「モーティヴ -原動機- リフュールド ①②」(一色登希彦)YKコミックス


 1巻を読んで、悲しくなってしまったので、ずっと2巻を読まずにおいた。あと、2,3年はほうっておくはずだったのに先月、短編集の「モーティヴ-原動機 0―リフュールド」が出てしまい読みたくてしょうがなくなったので、2巻を購入、読んだ。




 かつて"逃げ出してしまった"オンロードバイクレースの世界にあきらめ切れずにアマチュアとして舞い戻ったミチタカ(25)が、相棒となったメカニックマンのかつての師匠に、相棒の理想主義を自分が叶えて見せようとタンカを切った台詞に対して、師匠。

無理だと
思うなぁ
だって あんた


そういうトコまで
行けるカオ
してないもの…


走りを見れば
そんな才能あるのに
今こうやって何者でもないってことはさ


あんたは過去 何かを
すべき時に それを
決定的にやりそこねて
いるんだよ


そーゆー顔を
してるよ
あんたは……


だから無理
だと思うね

 あるレースでバイクを大破させてしまい、修理代でレース費用がつきかけ、「結局、金がなくちゃぁ…」と、母親の7回忌で帰省した実家でつぶやくにミチタカに、その兄貴。

夢があるのに
金がないってのは
矛盾だて
居心地のええ
言い訳だて


夢をかなえる程度の
金も動かせんって事は
その程度のショボい夢でしか
ないって事だがや…


言い訳に追いつかれたら
その時は


一生 都合のええ
言い訳を続けるか


その場所に着地して根を張るかだて


いずれ人はどれかを
選ばなあかんのだでよ
それまでは好きなように


翔んでみろて
ミチタカ

 そーいったメカニックマンの師匠や兄貴の言葉に、ミチタカはレースで決着をつけて、最後まで走りきるさ。
 でも、そーいう言葉を投げつけられた時のミチタカには、まだ克服していけることが分かっている有限の高さをもった障壁ではなくて、不安なまま踏ん切りがつかないで飛び出せばどこまで落ちていくか分からない底なしの谷、として師匠や兄貴の言葉があるんだということが、痛いほど伝わって、胸が詰まる。作者のその力量に敬服する。



 「キリン」以来、出会えていなかった、次のバイク乗りのマンガ。