えらい人の言うことはよく分からん。
「創」(http://www.tsukuru.co.jp/)2月号・出版業界特集の「巨艦・講談社が迅速思考で砕氷脱出狙う」(担当:丸山昇)で、少数のマンガ読みがいろんな意味でハラハラしつつ注目する少年シリウスについて、講談社のコミック部門全体を統括する五十嵐隆夫・常務取締役がコメント。要約すると、少年シリウスは「マニア系」読者をターゲットにしており、「雑誌が売れなくても単行本が売れくれればいい」という趣旨であった。
日本雑誌協会の発行部数リストの平均印刷部数を元にした、「最後通牒」による漫画雑誌・発行部数の比較によると、作家や誌内広告の重複具合から姉妹誌と言っていいマガジンZの05年発行部数は、前年より9457部減らして3万6584部。シリウスはこの数字より確実に少ないだろう。ちなみにリストにある分でZの部数を下回る男性向けマンガ誌は、2万9000部のIKKI1誌のみ。04年で部数を勝ってたGXには、05年でGXが3万9000部を維持したため逆転されている。
まあ、こんな数字を持ち出さなくても書店への配本状況を見ていれば、他誌と比較したシリウスの部数の少なさは、自ずと想像がつく範囲ではある。雑誌が売れなくともそれはそれで構わない、という戦略が実地で着々と進んでいることはよく分かる。
単行本が売れることに(黒字化を)期待する、という戦略は至極普通。あまり売れてない、話題になってないだろうという感触がこちらをイラつかせたり、都内の本屋では今も結構中小の書店で赤い帯をかけられた単行本の平積みを見かけるけれど、売れてないかと思うとその平積みが逆に痛々しさを感じさせたり、雑誌売るつもりがないから読者ページもあんな適当で表紙も下手くそなデザインなんだ?といった疑問が湧いたり、そういった突っ込みはいくらも出てくるのだけれど、単行本でペイするという基本路線以外のやりようをこちらも思いつかないので、もっと効率的な販促やってくれよという外野的反応をするくらい。
よく分からなかったのはシリウスが「マニア系」という位置付け。そうだったの?
編集長に創刊コンセプトを聞いた読売の記事では、「中学生がメーン読者」「基本はファンタジー漫画+ライトノベル。漫画も小説も両方読む、活字好きな男の子、女の子を意識しています」「創刊号は5万部。まだ少年誌色が強いが、これから少女向けの作品も増やしていく。ライバル誌は、内容的には『ジャンプ』という気持ち」ということになっていた。
確かに、中学生でファンタジー・ラノベ・ジャンプ好きとなると、まあマニアと言えなくもないかもしれない。が、創刊号にはかなり王道よりの少年誌の雰囲気、ストレートな感触があった。例えば、先にあげたZ、IKKI、GXよりは、よほど一般路線に近い印象があった。
確かに、ソウルメイトツーリストや乱飛乱外、怪物王女は萌え方面の、龍眼はやおい方面の需要を満たすに十分だけれど、直球でそういった読み方をされるほど偏ってはいない。題字ロゴ変更のあった11月号から大型連載ということで始まったZERONの火蓋も終末SFロボットモノという表層はマニア心をくすぐるが、ストーリーやキャラ立ては少年モノにオーソドックスな内容である。
それとも5月の創刊から8ヶ月経って、編集方針がこれからマニアよりへ傾きますよということなのか。創刊号で記念イラストを寄せていたヤスダスズヒトの次号からの連載起用は、そのように様変わりしようとする先触れか。あるいは、コミック部門の責任者である五十嵐常務とシリウス編集長(http://www.yomiuri.co.jp/book/zoom/BK20050525152326317L0.htm)とで、マニアという定義に対する感覚がズレてる?
自分が主要ターゲットにならない読者層だとばかり思いながらなんとなく勝手に疎外されたって読み続けるよというスタンスでいたのに変なところから援護射撃がきたなという違和感と、結局マニアターゲットでしか新創刊誌は命を繋いでいけないのか……という寂しさがね、なんかあった訳さ。