エロマンガの“消し”の今後

  • 或る編集者のオケラ日記――桜田門

 http://blog.livedoor.jp/itoboxsp/archives/50033098.html

本日10時に行ってきました。
今週頭に招待されたのです。
思わず受付で「要件」の欄に「ご招待されました」って記入しちゃいました。
なんかよく分からないので、真偽は定かではありませんが、
担当者曰く、エロマンガ業界で桜田門に呼ばれた方々が、
口を揃えて『夢雅』を参考にしてるって…業界基準みたいです、ウチ。
W社、C社、T社…、ウチも偉くなったもんです。
全部ウチより10倍以上デカイ所だったりして、困ったなぁ、

けど参考にしてくれている他誌の編集長、誰も知りません。
国に推薦してくれるくらい敬ってくれんなら、一度くらい挨拶に来てくれてもいいのに。
まさかウチから届く献本を参考にしてませんよね?
ちゃんと買ってくれてるんるんですよね?
のわりには、そこの版元の偉い方々にお会いすると、
『どんな出版物やってるの?』なんて聞かれるんですから、意味不明です。

 というわけで、先ほど池袋のとらのあなで買ってきた宇宙帝王が表紙の夢雅10月号(発行:オークス)が手元にある。LINDA、THE SEIJI、RaTe、Cuvie上乃龍也鬼窪浩久やまのべきったユナイト双児、みにおん、佐藤村雨英太郎などといった、人気作家からベテラン作家、熟女からロリまで存外幅広い誌面構成。コラムの本数も最近のエロマンガ誌の中では多いほう。新人らしき作家では、「時効姉弟」を書いてる“しまたか”が、精進していってくれれば伸びそうか。総じての印象は、毎号買うほどではない。


 で、何を参考にしてるのか、業界基準とは何のことか。具体的には書かれてないが、順当に考えて、まぁ“消し”だろう(原稿料や締め切り設定だったりするなら、それはそれでたいしたものだが)。


 さて、それでは、推測されるところのその“消し”の程度は、夢雅10月号で、どうなのかというと。





 “消し”ありません。無修正。





 たとえば、酒とエロ漫画の日々。(http://d.hatena.ne.jp/gosplan/archive?word=%A5%AA%A1%BC%A5%AF%A5%B9)のオークス関連の単行本情報を参考にすると、すべて「消無」印。雑誌で修正しておいて単行本では修正を弱くすることもよくあるが、おそらく雑誌でも無修正を貫いていたのだろう。


 または、昨年1/6時点のある掲示板へのカキコミ(http://66.102.7.104/search?q=cache:WvWBGrkMedgJ:fc2bbs.com/bbs%3Faction%3Dreply%26uid%3D25206%26tid%3D1772902+%E5%A4%A2%E9%9B%85%E3%80%80%E4%BF%AE%E6%AD%A3&hl=ja&ie=UTF-8&inlang=ja)では、

4 臭性情報 - Abura_Age -2004-01-06 23:19:40 削除
商業誌単行本の修正ですが、一昨年の「松文館」の「BH」先生が捕まった一軒以来、各社状況を模索している状態が続いています。
ざっといくつか上げますと・・・
TIネット…かつては単行本はほぼ無臭性までいっていたが、現在は(重版分も含めて)白海苔が貼ってある。
桜桃書房…一昨年期末に事実上の倒産、現在はオークラ出版グループに合併、巻き返しを図るためか、雑誌、単行本共にほぼすべて無臭性、もしくは一部60〜80%トーン。 余談だが同グループのオークス、オークラの刊行物は成年マークをつけていない為か白海苔もしくは80〜90%トーン、稀に成年マーク無しなのにほとんど見えているのを出したりと、危なげな事をする業界最右翼。
メディアックス白海苔、だったが最近どんどん「細く」なっている、既ににきわめて白い細線が性器の一部を横切るのみ、ただし、作家もしくはコマによって海苔が大きい場合有り。
富士美(辰巳)…作品、作家によりまちまちだが、60〜80%トーンが性器の一部を隠すケースが多い。 また、その上で何故か男性器のみ白ヌキ修正がかかるというパターン有り。 かなり修正は薄い部類。 蛇足だが、系列の蒼竜社は成人マークがつかないため性器全体を白ヌキ。 更に閑話だが野々村〜の「それいけ〜」は絶版、一巻とあるが続刊もまず出ない、理由は「それいけ〜」のシリーズは同人誌で虎の穴と専属契約で出す事になったから、一部業界でかなり不評を買った。
茜新社…性器の一部、もしくは全体に60〜80%トーン、ほっとんど見えている状況多し、かつ、テーマも時勢に逆らって炉モノが多いという、業界最右翼の2。
松文館…一件以来、性器のほぼ全体を白ヌキだったが、昨年夏頃から白海苔へダウン、少し前に性器全体に80%トーンまで下がったが、今また白海苔(小さめのを2〜3枚)になっている。
桃園(司)書房…白海苔か黒海苔、大1枚か中2〜3枚、事件前後変わらず鉄板でこの姿勢。
フランス書院…事件前は60〜80%トーン海苔だったが、現在は白海苔か黒海苔
晋遊舎…以前は40〜80%トーン、もしくは白トーンだったが、最近は白海苔を併用。
ヒット出版…白海苔、面積はまちまち、TIとほぼ同じ基準。
ジェーシー出版白海苔、ヒットに同じく、と言うかTI、ヒット、JCは縦横の繋がりが有る。
フォックス出版…60〜80%トーン、もしくは白トーンだったが、最近は白海苔を併用するケース有り、作家による。
ワニマガジン社…成年マーク付(A5版)は作家によりまちまち、最近出たのは白海苔だった、マーク無し(B6版)は白ヌキ。
一水社…作家によりマチマチ、基本的には60〜80%トーンと白海苔の併用、トーンを複数重ねてモワレさせているケースも多い。

 業界最右翼との指摘。やはり、かなり“消し”が薄かった、あるいは無修正だったようだ。





 勝手に行政相手の不健全判定リトマス試験紙扱いをされていたことに、「ウチも偉くなったもんです。」と嫌味を込めたくなる気持ちは、当然だろうなぁ、と思う。行政も弱小だったりエロ系の出版社には、明らかに強腰に出てくる。出版業界に限らず、たいていの違法行為にはそうだが。多少、過剰圧力だと思われようとも、世論が支援しなさそうな業界、業態から叩いていくやり口は、素直にむかつく(そして、その先に自分らの業界、業態、会社、個人が見据えられているかもしれない可能性を想像できないことにも)。



 で、そのこととは別に、現実的な世渡りの手段として、今現在において性器修正はどの程度やっておいたほうが対行政的・対警察的によろしいのか? という問題はあって。


 塩山芳明の日刊漫画屋無駄話(9/1)(http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/nikkann.html)では、

夢雅』や松文館のアンソロ本が代表だが、『MUJIN』や『メガストア』の修正大増量をもっけの幸いに、無修正本も増えた。小心なオッサン編集は、どっちにつこうかとオロオロオロ(若いモンにはかなわん。全ての面で)。青春時代を『奇譚クラブ』ですごした、九紋竜と電話で打ち合わせ。「前回は乗馬姿の熟女だったから、次は猿グツワ姿を念入りにどう?」「レトロすぎねえ?」「俺らと同世代が読んでんだからいいの」「へへへへ…」

 メガストアの極太黒格子消しも売上面で心配だが、無修正まで踏み込むのも一抹の不安か。仮に、面倒ごと裁判沙汰、警察沙汰まで発展しかねない場合には、編プロは出版社からトカゲのしっぽ切りされる、という可能性も無きにしもあらず。


 あにめ18きん(3/8)(http://anime18kin.sakura.ne.jp/daial05-03.htm)では、

絵に関しては松文館裁判などが有りましたが、あれは誰が見ても単なる人身御供でしたね。
今成人コミック雑誌を見ると、修正と呼べない物が大半です。実写であったら全て発禁のレベルでしょう。それにオークスの「コミック夢雅」や富士美出版の「コミック桃姫」*1は無修正です。
なので「成人雑誌」マークが付いているのでたかが絵を回収したりはしないという事ですね。
たかが絵なんですから、エロゲーやアニメにモザイクをかけるのはやめましょうよ。

 無修正程度では回収にならない、というのは現実に何年もの間、それで販売がされているようであるし、実際そうなのだろう。けれども、都の十八番である不健全指定には、慣例とか前例といったものは通用しないことも多い。
 2001年の指定(http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2001/04/40B4R100.HTM)で、“消し”がどの程度の判断材料になっていたのか、まったく考慮されていなかったのか(指定の後、発行元の桜桃書房はオークラグループに吸収)。考慮されていなかったとして、当時は無修正だったのか。無修正と不健全指定が仮に関係なかったのなら、都とはまた別に判断基準をもってるだろう桜田門=警視庁が今回、呼び出しをかけた理由は。


 たとえば、6月に出た松文館裁判控訴審判決文(http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/9018/shoubun0616hanketsu2.html)の“消し”判断。

すなわち、本件漫画本のわいせつ性の認識に関する被告人の供述をみると、被告人は、取調べ警察官に対しては、「『密室』はとてもいやらしいわいせつな場面が描写されており、法律に触れることは理解していたが、少しでも消し(網掛け)が入ればわいせつ図画には当たらず、逮捕されないと思っていた。」(乙4)。「平成9年ころから、他の出版会社が、消しを薄くしたり、消しのないものを販売するようになり、松文館の売上が落ちたので、消しの程度を70パーセント、60パーセントと徐々に下げ、現在コミック誌は40パーセントとしている。消しを全く入れないとわいせつに触れ、30パーセントでもわいせつな漫画本と認識していた。取次店から、消しを入れていないと法律に触れ逮捕されると言われてきたので、消しは絶対にはずすことはできなかった。40パーセントは、描かれている陰部や性交場面がよくみえるか見えないかの境界ラインであり、影がある程度で、描かれている線が分かる程度であると認識していた。」(乙7)旨供述している。要するに、網掛けが入れてあればわいせつ図画には当たらず、警察の取締まりを受けることはないと思っていたという趣旨の供述である、被告人は、原審公判においても、ほぼ同趣旨の供述をしている。
これに対し、被告人は、取調べ検察官に対しては、「網掛けの程度を下げたのは、より高い性的興奮を求める読者の要望に応えるためである、読者の要望にそのまま従えば網掛けをしないことになるが、それではわいせつ物として警察の取り締まりを受けると思ったので、薄くするにとどめたものである。会社を経営していくには売上を伸ばす必要があり、なるべく性的な興奮度の高いものを出版する必要があったが、取締りを受けてはいけないので、仮に捕まったときにも、修正はしていると言い訳ができるように網掛けを行っていた。網掛けといっても、40パーセントや50パーセントの網掛けでは、透けて見えるような状態であり、『密室』がわいせつ物であることに変わりはない。午前中に行われた勾留理由開示の手続きにおいて、本件漫画本のわいせつ性について争いたいという違憲を述べたが、その真意は『密室』がわいせつ物に当たらないと思っていたわけではなく、『密室』よりも細かい描写で修正が行われていない漫画本もたくさんあり、そういった漫画本が今回取締を受けず、松文館が出版した『密室』だけが取り締りを受けることについて納得がいかなかったので、わいせつ物に当たらないと思っているという主張をした。自分だけが突出してわいせつ物を出版しているということになるのが我慢ならなかった。」(乙12)旨供述している。
 40パーセントの網掛けの入れられた本件漫画本を検分すると、その部分を見えにくくするという網掛け本来の機能はほとんど果たされておらず、このことに照らすと、網掛けがいれてあればわいせつ図画には当たらず、警察の取締を受けることはないと思っていたという被告人の警察官に対する供述内容は、信用性に乏しい。これに対し、40パーセントの網掛けの効果やそのような網掛けを入れていた動機に関する被告人の検察官に対する供述は、本件漫画本における網掛けの実体によく符合しているし、これに続く、本件漫画本のわいせつ性を争うことにした被告人の真意についての説明も、他社の出版物について述べるところの真否はさておき、当時の被告人の心境を物語るものとしては自然な内容である。したがって、上記検察官に対する被告人の供述については、全体として信用性を認めてよい。

 取調室での供述を一方的に引用して“消し”がわいせつ度ストッパーとして機能してなかった、と言い募る判決文への疑問はあるが、判決として出ている“消し”についてのこの考え方を使って、桜田門が改めて、エロマンガ誌に総ざらいをかけはじめている、といったことは推測できまいか。







 ところで、同じく或る編集者のオケラ日記の9/7(http://blog.livedoor.jp/itoboxsp/archives/50029557.html)の、

さて当の委員会々合だが、雑誌協会加盟社が久々に東京都の指定を受けたという報告がメインだった(…って、ウチだよ、とほほ…加盟社の方々すみません)。

 まだ都のHPに報道発表は出てないようだが……。 ありました(http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2005/04/40f4k100.htm)。

*1:桃姫は、6月号から性器全体に黒ベタの“消し”が入っている。