EMAの「サイト表現運用管理体制認定制度」が休眠状態から復帰。そして、性表現を目的としない「精液・愛液」を描いたケータイマンガ作品を探しています。

去年9月に開始したEMAの「サイト表現運用管理体制認定制度」(http://www.ema.or.jp/certification/expression/index.html)。
NTTソルマーレの「シーモア」(http://p.tl/P2eJ)が去年12月に第一弾認定を受けた後、1年もの間、新規認定ナシの開店休業状態がつづいていたが、11/30にボルテージの「100シーンの恋」(http://p.tl/RxkY)、12/20にキャラウェブの「花とゆめ★LaLa」(http://p.tl/2B5m)を連続して認定した。
キャラウェブは今年の6月頃に会員一覧(http://www.ema.or.jp/member/member_list.html)を確認したときには社名がなかったが、現在はあるので、認定申請と並行してEMAに加盟もしたと見られる。


「サイト表現運用管理体制認定制度」のお墨付きを受けたケータイマンガサイトは、いわゆる"ホワイトリスト"入りすることができ、フィルタリングの適用を免れることができる*1


認定申請にかかわる費用は「サイトの規模やコンテンツの量に応じて」「50〜300万円程度」(http://www.itmedia.co.jp/promobile/articles/0910/01/news056.html)。このほかに、不適切な表現のコンテンツが登録されていないかどうかをEMAに"監視"してもらうための費用もかかる。毎年の更新費用も要る。
正確な内訳は、「予備審査料 52,500円」「基本審査料 210,000円or189,000円」「従量審査料」「基本監視料 189,000円」「従量監視料」「追加運用監視料金」の合計になる(http://www.ema.or.jp/certification/expression/dl/ex_cost_v091006.pdf)。
「従量審査料」と「従量監視料」はコンテンツの量に応じて8段階の料金に分かれ、最高ランクの「8」ランクは、コンテンツの量が40,001〜50,000が対象で、「従量審査料」が661,500円、「従量監視料」が491,925円。50,001以上は「別途説明」となっている。
大手だと、優に50,000タイトル以上を保有しているので、審査・監視料で数百万円がかかっておかしくない。


Bbmf(現menue)と並ぶ、ケータイマンガサイト大手のNTTソルマーレは、年商で100億円前後は稼いでいると見られるため、数百万円の審査・監視料もはした金の範囲だろう。
一方で、ボルテージとキャラウェブの弱小2社にとって、審査・監視料と引き換えに得られる「信用」がどれほどの価値を持つものなのかは、イマイチはかりかねるところがある。
それとも、認定が皆無だった過去1年間とは事情が変わったのか。「サイト表現運用管理体制認定制度」の認定を受けておくだけの必要が出てきたのか。
docomosoftbankauの3キャリアによるケータイマンガサイトへの「圧力」(フィルタリング強化で18歳未満がアクセスできないようにするなど)は、今年の初めの1月から春にかけての話だった*2ので、この「圧力」を受けてボルテージとキャラウェブが申請したのなら、今年の夏とかもっと早い段階で認定が降りておかしくない。
12/15に可決された改正都条例案は、11月後半からの話なので、これも直接・間接のきっかけとはなっていないだろう。


過去、数ヶ月の間、認定申請を促すような動きは表に見えなかったけれど……。




ところで、「サイト表現運用管理体制認定制度」は、想像の通り、審査の一環としてエロ・暴力表現の規制も行っており、そのためのガイドラインも示している。


サイト表現に関する例示集(2009年8月11日度版 http://www.ema.or.jp/dl/expressionreiji_090811.pdf

1 性表現   キス、下着、水着、女性胸部、性行為、喘ぎ声/擬音、自慰、女性臀部、性器、SM、精
液・愛液(膣分泌液)、陰毛、性玩具、性風俗

2 暴力表現   傷害/暴行、出血、殺害、身体の切断、拷問、虐待、死体

3 自殺表現   自傷、自殺

4 犯罪表現   違法毒物・違法薬物、武器・爆発物、強姦、痴漢、売春/買春、殺人、脅迫・強要、詐
欺、窃盗・万引き、人身売買

5 その他、青少年の健全な育成を著しく阻害する恐れがある表現   差別、ギャンブル、飲酒、喫煙、いじめ、家出、グロテスク、誹謗中傷、医療・医薬品、健康・美容、オカルト、恐怖表現、刺青・タトゥー


このうち、たとえば「1 性表現」の「キス」であれば、これをさらにA〜Eの5段階に分けている。

A.額や頬、手の甲へのキス(≒挨拶)の描写

B.唇を触れ合うだけのキスの描写

C.情熱的なキスの描写

D.より直載な表現によるキスの描写

E.性的欲求を刺激する、もしくは促進するキスの描写

「キス」が、A〜Eのいずれかに該当した場合、どのような自主規制を行うべきかについては具体的な言及がないが、ざっと読んだ感じ、Aは掲載可、BとCはストーリーの文脈を読んだ上で掲載可を判断、Dは慎重な判断の上でなんらかの配慮を行った上でなら掲載可、Eはほぼ不可、といった基準があてはまるように見える。


「喘ぎ声/擬音」のように、A〜Cの3段階しかないものもある。

A.性行為と判別し難い喘ぎ声/擬音の描写

B.性行為を連想させる喘ぎ声/擬音の描写

C.性的欲求を刺激する、もしくは性行為中の喘ぎ声/擬音の描写

この場合は、Aが掲載可、Bが条件付き、Cが不可、といったところだろうか。



ただし、「性的欲求を刺激する」キスや喘ぎ声/擬音と、そうでないキスや喘ぎ声/擬音の違いを、誰がどこまで正確に仕分けられるのか、その点についてのアンサーはない。Cの「情熱的な」キスと、Dの「より直載な表現による」キスにいたっては、さらに何をどう判断材料にしたものか見当がつかない。



さらに?がつくものには、「精液・愛液(膣分泌液)」のレギュレーションがある。
これは段階に分かれておらず、Aのみとなっている。

A.精液・愛液(膣分泌液)の描写(ただし、性表現を目的としない描写を除く)

ケータイマンガをよく読んでいる人なら知っていると思うが、「精液・愛液(膣分泌液)」が描かれているマンガは、ケータイマンガには99.99%存在しない。唾液であっても、たいていは修正で消される。許される液は、汗くらいと考えておいていい。結合シーンにいたっては、白ヌキや黒ベタなどというまどろっこしいことはせず、下半身ぜんぶをカットイン方式で消される。フェラチオも鼻の下から全部を黒カットイン。それが普通となっている。


だから、そもそもこの「精液・愛液(膣分泌液)」という項目がなくても、実質的な運用には全く関係がない。運用されない項目をわざわざつくっていることになる。


しかも、「精液・愛液(膣分泌液)」に関する唯一の説明が「(ただし、性表現を目的としない描写を除く)」である。
……つまり、エロくない「精液」、エロくない「愛液」はOKという意味になる。そんな作品が可能であれば、だが。
かっての"非実在青少年"に匹敵するほどのアクロバティックな説明を、ケータイマンガでは自主規制団体が繰り広げている*3


どちら方面に配慮した結果、こういったアクロバティックな項目を立てる必要に迫られたのか、ぜひとも知りたいところである。





*1:「サイト表現運用管理体制認定制度」にもとづくフィルタリング非適用の各キャリア説明 … docomohttp://www.nttdocomo.co.jp/corporate/ir/library/docotsu/39/report.html)、SoftBankhttp://mb.softbank.jp/mb/support/3G/filtering/)、KDDIhttp://www.au.kddi.com/anshin_access/)、WILLCOMhttp://www.willcom-inc.com/ja/info/10021501.html

*2:集英社が運営するケータイマンガサイト「マンガカプセル」の「よくある質問(FAQ)」では、「アクセス制限サービス(キッズiモードフィルタ等)をご利用のお客様は、集英社マンガカプセルのコンテンツの一部を閲覧いただくことができません。」とした上で、「重要なお知らせ」の中で「2010/2/8(月)〜2010/3/1(月)の間、アクセス制限サービスをご利用中のお客様において、サイトにアクセスできない状況となっておりました。」という説明が行われている。

*3:同様のアクロバティックな説明には、「陰毛の描写」で「(ただし、性表現を目的としない描写を除く)」、「性器の描写」で「(ただし、性的欲求を刺激しない性器の省略描写を除く)」などがある。