コミティア78の新規購入サークル分から。

 1時間目の体育の時間に遅刻した女子高の生徒2人が、遅刻をごまかそうと体を水道水で濡らして汗のように見せかけ、年寄りの体育教師を騙そうとするが友達のツッコミでばれ、仁王と狸の置物を背負わされて校庭を走らされている途中、校庭の隅にいる猫をみつけて触ろうとしたところ、グラサン・マスク・トレンチコートの男が猫を渡せと詰め寄り、怪しい男だと追い払って猫はカバンに入れて家に連れて帰りましたとさ、夕日でキメ。
 おそらく猫は、合成怪人でもジャガーキャットでもない。女子が可愛いな。


  • あらいあき、荏本朋 《ゼンマイアタマ》
    • オフセット・合作「黴頭」

 荏本朋による、ライブ好き女子二人組の同居生活4コマ「ふたりとも」の、サブカルっていっても主義主張がちょっとアレなだけで普通の人間だよね、というのがなんとなく窺える雰囲気が良い。あと、バタ臭い鶴田謙二的な絵柄が好み。


  • こてんつ 《Conflict
    • コピー誌「発明家とメイド」
    • コピー誌「発明家とメイド AFTER」

 エジソンのような発明家の少年と、彼を世話するメイドの話。メイドのためにコーヒーを淹れるためだけの馬鹿でかい装置をつくったり、お節介な町の親父の手助けでメイドに花束を送ってみたものの「自分がいたらないばかりに……」と勘違いされたり。朴訥な住人たちは、ほのぼのしてどこか懐かしい。


  • ヒカゲノイクラ日陰の無
    • オフセット「おまもり」
    • オフセット「すべての人が死んで行く時に」
    • オフセット「死肉のドリー」
  • ヒカゲノイクラ日陰の無》 + 恵那 《チルチル☆にぢる
    • オフセット・合作「男装少年のススメ」
    • ペーパー集・合作「男娼館」

 小栗や夢野に代表される大正期・昭和初期の耽美趣味を、美少女とエログロで描く。この中では、学徒出陣する想い人へ、女学生がセーラー服のスカートをたくし上げて御守り代わりに陰毛をぶっつりとむしり取らせてあげる「おまもり」が、ハイセンスなエロースでぐっときた。「死ぬもんか」「おまもりだって貰ったんだ」と力強く言葉にする学徒兵の右手指にしっかり握り締められた3本の縮れ毛(毛根付き)。ページをめくって、はためく日章旗の歓呼と汽笛に送り出される機関車と、それを見送る女学生の後ろ姿(おそらくまだノーパン)。ここまでしっとりと心に染み入る陰毛が紡いだドラマを過分にして知らない。


  • ヒガシマサユキ 《ロボいぬ
    • オフセット「ジョンとサリー」
    • オフセット「SORAMIMI VIRUS ROBOINU'S SHORT STORIES vol2」

 見た目のファンシーさに騙された(笑)。まさか中身が脱力系ギャグだとは……。子供の頃、部屋にあるぬいぐるみを使ってこんな即興のごっこ遊びをしていたような。ティアズマガジンで注目されてたのも分かる。フリーWEBマンガのe-manga連載の作品を収録した「ジョンとサリー」は、原色カラーで塗りたくった絵が読みにくくてどうも。


 エースでやってた「カミヤドリ」の舞台設定にも反映した、ネパールの放浪旅行記マンガ。どうやらネパールの飯は安くて美味くてバラエティに富んでるらしく、かなり旅してみたい国にのしあがってきた。「非日常〜」が03年、「ネパール〜」が06年の発行。3年の間に現地に友人が増えて、「ネパール〜」では友人関係はまるで日本に居るかのように暮らしているのが自由人だなぁと。


 人形やぬいぐるみをモチーフにした児童ファンタジーな世界観を、強烈な腐敗のイメージで整えたイラスト集。大人の暴力から逃れるための子供の世界は、出口のない中で自家中毒を起こしながら、ある意味かぐわしくもある臭いを発するか。


  • 真受融 《薬缶猫》
    • 「ガッとつかんで後ろからめくり読む」

 ティアによるたんびに気になっていたものの、なんとなく手を出してなかった、飛び出す絵本のサークル。手造りのため部数が少なく、売り切れていたことも多かったせいなんだけど、案の定今度も飛び出すほうは売り切れで、まだ残っていた、背中にネジのついたメイドさんを巻き巻きするパラパラマンガのほうを買ってみた。つっばり棒にネジのツマミ部分を巡らして、スカートをたくし上げながら自力でネジを巻くメイドさんの腰つきがエロい。


 腐海な森の中で泣いていた蓑と藁靴のおかっぱ幼女が、ドリアードのような女性型精霊の示しで蝶の羽を生やして飛び立つサイレントマンガ。独特の細かい書き込みが印象的。


  • ZENTOYO 《TIGER
    • オフセット「HANG 'EM HIGH」

 超常現象否定派なのにUFO同好会に所属する少年が、肯定派の少女と学校の屋上でUFOを呼ぶ交信をしていたある日……。
 なんてことないボーイミーツガール物なんだけど、絵柄の少年誌ぽさが大変気に入ったので。 


  • 平野まさのり 《BlackDwarf
    • オフセット「真田ぬこ」
    • コピー誌「真田ぬこの進撃」

 メインは、スカートを履いた猫=「ぬこ」さんの、何でもないようでいてちょっとだけ可笑しい日常4コママンガ。人間の目から見たちょとした戯れを猫視点から大冒険風にトレース。オチがないに等しいので、気分によっては物足りないかも。


  • 大江戸小町 《雑景横丁
    • コピー誌「キャロットちゃんとカボットくん」
    • コピー誌「裁きの島のネクロとムクロ」

 世界名作劇場を思い起こさせる絵。コマ割り共に、とてもしっかりしていて安定感がある。小学校低学年向けで学研あたりが出す本に採用できそう。


  • いまきたこのみち 《工房ギルドウッド》
    • オフセット「RELOADED CARNAVAL 侵略の季節」
    • オフセット「RELOADED CARNAVAL 野の呼び声」

 「侵略の季節」は、外宇宙へ探索に出た宇宙飛行士が未知の知性体に捕まり、地球に残してきた愛する幼馴染の記憶を引きずり出され、死ぬ。知性体は、繁殖媒体として使える程度の知性を育んだ地球への侵攻を決断する……。
 古臭い絵柄にありがちな青春SFと思い、一度は机の前を通り過ぎようとしたが、買ってよかった。COMICリュウでいけるよ。学生時代に想いを伝えられなかった宇宙飛行士は、その後、彼氏の浮気に愛想をつかした幼馴染とまた打ち解け、帰還後に想いを打ち明けることを約束して、しかし旅の途上で死ぬ。過去の記憶は、セリフのひらがな部分がカタカナに置き換えられ、あくまで未知の知性体によって再生されていることが示される。想いが確かな分だけ、情報として知性体に消費されてしまい後に何も残されない哀しさが響く。


  • げんごろ〜 《GENGOROYA
    • コピー誌「UPEND!!」
    • コピー誌「UPEND!! vol.2」
    • コピー誌「MIRACLE GO☆GO!!」

 「UPEND!!」は、幼い頃に預けられたお婆さんのもとを、13歳になった年に母親のいる街へ旅立つ少女の冒険。説明が少々足りなくて、いまいちストーリーの転がり方が掴みづらいんだけど、丁寧で勘所をおさえた絵の力に助けられてる感じ。根っこが少女マンガであるのに、そちらを苦手にする自分にも読ませる。ジャンプを目指す女性作家の人は、同人時代はこーいうお話で力をつけていってるんだろうかなどと漠然と。


  • マサル604800ノウタ
    • オフセット「Dairy Smile」
    • オフセット「カカムム日記 ♯001〜♯050+α」
    • オフセット「カカムム日記 ♯051〜♯100+α」

 「カカムム日記」は、好奇心旺盛で行動派のカカさんとしっかり者のムムさんと猫のヒスイの「Niea_7」を地でいくような食うに事欠く極貧アルバイト生活を、1ページマンガの連作で。
 一袋20円のあげだまをオカズに買いそうになってさすがに止めたり、学園生活を懐かしんでダイエット部をやろうと言ってこれ以上痩せれないと却下されたり、満載の食生活ネタはやっぱりこーいう貧乏マンガの王道。手持ちの資金でどれだけやり繰りできるかを詰めて考えちゃうところに、哀しいリアルさが(笑)。「Dairy Smile」の登場キャラクターも、基本的に稼いでたらふく食おうという前向きさが見られないのが、ダメダメな好感がもてる。個人的なHIT。


  • 鈴木俊雄 《猫橋屋》
    • コピー誌「まおうちゃん VOL.4」
    • コピー誌「でるもん 試験にでるモンスター図鑑」
    • コピー誌「でるもん2限目。 試験にでるモンスター図鑑2」

 「まおうちゃん」は、ちびっ娘な外見のまおうちゃんが強力モンスターを退治(?)したり。「でるもん」2冊は、ミノタウロスなんかの有名モンスターを可愛く少女化。「でるもん」収録のガーゴイルのポーズが、火吹山の迷路にいた例の挿絵とそっくりで、作者の人と机をはさんだでGB話をひとしきり。「でるもん」設定では、だるまさんがころんだ、が得意ということになっている。今、見直すと、マンティコアは、死のワナの地下迷宮にいらっしゃった技術点10の強敵とは違ったよう。


 作者はアワーズでエアバイクSFマンガを連載中。昔書いたマンガ・絵や商業で持ち込んでボツになった作品を収録。空とメカと冒険と(美)少女に手抜かり無し。くっきりはっきりかっきりした絵と、話のテンポがちょっと昔風なのが好み。


 石灰岩の塊から削りだしたような半人型ロボたちの鉛筆書きイラスト集。色をつけないでこのまま3Dモデリングかフィギュアにしてもらいたい。後半にちょっと収録されてるロボ娘ウエダハジメ風味。


 姉さん、まだ、自分には早すぎたのか。「だいあんと」収録の、巨大蟻に占拠された廃墟の島に送り込まれようとする少年がモーゼ風に変身させられて海を割る話……は、第13.37567話なんだ、そうなんだ。頭のおかしい科学者や訳知り顔のお姉さんの説明にいちいち突っ込んでいる少年だって、きっとおかしいんだ。蟻酸で溶けちゃえ。