の過程で、元データのコピーを盗られてしまうとかなんとか。実際にそういう被害があったのか、事前防衛の観点からなのかは不明。ただ、ある出展者の資料では、海外に加工を投げた場合は、作業が終わったら原稿をシュレッダーさせ、データも保存期間は1年間に限っているとワザワザ記していた。
  • 今回の「ブックサーフィン」の機能追加は、ケータイマンガの演出を強化するというより、その他のコンテンツの製作にも使いやすくするためのものっぽい。たとえば、“スクロールビュー”での拡大縮小機能の追加(これまでは“紙芝居ビュー”でしかできなかった)は、画面上のカタログの一部を拡大して商品画像を確認しやすくなるとか。導入サイトが800を超えて、ケータイマンガのほかにも用途を広げないと頭打ちの心配があるということだろう。
  • 一度課金すればPCとケータイとスマートフォンのどこでも読むことができるパピレスの「Renta!」は、決済の簡便さと単価の分かりやすさとタイトル数の充実が出来れば、もっといけそうな気がした。
  • どの出展者のサービスも、コンテンツの作成・加工・代金回収といったシステムについては本当にアレコレと過剰なほど提案してくる。そのシステムを導入すれば、誰でも低コストでデジタル市場に参入できるような幻想を植え付けさせる。けれども、その大半は、膨大なコンテンツの山の中に埋もれてしまうのだよな。システムが売れれば、彼らは儲かるのだから、そこまで関知する必要はないし、万が一コンテンツがヒットすれば、システムの更新料でさらに儲けさせてもらえる。生ぐさいビジネス取引の集会なんだから当たり前ではあるけど、全く読者不在な空間だった。