ヤングガンガン 6号

 まずは前置き。
 今号で表紙にもなってる「ロトの紋章」。これまでのところまったく眼中にない作品であり、おそらく今後もそうなんだが、旧エニックスがマンガ出版に参入した最初の雑誌、少年ガンガンでこのマンガがどれだけ多くの購読者を獲得することに貢献したか、ということが非常によくわかる解説文を見つけたので、一部引用させてもらう。FF11マンガは完全に編集部による人材と題材の選定ミスだと思っているが、「ロト紋」の続編という選択肢には、それなりの経緯と狙いがあったことがわかる。まぁ、でもやっぱり続編は面白くないわけで、現状では過去の栄光に引きずられているなぁ、という見方になっちゃうんだけれど。


少年ガンガンの歴史(4)月2回刊時代の動向(たかひろ的研究館
  http://www.geocities.co.jp/Playtown/9191/enix1/gangan-history4.html

しかし、真の原因はこんなことではありません。この年(=1997年)のガンガンの不振の最大の原因・・・それは、実は「ロトの紋章」の連載終了です。
当時のガンガンの連載の中で、「ロトの紋章」だけはまさに別格でした。この作品の、単行本全21巻の累計1800万部の発行部数は今だガンガン系では破格の売り上げで、一巻あたりの発行部数では「鋼の錬金術師」の9巻で1200万部には及ばないものの、それでも極めて高い人気であったことは間違いありません。しかも、「ロトの紋章」の場合、「鋼の錬金術師」と違って、TVアニメ化すら行なわれずにこの発行部数に到達しています。ガンガンのようなマイナー雑誌で、TVアニメ化もなしでこれだけの高い人気はまさに異例であり、いかに「ロトの紋章」がガンガンの連載マンガの中で特別な存在であったかがよく分かります。
事実、ガンガンを読まない人の間でも、「ロトの紋章」の知名度だけは抜群で、特にこの当時は最終回に向かって最高潮の盛り上がりを見せていたこともあって、普段ガンガンを読まない一般の人までもが「ロトの紋章」のためにガンガンを買っていたのです(これは、ちょうど今の「鋼の錬金術師」の盛り上がりとよく似ています)。そして、「ロトの紋章」のおかげで一時的に増えた読者が、「ロトの紋章」終了と共にガンガンを去ってしまい、そのためにガンガンの発行部数は激減、実に三分の一程度にまで落ち込み、ガンガンは一気に苦境に陥ってしまいます。
そして、ガンガンの編集部はこの苦境を乗り切るために、月2回刊を中止して月刊に戻さざるを得なくなり、実際に98年の2月をもって月2回刊ペースは終了、月刊に戻ります。こうして、約2年の短い期間で月2回刊行時代は終了するのです。

 この解説文の最後のあたりを読んでふと思ったが、週刊〜隔週刊のマンガ誌が創刊されたのは、どれくらいぶりか。もしかすると、2001年4月創刊のヤング*1コミックバンチからこっち、週刊〜隔週刊のマンガ誌ができたのは、初めてじゃないか。そのあたりのマンガ出版市場の動向も調べてみたい。*2


 さて今週号。

 巻頭カラーで「犬神ゲル」。なんで「BLAME」の無限階層都市みたいなとこが舞台になってるんだろうなー、などと。そのくらい。

 「黒神」。前回登場した異能キャラのお姉さんが、ほのぼのした食事の別れ際、クロに宣戦布告。今回の話だけを見ると構成は悪くないんだが、だったら前号のラストで異能キャラが茜が拉致ターゲットであることをはっきり明示しなかったほうが、宣戦布告のシーンがより際立ったと思う。あと、男の主人公のほうがゲームクリエイターを目指してる設定は、ここまでまったく本筋に絡んでいないが、そのあたりこれからどうなるの?

 「バンブーブレイド」。悪キャラが圧されていく様はそれなりに壮快なんだけれども、やっぱり剣道をやっているようには見えない。

 「リセット」。過去3話分のダイジェスト+4話目が掲載。3話分は作者のホームページ(http://www.h5.dion.ne.jp/~pn221/)でも期間限定で配信中。なんか「童夢」と「リンダキューブ」を思いおこさせる。けっこう好きな雰囲気。後でまとめて読んどこう。
 しかし、いくら面白いとしても、「マンホール」を中断させてこーいう形で連載を再開させるのは、あまり印象がよくない。コミックビームでも映画化に合わせて「やじきた」を描かせたりはしているけれど、創刊したばかりのヤンガンがこーいうことをするのは、迷走してるふうに感じさせる。

 「ビターバージン」。2話目でもまだ直球。帝王切開跡(らしきもの)まで。あと2話分あるが、最終話でどっち方向に落とすのか。

 「荒川アンダーザブリッジ」。「中村工房③」から傭兵シスターが抜擢登場。うーん、各話ラストのオチとツッコミがいまいち弱かった。

 読み切り「変身天使(コスプレ)エンジェル」。作者はカサギヒロシ。新人でエロ路線を補完してきた。黒髪のボーイッシュの朱音(あかね)が一押し。もっと話の組み立てがこなれてくれば、また読みたい作家だ。

 「俺の生き様を笑え」。作者はノセクニコ。本格ストーリーマンガ向けの絵柄で、ギャグをやるという狙いが、オチとなる最後のコマで生きてる場合と生きてない場合の落差が大きい。あんまり細かかったり小さいコマを最後にもってこられると、生きてこないよ。

 センターカラー「戦線スパイクヒルズ」。見かけ頭弱そうな女子生徒がほんとにそうだったことが明らかに。って、それだけで収まるキャラじゃないとは思うけれども。膝に財布。次号への引きは充分。


 次号は、「巨乳ドラゴン」以来ごぶさたの三家本礼がセンターカラーの読み切りで登場。あと、やはり同じく次号に読み切りで登場する霧木凡ケンというマンガ家の評判がすごいんだが、そんなにアレなのか? ジャンプ作家でそこまで言われるのは、ハンター×2のヤツ以外聞いたことがない。

*1:ヤングバンチって……。

*2:現在隔週発行のイブニングが2001年9月に創刊されてるが、当時はまだ月刊。また、その同誌創刊前に休刊していた「モーニング新マグナム増刊」と掲載作品は何作品かかぶっている。