「それでも町は廻っている ①」(石黒正数) ヤングンキングコミックス

 西洋史教師の「ルターッ!」で浦安かよとツッコんだりもしたけれど、しもぶくれ気味の主人公高1女子・嵐山歩鳥は、今日も商店街でメイド(もどき)やってます。
 自動スケーターでカレーの材料の買出し、教師の無き祖父の形見の絵画を謎解き、魚屋の同級生と寝過ごした最終バス停で一日サボり、商店街の常連ばかりのメイド喫茶の客寄せに頭を捻る、etc。
 感じる臭いは、キャプテンで出てきたばかりの頃の西川魯介。ふっと紛れ込む色恋と淡いギャグの交錯が、不思議な感覚。148P1コマ目の「デートだと思えば!」と言いながら「たはー」と続ける歩鳥であったりね。


 脇役にあたる商店街の店主の大人たちだったりちょこちょこ出てくるクラスメイトあたりの、ちょい役が性格はいたってフツウなのに、顔がフツウでない。リアルっぽさ志向というかパーツに極端さが入る。歩鳥や準主役キャラの顔は一種類しかないのに。あとがきによると、3年前の都内の下町に上京してきて、自然に顔見知りになることができたこと、そんな「商店街を舞台にしてコミュニケーションの教科書になるような漫画を描こうと心に決めました。」とある。だから、そこは知り合ってきた顔見知りたちの実際を描かずにいられないんだろうな。
 同級生女子の針原春江は、古谷実で一番不細工な女子とタメをはれるくらいの不細工に描かれてるのに、歩鳥たちのフツウの友だち関係をしてるのも、同じような理由からなのかもしれない。だから、マンガ的な顔をした歩鳥たちこそ、キャラクターとしてよく動く分けだね。




 ……いい感じにひなびた商店街に住めるって得がたい幸せだよね、という結論に結び付けられなかったけれど、そういう読後感が得られるから、きっと。


それでも町は廻っている 1 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 1 (ヤングキングコミックス)