「野宿者/ネオリベ/フリーター」 ―アンダークラスの共闘へ―


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19:00から池袋ジュンク堂の4F喫茶で、「〈野宿者襲撃〉論」(生田武志人文書院)、「ネオリベ現代生活批判序説」(白石嘉治・大野英士編、新評論)、「フリーターにとって「自由」とは何か」(杉田俊介人文書院)の3冊の刊行記念トークイベント。昨年読んだ「フリーターにとって「自由」とは何か」の力強い言葉に一度本人を見てみたいと思い。以下、気になったポイントをかいつまんで。自分が解釈した要旨であり発言の正確な複写を意味しない。


  • 2006年は野宿者(生田氏はホームレスという用語をあえて使わず)への「排除」と「襲撃」が本格的に強まった年に位置づけられる
  • 生田武志氏によれば野宿者において「個人的には「2006年は排除の年」と位置づけている」*1
    • また行政による「排除」と一部の若者などによる「襲撃」は別個に起こっているのではなく連動している
  • 行政による公園などからの野宿者追い出し
    • 不法占拠を理由として
      • 以前は工事などの物理的理由だったが今は不法占拠などの法的理由だけで追い出すようになってきた
      • つまり合法的な「排除」の強まり
        • 合法的な「排除」を暗に了解した人間による暴力的な「排除」=「襲撃」の強まり
        • 「襲撃」者の学歴や社会的評判などは様々
  • 日雇い労働者とフリーターの待遇面の近似
    • 職業的差別も近似
      • 日雇い労働者の野宿化はリハーサルで次にくると予想されるフリーターの野宿化が本番
      • 生田武志氏によれば〃野宿者問題の変化の中で、ぼくは2000年から「フリーターは多業種の日雇労働者である」「そうである以上、将来フリーターの一部は野宿生活化する」と思うようになった。(釜ヶ崎を除く)全国の寄せ場の事実上の衰退、消滅という事実について考えていて、この点に気づいた。「不安定就労から野宿へ」という社会問題の主役が、現在の日雇労働者から、やがてフリーターなどの若年層へと移っていくだろうということだ。それは、思いついてみれば、なぜ今まで気が付かなかったのかが不思議なほど当たり前の話だった。いわば、「日雇労働者がリハーサルし、フリーターが本番をやっている」、あるいは「日雇労働者を中心とした野宿者がリハーサルをし、フリーター層が本番に臨もうとしている」ということである。〃*2
  • 英米は20年前にすでに若年層の野宿化が問題に
    • 野宿化する前に実家に戻る日本に対して英米は実家に戻らない(戻れない)
  • 障害者自立支援法」「ホームレス自立支援法」の施行
    • 行政における自立というキーワードの流行
    • ただし経済的就労的自立に限定
      • その実態はチャンス&排除“チャンスは与えたんだからそれでダメなら後は知ったことか”
  • 「ホームレス自立支援法」によるシェルター設置と雇用機会の提供
    • 就業率は50%
    • ただし高齢者ホームレスの就業はかなり困難
      • ホームレス問題の中核にいる高齢者にとって価値なし
        • シェルター=チャンスを生かせず就業できなければ「排除」
  • 引きこもりの自立支援
    • フリーターなり会社員なりになることによる社会復帰を説いても労働条件の問題をセットで考えていなければ片手落ち
  • 阪神大震災で積極的にボランティアへ参加した引きこもりの存在
    • 仮に軍があって志願兵を募ったならやはり積極的に参加するのでは
    • その紙一重
  • ベーシック・インカム
    • 本来何の関係もない個人の存在と労働義務
      • 行政の言う自立とは労働への依存を説くものか
  • 景気がよくなって底辺が底上げされ全体のパイが広がっても何らかの再分配が意図的に行われなければホームレス・フリーター問題は解決するどころかこのまま拡大していく
  • 90年代中盤にフリーターが社会問題として認識され始めたのは男性のフリーターが増えてきたから
    • そこまでにパートの大きな部分を占めてきた女性に対する視点の欠如

杉田氏本人は静かに話すタイプで、文章の熱からすると意外な感じ。質問タイムで、野宿者の急患の知らせが入ると「どうせたいした症状でもないくせに」という雰囲気に覆われる救急医療の現場を医者の人が語り、パネラーに意見を求める。「本当にどうしたらいいんでしょう」。社会復帰や偏見の払拭という課題以前、生死の瀬戸際にどう手を打つかというホームレスの問題。言葉がない。だが、言葉がないで済まされない。

*1:5/22付けの生田氏の指摘(http://www1.odn.ne.jp/~cex38710/thesesdays9.htm)を受けて修正。

*2:上と同じく5/22付けの(追加)をもとに修正。