「復活の地Ⅰ」(小川一水)ハヤカワ文庫JA isbn:415030761x

あるサイトで、明らかに「日本」を模してる、との書評をちらっと目にしていたので、その心積もりで読み進めて、納得。読み進めながら自分で気づく楽しみは減ったけど、それはそれで、物語の背景を理解し易かったので、特に問題なし。5-10分の電車読みを繰り返しながらではあったけど、すんなり読めた。
『惑星間貿易時代終了から数百年後のある星で、諸外国への外征に熱心なある帝国の首都を、大地震が襲う。機能がほとんど麻痺した瓦礫の都市で、わずかに生き残った様々な政治的立場の人々が、復興とそれぞれの個人の目標のために奔走し、思惑を張り巡らす……』
全体にプロローグの印象。執筆前、綿密に資料にあたる小川氏らしい、詳細な被害の描写と、具体的にどのような連鎖を経て被害が拡大していくのか、そのシミュレーションを堪能する巻といっていいんじゃないか。
巻頭の周辺地域と首都の地図を見てもわかるように、「東京」(それもほぼ現代と同レベルの発達をした)をモチーフにしてるんだなぁ、と分かる(車は水素エンジンで走ってるけど、ガソリンエンジンの違いから推測される被害の差異は書かれない)。
複数視点の採用は「導きの星」で見せてくれたこなれた手腕の通り。ざっとあげると、

  1. 王族
  2. 官僚
  3. 政治家
  4. 軍人
  5. 市民
  6. 対立国大使
  7. 非占領国王族

の視点を持つ登場人物らが割り振られていて、飽きさせない。
でも、首都で被害にあった、〝卑族民〟とさげすまれる非占領国ジャルーダの市井の視点を明確に背負う人物が、今のところ出てきていないのが、少々物足りない(すぐ読みにかかるけど、2巻で補充されるか?)。ジャルーダ統治に関わった官僚のセイオか、ジャルーダ王族のサイがカバーしていくんだろうけど。
あと、これは慣れの問題かもしれないけど、「バルケード山脈」とか「ジスカンバ・サイテン議員」とかの一部ネーミングに、中学生の考える自作ファンタジー小説の設定(そして本編は永遠に書かれないか、完結されない)に近い匂いを感じてしまう(それとも、小川氏と自分が極めて同世代だから、なんだろうか?)。
まぁ、そんな点もあるけれど、過去の作品に比べてさらに磨きのかかってきた登場人物の海千山千具合が、一番うれしい。
……と、今、買った時につけてもらったブックカバーをはずして、一巻の帯を見ると、「全3巻完結」の文字が。3巻で終わらせられる話なのか?