イブニング No.1
「レッド」(山本直樹)
冷静沈着で男勝りの理論屋行動派なイメージで描かれていた赤城(=永田洋子)が、谷川(=坂口弘)の唐突なプロポーズを「女性蔑視の女性利用主義ではないですか?」と突っぱねた帰りの夜道で、公安らしき車に後をつけられるのを耐えられずに駆け出してしまう3話目。大菩薩峠の検挙などで大打撃を受けた組織は、十分な人材や見通しもないまま、武装闘争への道を突き進む。赤城がその後、プロポーズを受け入れたのは、そういった耐えられるかどうか分からない不安を打ち消したいがためだったのか。青春群像な切り口がさらに色濃くなってきた。来月発売号あたりでそろそろ得意の濡れ場が欲しいか。
今回は、仮名に基づく実名の推定がさっぱりできず。あさま山荘や山岳ベースの事件以前について書いた詳しい本がないかねぇ……。
- 烏場……? (1969年11/2、厚木基地ダイナマイト爆破未遂時に逮捕)
- 稲村……? (1969年12月、神奈川県内の操車場でダイナマイト所持による逮捕)
- 蒜山……? (1969年12月下旬、愛知県内の駅構内でダイナマイト所持による逮捕)
- 岩湧……河北三男 (1969年12月、日本共産党革命左派リーダーの地位を離れる)
1969年9/4の愛知揆一外相訪米訪ソ阻止闘争で逮捕された谷川、吾妻(=吉野雅邦)の求刑公判で傍聴席にいるナンバー⑬の女性は、横国出身で京浜安保共闘所属の大槻節子。72年1/30の迦葉山ベースでの死亡当時23歳。
29日中に、テントを畳み、山小屋へと移動した。山本、金子、大槻は小屋付近に緊縛された。迦葉山は榛名より標高が高く、寒さも厳しかった。30日未明、山本が亡くなった。亡くなる直前に生後間もない娘を呼び、叫ぶ声が響いたと、妻である恵子が言った。恵子は永田の肩に顔を埋め「私は頑張る」と泣いた。
同じ30日の夕方、森が「大槻が加藤(既に亡くなっている)と同じ目つきで俺を見た」と言い出した。またトイレに立った永田の目に、屋外に緊縛されていた大槻が自分を睨んでいるように見え「総括しろ!」と怒鳴ったこともあった。その後、森は「総括しようとしているとみなして、今まで殴らなかったのは正しくなかった。全員で殴ろう」と言い出した。そして森に頼まれ、永田が全員に「これから殴ってもっと厳しく総括を要求する必要がある」と発言した。全員「異議なし!」と答えた。
そして大槻と恋愛関係にあった植垣と、大学時代から仲の良かった三崎に対し、「大槻と対決せよ」とのことで、二人が最初に殴打するように指示が出された。
更に森が坂口に、このことを大槻に聞こえるように大声で叫ぶよう指示した。坂口は「殴られないと思ったら大間違いだぞ!」と大声で叫び、全員で外に飛び出して大槻の元へ向かった。
しかし大槻は既に亡くなっていた。殴られると知って絶望し「ショック死」したのだろうと、指導部は大槻の死をそう総括をした。大槻は極端な衰弱と寒さによる凍死だった。
第3回イブニング新人賞・藤沢とおるTHE CHALLENGE大賞「ビビリメガネ」(門辺美沙)*1
教室で一人で本を読んでる暗いいじめられっ子の男子に興味本位で話しかけてみた元気娘。彼が熱心に読んでいたのは世界の殺人鬼の実話集。でも、物好きな元気娘は彼に興味を抱いて……。
18歳と若い作者が、こんな青臭くてテンポの良い投稿作を、イブニングのような半親父誌に送って、それが大賞100万円を獲っていることに、驚く。つーか、100万円って、姉妹誌のアフタの四季大賞賞金より高いじゃん。こっちも年4回開催してるし、これからは受賞を狙うならこっちか。
さておいて、中学生の時とか、こんな熱弁を必死こいて振るってたよなぁ、という思い出を明るく爽やかにからっと仕上げた良作。化学の時間にあてられて「今、数学の宿題プリントやってるんでっ!!」って元気に答える女子学生さんがいたら、自分だって惚れるわ。
毎回テーマを決めて募集しているということで、第3回は「マニア」。だから、殺人鬼なのね。次回の第4回新人賞は「告白」で審査員は古谷実。古谷が選りすぐった「告白」マンガは読みたいぞ。