イブニング No.21
新連載・巻頭カラー「レッド」(山本直樹)
月イチ連載スタート。そんなわけで、いい加減イブニングの定期購読も始めざるえなくなった。同じく月イチ連載の「少女ファイト」と交互の掲載なのがうらめしい。同じ号に載せときゃ、月1回買うので済むのに!
「レッド」は、連合赤軍の「レッド」。69年の1月、東大安田講堂での闘争が陥落。次第に下火になっていく学生運動の一方、一部の活動家たちはより過激な武装闘争に走り、72年の内ゲバリンチ殺人とあさま山荘事件に終焉を迎える。そんな一部の活動家たちが、武装闘争に足を踏み出しかけていた69年の秋を淡々と描いた第1話。
山本は、メディア批評誌『創』の2004年11月号で「探りながらいってみよう あさま山荘に行ってみた(上)」から、連合赤軍元メンバーへのインタビューマンガの不定期連載を始めている。この連合赤軍に聞くシリーズは今のところ、2006年5月号の「探りながらいってみよう 赤軍派・塩見孝也元議長に会った」が最新。「レッド」の連載が始まったことで、こちらは当分、お休みになるのではないかと思われる。この『創』に掲載されたインタビューマンガは、元メンバーがどう警察の手を逃げたか、今はどのように暮らしているか、そんなことを落書き調の絵で淡々と脱力して、イデオロギー抜きで描いていており、面白かったのだが、山本の中でもっと本格的にストーリーへ落とし込みたいという欲求が生まれたのかもしれない。
第1話は、最近欝気味の女性同志にケーキを土産にもって励ましにいくある地方大学の左翼学生たちの話と、羽田空港の滑走路に火炎瓶をもって乗り込む闘志たちの話がクロスオーバーする。
羽田空港の事件は、1969年9月4日に起きた愛知揆一外相訪米訪ソ阻止闘争。ある地方大学は、あさま山荘事件の実行者たちが在籍した弘前大学であるが、具体的な日付や大学名、個人名は、伏せられるか仮名に置き換えられている。
連合赤軍に関わった人物の行動を詳しくまとめている1969-1972 連合赤軍と「二十歳の原点」を参考にすると、実際の事件とは以下のように置き換えられている(第1話の仮名登場順の並び)。
「レッド」中の仮名 | 実際の事件における名前 | 判決・備考 |
岩木 | 植垣康博 | 懲役20年(出所済)・長野県軽井沢駅で逮捕 |
吾妻 | 吉野雅邦 | 無期懲役・外相訪米訪ソ阻止・あさま山荘で逮捕 |
谷川 | 坂口弘 | 死刑(未執行)・外相訪米訪ソ阻止・あさま山荘で逮捕 |
六甲 | 若宮功子? | ダイナマイト所持で逮捕 |
筑波 | 川島豪 | 元日本共産党革命左派議長 |
赤城 | 永田洋子 | 死刑(未執行)・山岳ベース事件後に逮捕 |
赤石*1 | 柴野春彦 | 1970年12/18の板橋志村警察署上赤塚交番襲撃時に射殺 |
現在、バーを営んでる植垣康博氏は、『創』連載でインタビューマンガを読んだ(何年何月号かは忘れた)。「六甲」なる仮名の人物は女性言葉で話しているので、指導部リストから推測すると若宮功子?。
山本が仮名とはいえ、実録モノに近いノリで連載に挑むのは初めてだろう。赤軍を暗示的に扱った連載には、スピリッツで連載していた「ビリーバーズ」があった。
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が、ここまでストレートには扱っていなかった。加藤議員自宅放火などの右翼によるテロが起きた背景なども気にした上での連載開始なのか、山本個人の赤軍や学生闘争に対する興味や清算などがまず先にあるのか、それとも別の狙いがあるのか。
『創』の連載で、元メンバーへ取材にあたったこともあって、山本独特の呼吸や間合いよりは、当時の学生運動の息遣いのほうを多少、重視した絵づくりになっているようだ。山本の「総括」が始まる。
*1:赤石=柴野は登場する2コマで、①の番号を振られている。理由についてはコメント欄のURLを参照。