『鬼畜祭り 〜遺作ホンハイエ〜 LOFT/PLUS ONE』 ③

昨日書いた感想の続き。)


 後半は、出演者4人が仕込んできた鬼畜ネタ。

 まず、みやも氏による『今日から使える鬼畜化の方程式 この世で最も教育に悪い鬼畜のキャラに関する検証』。
 鬼畜度を測る10数種類の入力値として、身体的・肉体的負荷、自制力、自尊心、外見など、それぞれの中身を説明する。鬼畜を極めるにも金がかかるということで設定する富裕度を、乗算する前に2乗するのは、極度の貧乏は却って鬼畜に走らせるから、という解釈のため。なかなか深い。

 で、みやも氏が導き出した一番の鬼畜キャラが、野比のび太。最後に加算する知名度が、「国民的に有名なので」(みやも)。のび太の鬼畜度が分かるエピソードということで、「悪魔のパスポート」「分解ドライバー」の二話が紹介される。
 「悪魔の〜」では、万引きしようが何だろうがOKになるパスポートを使って、のび太が悪事を働く。しずかちゃんのスカートめくる時の、〝前からやってみたかったんだよなぁ〟という吹き出しに、以前から内面にうずまいていた黒い欲望の存在を指摘するみやも氏。

 77年発刊の旧コロコロコミックに掲載されたものの、単行本には未収録という「分解〜」は、国会図書館でコピーしてきたそう。猫の手も借りたいというのびママに頼まれた用事がめんどくさいのび太に、何でも分解してしまうドライバー型の秘密道具を使って、のび太の左手だけを持っていくドラ。冒頭からすでにシュール。「(バラバラにするだけじゃ)それ何の意味もないよ」(柳下)。
 上半身に足一本、左手に残りの足をくっつけたのび太が〝何でもいいからバラバラにしたいぞ〟と、ケンカする猫と犬の首をすげ替えたりしていき、3人目くらい出会ったジャイアンが、やっとのび太の姿に突っ込む。それからいろいろあって、日常に戻るのだけど、そこから出た結論は「しずかちゃんのパパには見る目がなかった」(みやも)。


 次に本田氏が、『鬼畜ルートを回避する方法の考察』のタイトルで、鬼畜の類型を、

  1. ナチュラルボーン型」 → 内面の葛藤無し
  2. 「トラウマ型」 → モテなさ故に
  3. 「美学型」 → トラウマ型なのに生まれつきと思い込んで、アインデンティティ化

の3パターンに分類。

 ナチュラル型の例は、電ノコを振り回す「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスなど。映像は派手だが、類型としては分かりやすいので、女優の人本気で怖がってるよ、くらいの一般的な突っ込みで終え、次のトラウマ型へ。

 見た目は普通で昆虫オタクの鬼畜が目をつけた女性を拉致って監禁する「コレクター」。逃げようとする女性を押さえつけながら、いきなり好きだと告白する鬼畜。「女優の顔、あきれてますねぇ」(本田)。
 鬼畜の愛を受け入れる素振りを見せるシーンで、逃げ出すための色仕掛けだ、と至極まっとうな意見のみやも氏と柳下氏に、いままで同情論を疑っていなかったらしい本田氏が「喜ばせようとしてるんだ」と反論していた。結局、女を信じられない鬼畜がSEXを拒否して、再び監禁→その際監禁部屋の暖房が故障→女性死亡→でも〝高望みしたのが悪かった〟と、別の看護婦を拉致りにいって終わりだった。

 「鬼畜大全」でも紹介してる永井豪の「バイオレンスジャック」。人外の力を抑えるために鎧を着せられ数十年間蔵に閉じ込められたスラムキングの前で、意味なく裸を見せつける女家庭教師へむかって叫ぶ〝サワッテミタイ!〟を、本田氏が名セリフに推す。それに、みやも氏が〝ウォーター!〟(byヘレンケラー)だ、と突っ込んだのが最高だった。
 ビンセント・ギャロが自分を励ましてくれる脳内彼女を設定して暮らす映画「バッファロー'66」は、かなりトラウマばりばり。トイレで〝生きられない〟と嗚咽するギャロに「これはまさしく俺ですね」(本田氏)。

 ここで、トラウマを抱えてしまう喪男の構造を分析。

  1. 「男女七人○物語」で、モテない片岡鶴太朗をペット的に可愛がる池上希美子との『池鶴関係』
  2. タクシードライバー」で、トラヴィスがベッツイーを口説こうとしてストーカー扱いされる『寅別関係』

を紹介する。
 ほかに、スピリッツ連載中「ルサンチマン」の、脈があると勘違いして、30歳代独身勝気の同僚を見舞いに行き、気持ち悪いと拒絶される話など。「こういう出版社の女性営業は、いっぱいいそう、というかいる」(本田氏)。

 その上で、鬼畜ルート回避には「妹萌え」にいくこと、と得意の自論へ。
 妹の有無で道が分かれたケースとして、

  1. 妹アリ = 宮沢賢治 → 妹の死で童貞ネ申
  2. 妹ナシ = 都井睦男 → 30人殺し

を提示して説得にかかる。ルークは妹萌えだったからベイダーに勝っても暗黒面に落ちなかった論に、「ハリソンフォードとの3角関係にケリを着けるために後付けたんじゃ」(みやも)、「ルーカス監督が妹萌えの啓示を受けた」(本田氏)。ロフト店員、「テーマが妹萌えに変わってませんか」。
 でもリアル方面の補完も考えておいたほうがいいということで、結論としては、「りとる☆らばーず」のドールデリバリーサービス(オナホール付き)が、鬼畜と妹萌えのバランスを取れるのでは、にFA。


 そして、二次元鬼畜はここで終了し、客席が徐々に干潮になっていった(笑)柳下氏、安田氏のリアル鬼畜へ。

(下に続く)