「究極宇宙味帝シーザー」(Boichi)ガムコミックス


 先週のモーニングに読み切りが掲載されていた作家が、コミックガムで連載していた作品。モーニングに掲載された、地球温暖化+DNA保存のための人工知能塔の270万年に及ぶ物語は塔がつくられるまでの経緯、嵐や生き残った人類から塔を守る人工知能の試行錯誤、最後のオチ――までを、本当に「たったの」と言える42Pの中によくまとめており、構成の力量を感じさせた。
 ので、昨日、トークセッションの帰りに池袋の新宿書店でこの単行本を見つけ、そういえばモーニングの例の読み切りもBoichiに似た作家名だったと、立ち読み用の本があった「究極〜」をぱらぱらめくるとビンゴ。さらにぱらぱらめくってみると、女子を赤ちゃん抱っこして「メイドさんしぃし〜」している正面からのアップがあったので購入。



 そんなわけで、モーニング読み切りとはまったくベクトルの異なる作品である「究極〜」。
 ボンボン読者層向けのギャグと正統派肉感的美少女絵画とモーニング読み切りで見せたハードな写実が同居。
 コミックガムという雑誌のテイストを反映したのかそれとも作者が本来もつ嗜好を反映したのか、よく女子の肉体が踊る。特に尻。尻、パンツ、尻、太もも、尻、さらに尻。


 自称「料理で人類を救った料理人」シーザーの冷蔵庫を、賞金稼ぎの美少女3人組がかっさらい、シーザーも3人組のハンター家業に加勢するようになって、超絶料理技巧でターゲットを「ブラボー」させていく。
 韓国の作家なので、生牛肉が特産物の星での勝負はユッケ対決。シーザーが繰り出した勝負料理は、見開きで迫る「絶壁の豚刺し 300人前!!」。「マトリックス」の無限パースペクティブがかかった電脳空間内の武器庫を思い出させる構図はかなりしびれる。あと「牛スネ肉のクリームステーキ」がうまそう。

 この料理シーンにたどり着くまでに、美少女3人組と共闘して、体調数十メートルになりそうな怪獣じみた“絶壁の豚”をハントするアクションが描かれる。他の話でも、血の雨降らす「無限の住人」並みの殺陣が挿入される。これが料理シーンやお色気やギャグから浮いてると言えば浮いてるのだけれど、これはこれで読み応えがあるのでちょっと評価に困る。
 なので、この作者には4月からヤングキングで始めた連載が終わるか起動にのって余裕ができた頃にでも、「妖神グルメ」(菊地秀行)のマンガ化を是非やってほしいところ。この作風と画力ならば、ダゴンのねっとり感とおとぼけなところも垣間見せる主人公をきっとあますところなく。




 日本での単行本はこれが2冊目。不勉強だったことを恥じ入るばかりだが、昨年まで阿吽で連載をもっており、そのエロマンガが初単行本になっている(http://www.amazon.co.jp/gp/product/4894653087/249-8539947-9846702?v=glance&n=465392)。個人的には、ちょっと“使える”気配がしないのだけれど、マンガとしては面白いと期待できるので買っておくこと。


究極宇宙味帝シーザー (GUM COMICS)

究極宇宙味帝シーザー (GUM COMICS)