イントゥ・ザ・サン(監督:ミンク)


 新宿オデヲン座で、21:10の回。ここで前にやってて観た「ベルベット・レイン」も相当アレだったが、オデオンは場所が地下だけにそういう映画が掃き溜められてくるんですか。ひどいわ……、昨夜ダウンロードしてプレイして打ちのめされた「さるばトーレ!」体験版並み。



 スティーブン・セガールの映画を、テレビ放映も含めて一本まるまる観るの初めてだったんだけど、このでっかいおっさんは、いつもこんな下手糞な日本語を映画のなかで使いまくってるんですか? 日本生活が長かったとか、日本文化に造詣が深いらしいというあやふや情報くらいは耳に入ってたよ。でも、俳優のしゃべりじゃないだろ、この日本語は。それとも、こんなカタコトでも許される程度の日本贔屓ってことでいいの?*1


 婚約者という設定らしい山口佳奈子演ずるバーのママに、新宿御苑らしき満開の桜の木の下でプロポーズしたシーンの最後、ベンチから立ち上がる時の「ハイ」って日本語の掛け声はなんだよ! 間をつないだつもりか何かしらないが、無茶苦茶座りの悪い雰囲気かもして、編集の時に切っとけよ。で、それに山口も意味無く「ハイ」ってのっかってんじゃないよ……。



 また、映画の売りの一つにもなってることに、自分が見知った新宿の街がやたら出てくる分けだが、この映画を観て、例えばブルースリー映画を観て映画館から出てきた観客がリーになりきるような感情を、オデオンの階段を上り、コマ劇場前の広場や歌舞伎町を歩いていて抱くかというと、たいていの人間ならその逆だろう。新宿の街を安いイメージングで毛唐に汚されたことを、リアル新宿を目の前に再確認するだけ。


 東京名所めぐりか、と揶揄するにしても、地理の把握のされ方がえらく4次元でいらつく。
 築地のヤクザ事務所に潜入してたセガールの相棒のFBI捜査官が、市場近くでタクシー拾って逃げてから、車中で後ろを振り返り追われてないことを確認してセガールに電話をかけた場所が、ドンキをちょうど過ぎたあたりの新宿靖国通り。別に、新橋とか日本橋あたりでかけても良かったんじゃないか?
 東京タワーを見上げる寺で大沢たかおと中国マフィアが、真昼間に黒い商談を交わすシーンも、あんな人目につく場所で晴天の日になんて絶対ありえない。
 大沢の隠れ家の寺(東京タワー近くのとは別)に最後の決戦に車で向かうシーンは、風景が新宿、東京タワー、レインボーブリッジと東の方に流れていく。あれ? 前のシーンで隠れ家の寺が画面にポリゴンで写ってた時、「立川市」って文字が横に出てなかったけ? 



 もう、ほかにもいろいろあってきりがない。
 子分のヤサのプラズマTVに写ってる平成ガメラ映画で、しつこくセガールの娘がドアップされるわ、製作がソニーピクチャーズだからか大沢の足元でアイボがうるさくキーキー動いてるわ、バーでコロッケが物真似してるのが2回も大写しになるわ、栗山千明選挙カーの上でニコニコ手振ってるだけだわ、なぜ挿入されてるのかなんとなく分かるけど理解したくないカットがてんこ盛り野郎。
 全編通して一人だけ真面目に演技してる大沢たかおが不憫でならなかった。




 唯一の収穫は、チャイナ服のペース・ウーが激可愛いかったこと。あー、それだけだったよ!



参考:公式サイト

*1:同じ新宿を舞台にしてラストの殺陣も日本風家屋の「キル・ビル」と比べると、ユマ・サーマンの鼻にかかった語頭上げ「ごーごー」(栗山千明を指して)や下手っぴな日本語は許せたが、セーガルのそれは、日本文化への造詣を散々マスコミアピールにしてきてる分、余計に噴飯モノである。