「事件屋稼業」(原作:関川夏央、作画:谷口ジロー)双葉社

 火曜に、池袋の芳林堂コミックプラザに璃子タンの写真集を買いに行き、ソフトカバーだったのでやっぱり止める。写真集コーナーの向かいに、この「事件屋稼業」が平積んであり、マンガ夜話で紹介されたとか、古本屋だけで見かけていたのがやっと増刷とか、ポップで紹介されていたので、1巻をパラパラとめくって、今週は1日1冊ずつ買って読んでいくことに決める。今、BSは映らなくなったので知らなかったが、奥付を見ると、夜話で紹介された3月に合わせて増刷されていた。96〜97年の発行以来、2刷目。そーいうキッカケにもなるということらしい。また正直、双葉社は隔週アクションや新刊コミックスは、さほど手を伸ばしたいラインナップが現状なかったな、などと思う。


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 こういう言い方も何だが、その日その日を生きるだけの、しがない探偵のくせに、躊躇なく人を殺せるヤツだ。
事件屋稼業」の深町丈太郎は。
 捜査現場で悪徳刑事の拳銃を横取って、ヤクザの頭をぶち抜いたり。追ってる人間からもよくよく銃を向けられる。他人が目の前で殺し合ったり、自分の頭に拳銃を押し当ててたりするのも、そのまま見送ったり、後押ししたりする。別れた女房に親権をとられた娘のため、だったりするシチュエーションもあるが、これは威嚇が目的だ。

 日本文芸社で連載されてたのは80年代らしい。マンガ上の設定は、60年代〜70年代の回顧調が強いとは言え、80年代になって、深町が生きる街のうらびれ過ぎの感じは、当時でも違和感があったんではないかという気はする(だから当時は人気が出なかったか)。

 3巻にある、フェリーノバルガスを名乗る少年が出てきたり、燃える麻薬でそこにいる全員がラリってる、矢作の「リンゴォ・キッドの休日」や矢作×大友の「気分はもう戦争」の一編を意識した話とか、深町が攻撃ヘリで狙われてスナッフビデオの素材にされようとする話とか、他の話に比べて“遊び”が強い話も、たびたび出てくる。「ブラックジャック」のように一話完結形式なので、ストーリー性はほぼない。
 決着をつけなければいけない何かを抱えているわけでもない、組織に所属しないフリーの立場の深町が、うらびれた街で、銃に身近な生活を続けていて、よくひょうひょうと生き延び続けられているものだな、などと、矢作俊彦作品や船戸与一作品を読んでるときにはまず思わない、つまらない読み方をしているな、とは思う(なんだこの感想は……)。



 それとも、知らず知らずに「シティハンター」と比べてるのか。「シティハンター」も最初の頃は人を躊躇なく殺すハンターという側面が強かったが、すぐにモッコリ主義にとって代わった。フリーってのは、モッコリ主義で食ってる訳じゃないのに。原体験というのは怖いという話?
 「エンジェルハート」を掲載するバンチがどれだけ泥臭さを求めようが、しょせんは「大人になったジャンプ読者」を対象にしてる。「事件屋稼業」を読む人=ゴラク?とかの読者とは、おのずと違ってくるという話かもしれない。



事件屋稼業 1 (1)

事件屋稼業 1 (1)

事件屋稼業 2 (2) (アクションコミックス)

事件屋稼業 2 (2) (アクションコミックス)

事件屋稼業Revised Edition 3 (アクションコミックス)

事件屋稼業Revised Edition 3 (アクションコミックス)