少年シリウス 5月号


今月号も目当ての作品が安定して面白い。ので、個人として特に書くべきことはないのだけれど、常日頃からプッシュしておかないと先行きどうなるか分からない雑誌なので、つらつらといってみようか。





創刊は去年の5月、あと2ヶ月で1周年を迎えるシリウス。あまり、大きな路線変更はやらずに済んできているなぁ、という印象がある。やったほうがいいという読者ももちろんいるだろうが、創刊号をほとんど手放しでプッシュしていた自分が言うと、済んできている、という言い方になる。題字ロゴの変更や児童小説の掲載が毎号の本誌掲載から四半期に一度の別冊という形に縮小したりといったことはあったが、マンガに関しては当初の雰囲気、王道+元気+ファンタジー+毎号ハラハラ+萌えといった要素をを絶やすことなく提供してくれている。



例えば、ターゲットや発行ペースは異なるけれど、シリウスの半年前に創刊したヤングガンガンがとっととグラビアを始め、2大看板のはずだったFFマンガがマッハの速さでぽしゃりドラクエマンガのストーリー展開が鷲津麻雀並みの遅滞に陥ってるのと比べると。



皮肉はおいといて、シリウスにそういった腰が座った印象をもつのは、同人サークル「虹色マンション」を出身とする藤山海里の「龍眼〜ドラゴン・アイ〜」、加藤和恵の「ロボとうさ吉」、佐々木ミノルの「炎天のいろは」という3作家の3作品が、創刊号から連載が始まり休載がほとんどなく、そして作品として軌道に乗ってるため。特に藤山の「龍眼」、加藤の「ロボ」は何度となく表紙やカラーページを担当していて、人気の証しだろう。加藤は赤マルジャンプで一度プチデビューしているが、ほぼ新人といっていい3人に創刊号から連載を持たせ(加藤の「ロボ」は創刊号で表紙と巻頭カラーを任された)、ここまでうまく力を発揮させている。毎号、50ページ前後を掲載し、いっぱいいっぱいのはずでもおかしくないのに、である。新味のあるこの面子が名実、シリウスを引っ張っていることを、評価したい。
新創刊雑誌で新人(かそれに近い作家)が頑張ってるのは、ヤンガンでも「すもももももも」「戦線スパイクヒルズ」がそうなのだけれど、こちらは編集部が創刊当初から戦略的に押してたわけではないように思う。



新人以外で創刊時から安定して面白いのは「西遊記ーDear Monkey−」「テレパシー少女・蘭」「ソウルメイトツーリスト」か。「怪物王女」は次に出る単行本2巻に掲載される分あたりからノッてきて、「もえちり!」は「妹選手権」時代の4コマ形式に代わってから途端に飽きが出てきた。児童文学原作の「蘭」を好きな人は「ぼくと未来屋の夏」も読んでるはず。



ほかの作品について現時点の感想をあげると、ファンタジーというだけで雑誌カラーと雰囲気がズレてた「0←→1 Rebirth」や「ダブルクロス」を早々に切ったのは正解だったと踏んだり、「バロック」と「夏の魔術」が休載しまくりですなだったり、なんで「四季使い」に終わる気配がないのか個人的に不満だったり、この古臭さはある意味いまどき貴重だからと単行本の1巻をお布施したけどやっぱり水戸黄門も真っ青なワンパタだな「ゴウジン」とため息ついたり、「ZeRoNの火蓋」は胸チラ未亡人編がロボット大行進なだけで話を引っ張りすぎじゃないのかと思ってたけど要所要所に入れてくる見開きの荒れ野をバックに咲く花でキメは案外震えるものがあったり、「海の人」打ち切りは残念だがストーリーがわやくちゃになってたのでいたしかたない痛し痒しだったり、「夜桜四重奏」は来月号で休載してる暇にストーリーに落としこめてない設定を練り直してこいと思ったり、「ソウルメイトツーリスト」も話が弱いのであえて眼鏡主人公を封印した回で腕試しもどうだろうかと思ったり、「圏外です」は学研のノーラでやってた「なあばすぶれいくだうん」の4コマバージョンに似た雰囲気が懐かしかったり、「たまごたち」はひぢりれいにの画力と時間をこんなやくたいもない原作で浪費させるのは本当に惜しかったり、「アヴェンテューラ」はプッシュしたいけれど休載しすぎなのが躊躇させたり、そんなところか。



新人賞作家はまだなんとも弱い。もちろんまだ創刊から1年も経ってないのだけれど、満を持しての登用かと期待させた、先月号開始のラノベタイトル書き下ろし原作の「銃姫」がどうにも時期尚早感がぬぐえない。去年12月に創刊したコミックREXでやってるアニメ原作の「ソルティレイ」に似たこれなれてなさ、というかたどたどしさが興を削ぐ。興を削ぐのは、魔力の込められた弾丸が発射されるとき、詠唱文字が周囲の空間に浮き出るのだけど、この文字のCGで貼り付けた感がちょいと安っぽいのもそう。というか、そもそも「汝に命ず」「眼前の敵を滅せよ」といった和風ファンタジー風のセリフが画面いっぱいに飛び交うのを読まされるのはもうこの年になるときつい。いや、友人の家に泊り込んでやった「D&D」のテープ録音起こし手書きリプレイを学園祭で教室の壁を使ってぐるりと張り出した中学生時代の企画を思い出して悶えてしまうからなんてこととは関係があるわけないじゃないか!



一方で、先月号に読切が載った第2回新人賞入賞作「劇団サプリコミック」(倉橋ユウス)は、賛否両論あるだろうけれどアリだと思うのよ。問題は、光るものが見い出せるのは確かなんだけれども、シリウスの今のカラーとまったく相容れない作品を入賞させた編集部の方針が、今後のシリウスの誌面作りにおける方向性の大幅な軌道修正があるのかそのあたりのは不透明さを匂わせるのが、一抹の。
どんなにずれても今のところのシリウスでは「もえちり!」のネタはオタだが構成演出はベタベタが傾斜の限度なわけで。「劇団〜」はその先をいってるから。
あー、このあたりの判断は微妙。次作を読みたい新人なんだけれども掲載がシリウスでなくてもいいというか。



そんなこんなでまた来月。






表紙・巻頭カラー「電波少女 蘭」

蘭とツンデレ関西弁中華少女翠のツーカーぶりが。ところで41Pと43Pの中段で連続するコマの構図がおかしい。

巻中カラー「Dear Monkey 西遊記

無頼非道のオリジナル悟空とクローン悟空に前月号に続いて今月号でも嬲られまくるテンテンからいろんな意味で眼が離せない。前号では涎まみれにされたり、今号では穴に細長いものを入れられたり(ウソは言ってない)。
で、当然ながら無数のクローン悟空に交じって登場するかつていっしょに旅した悟空。重要な伏線だった「いつかオリジナル悟空を裏切る」が消化され始めたので、いやがおうにも盛り上がる。

巻中カラー「ロボとうさ吉」

新章に入って当面の物語の流れを分かりやすく整理した回。まだ本誌で未読という人は、今月号から読み始めるとよろしい。
ネジを使わせなければなんとかりそうなことが軍(ソル)にばれていた。ということは、ネジを使ったスーパーロビンの登場頻度が抑えられるだろうから、ロビンとしての活躍が増え、その分、ロビンの等身大の成長を描いていくつもりだろうということを予想。

「龍眼」

こちらも新章な展開。前回1話と今回の半分を使って事後処理の話にあてたことになりその間、アクションはないわけだが、読ませる。査問会議でイッサたちを質問攻めにする偉いさんたちの描き分けが個性的にできてるからだろう。吹き出しが並ぶ10数ページがダレないのは。物語に必要とされる分のディティールが細かいんだよなぁ(例えば一仕事終えたのだから、イッサが自分の住む部屋で起きるところろ冒頭にしてもいいと思うのだけれど、そういう生活感は今のところこのマンガには必要ない)。