23年振りの続巻なんですよ。





「指4本」の表紙の3巻が出たのが1993年だから。


自分が奥瀬サキという作家を初めて目にしたのは、ちょいエロなマンガを目当てに買ったヤングアニマルハリケーン増刊。B5サイズの割と厚目の増刊誌で、確か、えびふらい、とかが目当てだったと思う。
その中に掲載されていた「自動人形」編の「中編」が、初めて目にした奥瀬サキであり「低俗霊狩り」だった。
「中編」だけいきなり読んだのでストーリーは何が何だか。でも、面白い。続きが知りたい。井の頭公園ってどこにあるの?
出ていた1〜3巻をそろえ、新宿御苑行ってみたいと募らせ、ヤングアニマル本誌も買うようになり、ちょうど掲載された連作読切「公園の散歩者」で決定的にファンになり、「火閻魔人」「支配者の黄昏」も読み、しばらくて、定期購読していたヤンサンの増刊で「こっくりさんが通る」が始まり、その後上京した高田馬場で、大塚狐子がショーツを売りにいってたブルセラショップの入ってるビルとクリソツな物件を見かけたり――。


90年代末からは原作仕事の比重が高くなり、どれも物語のテイストはまぎれもなく奥瀬サキ
ただ、重要キャラの反応がなんでそれ?というシーンがあった「夜刀の神つかい」で作画担当とちゃんと意思疎通できてんの?と軋轢が噂されたり、「DAYDREAM」のように二桁の巻数まで続いたのが唐突気味に連載が終了したり、その一応の続きの「MONOPHABIA」も、え?ここで?という終わり方だったり。
不遇というか、いまいち波に乗れない、いよいよ本格的にこぎだそうとする度、岸に押し戻されてを繰り返していた奥瀬サキが、原作仕事と平行した「ドロねこ9」などの製作をはさみ、「火閻魔人」のリスタートを経て、2年前、GUMで「後編」を再開。その半分が、1年前に「指3本」の3巻にまとまり……まとまったところでGUMが休刊。マジで!また掲載誌が……と落胆するも、WEBで続くよ!の報に胸をなでおろし、残り半分が1週間前、「指4本」の4巻にまとまった。


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そして今日のサイン会。


okuse saki


サインを描いてもらいながら、(やっぱり、ジョン・レノンに似てらっしゃるなぁ……)と思った。
それと、「自動人形」編が完結した、読めた、という喜びよりも、「低俗霊狩り」の新作が読めた、流香魔魅にまた会えた、という喜びほうが大きかったと気づいた。23年前の自分は、流香魔魅のもつ優しさに憧れていて、今もそうなのだ。


去年、アニメイトで開かれた「楽園」のイベントで飯田編集長が話していたボルヴィックの件を聞いてみると、初めて聞いたという顔できょとんとされていた。自分の粗忽な聞き間違い、もしくは飯田編集長の勘違いか(別のマンガ家の人の話とか)。サイン会場の机の横に置いてあったペットボトルのドリンクはお茶とジュースで、ボルヴィックはなかった。


帰りのレジで白井弓子の「WOMBS」の5巻を手に並んでいると、1〜4巻をセット購入した客が真っ最中のサイン会を案内されていた。返事は「いいです」。耳を疑い、首根っこを引っつかんで4階に連れていきたかった。


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ほぼ全てに決着がついたと思いきや、「後編」のラストで、犬神使いの磨津野琢郎が田中源一郎に投げかけた「あんたと水前寺龍揮」「どっちが人形なんだ?」というセリフ。
えっ!?となった。
全くそんなことは思ってもいなかった。
読み返すと、朔本耶亨の首を日本刀で切り落とした時点で完全にダウンしてしまったはずの田中源一郎が、流香魔魅のピンチにさっそうと登場するシーンで、流香魔魅が田中源一郎の背後に(傀儡師の)操見塚晴玄の幻影(もしくは生霊?)を見ており、その前には田中源一郎に操見塚晴玄が乗り移ったように見えるシーンがある。
さらに、朔本耶亨が姉と成仏した後、朔本耶亨に切られた田中源一郎の刀傷がきれいに治っている。
この疑問についてはあえて聞かなかった。
今度は23年も待たせずにその理由を読ませてくれると思うので。