国が育てる「サイエンスライター」 文科省部会が提言  

さよなら豚丼

http://www.asahi.com/science/update/1020/003.html
 科学研究費補助金科研費)のあり方を検討している文部科学省の科学技術・学術審議会の部会によるもの。

科学誌だけでなく、一般誌でも研究成果が取り上げられるように、研究成果を分かりやすく、解説できる人材を育てることが重要と分析した。
また、サイエンスライターの協力、支援を得て、研究成果を国内外に発信できるよう、国の研究費からライターへの経費支出を認める必要性も指摘した。さらに、研究成果の発表ができるホームページの開設や科学ジャーナルの刊行の支援も必要と盛り込んだ。

 ここ数年で休刊した科学誌には、記憶にある分から抜きだすと、日刊工業新聞社から出ていた「トリガー」(2002年初めごろ)、朝日新聞から出ていた科学誌(名前を忘れたけどカタカナのやつ)(2000年末)といった事例がある。
 で、今じゃ、「日経サイエンス」か「ナショナルジオグラフィック」、「ニュートン」あたりが一応、老舗のメジャーどころになるんだろう。でも、そういう雑誌の購読者ではなくて、そこが拾いきれてない読者層をどう取り込めるのか、そこまで見据えていてもらいたい。あげた3誌は、売価が1000円前後と高価格な点も、読者を選んでいると思うので、せめて500円台前後で、月間か隔月くらいの発刊スピードを期待したいところ。もちろん、ホームページを充実させていくのでも、紙とネットを両立させるのでもいい。
 で、

文科省科研費は、今年度予算で1800億円を超えている。研究成果は報告書にまとめられるが、国民への広報、説明は十分とは言えない。
同部会は「納税者である一般の国民に対しても、各家庭レベルでその価値と研究の重要性を分かりやすく説明することが重要」とした。

というふうに、資本力は十分に期待できそうな一方で、誌面やネットでの広報の方向性が、当然ながら、納税者へ研究事業の意義と理解を求め、説得に向かうだろうことが、少し気になる。おそらく、ジャーナリスティックな視線は、排除されるだろうから(「日経サイエンス」にそーいう視点が含まれているのか、「ナショナル〜」に自然保護や第三世界における人権保護以外の視点を期待できるのか、という点は悪いけど横に置かせてもらう)。

 官製媒体が、クローン人間つくりや優性思想的価値観の問題を十分議論しきれていないクローン肺の研究用途作成なんかを、多面的に扱っていけるのか? 夏にロフトプラスワンの「ロケット祭り」に参加したときは、今後数十年間を視野に入れた日本の宇宙産業計画が、どんぶり予算で、数字の概算はパフォーマンスに近いというような趣旨で、あさりよしとお氏らが皮肉っていたけれども、そーいう論調は乗せられないだろう。

 まあ、それ以前に、いろんな研究事業にかんする基本的データなんかについて、一般の納税者が触れる機会があまりにも少ない、賛成や批判をするにも、土壌自体が育ってないという点もあるとは思うので、なるべく効果的に媒体を立ち上げていって欲しいというところか。

 ある程度知名度のあるライターなら、売り込みようによっては、第2の猪瀬直樹を狙えるかもしれない(笑)。しかし、ジャーナリスティックな批判性を合わせ持って、科学の取材に望むライターにとっては、自分の仕事場を狭められていくこととにもなっていかないか。

 ※10/22追記
 科学ジャーナリスト粥川準二氏が「みずもり亭日誌」10/22分の「『サイエンス・ライター』とは誰か?」のなかで触れている。
http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=91038&log=20041022

記事を読む限り、国が育てるライターの役割は、あくまでも「PR」しか念頭に置かれていないようだ。「批評性」あるいは「批判性」については何も言及がない。少なくとも記事では。

として、PRとジャーナリズムは異なると指摘している。
 また粥川氏からのリンクで、京都女子大学現代社会学部の平川秀幸http://www.cs.kyoto-wu.ac.jp/~hirakawa/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/242、ジャーナリストの武田徹http://162.teacup.com/sinopy/bbs(10/21分)による、同様の趣旨の言及も。
 知ったかぶり週報経由で知った、サイエンスライター森山和道氏は、あくまで仕事の受注先の一つというような見方を書いているhttp://www.moriyama.com/diary/2004/diary.htm#diary.04.10.20(10/20分)、http://www.moriyama.com/diary/2004/diary.htm#diary.04.10.21(10/21分)。