神保町「エチオピア」

 靖国通り明大通りの交差点から、明大通り御茶ノ水方面へを登ってすぐのところにある、インド風カレーの店。ショーケースのロウ細工カレーがまずそうだったので倦厭していたが、晴れて気分が良かったのでそのままゴー。

 狭い。カウンターの前に横並ぶイスとイスが、ほぼくっついてる。しかも満席。隣の親父、昼間からハイネケン(500円)飲んでんな。
 
 「チキンカレー大盛り」(880円+50円)。
 すぐさま、ふかしたじゃがいもバター添えが出てくる。インド=植民地=イギリス=欧風と連想できれば、あながち変ではないんだろうが、じゃがいもってインドでポピュラーな食い物だったか? まぁ、うまいので良し。
 男女1人ずつの店員で接客と厨房を切り盛り。注文があってから、ペーストからつくり始めているらしく、体感で15分ほど待つ。

 深目の皿に、純和風のご飯。めんたいか海苔が欲しくなるくらいの。なんか、すごい家庭的な感じですよ? チキンは大振りな塊が、ごろごろごろといくつか。ほどよくとろみのあるカレー。個人的にこのくらいの食感がちょうどいい。水っぽいのは、ね。スープじゃないんだから。

 辛さは1〜70倍から選べた。70倍? 正気ですか。頼んだ2倍は、のどがちょっと熱くなる程度。野菜は溶けてしまっているのでなければ見た感じ入ってない。たまにちょこちょこと顔を出す豆は、軽く咀嚼するようにするとはざわりが、なかなか。
 
 スーツ客で混むなか、こちらが食べ終わるのを見計らって最後に冷たい小皿で出てきたストロベリーアイスも、おいしかった。

 もう一つ、気に入った点を。BGMが、’50〜’60年代ジャズ。マイルス・Dがいわゆるエレクトリック、フリージャズにいってしまう前の黄金期。さあ食べようかというときに、ビルエバンスのマイファニーバレンタインが、あの転がるようなピアノの前奏とともに流れてきて、昼どき飯どきの店内にむせび泣くサックスのテーマが響く。御茶ノ水には、オールディーズを流すカレー屋もあって、そこでも落ち着いて食べることができるのでよく行く(味は……中の下くらいなんだけど)。
 

 在りし日のアメリカのイメージ、とカレー。なぜかよく合う。