COMICシルフ vol.1


 あー、なんか飛んで来たのか来てないのかよくわかんないけど、サボってたわけじゃなくて、地道に、COMICシルフ、とか、ざちお、のキーワードつくったり、下準備はしてたのね。なんか単にノビノビになってただけで。ちょうどいいからのっからせてもらっとく。



 悪くない。大外しな作品が皆無。こつこつあててくヒットエンドラン。ざちお、というランニングホームランがあったのもうれしいところ。ぱっと見た印象や作家陣からは確かにコミハイ!なんだけど、読んでみるとソフトなゼロサムワードというか。あるいは、友達以上恋人未満で上限を逆足切りしたアワーズプラスか。
 おそらく創刊号の読者は7-8割、男。日ごろ、ガオ!や電撃系を買ってたり、「リリアとトレイズ」のファンだったり、男性向け雑誌で掲載作家のファンになった固定層とか、自分のような女性マンガ誌を勉強してみたくてゼロサムやメロディやベツコミに手を出すもののいまいち乗り切れなくて手頃なのがないかしら、と手をこまねいてるような輩とか。まだ季刊であることだし、2、3号を経過したら、がらっと誌面の色が変わってたってことも、全くありそうだけど、今のカラーで悪くない。この創刊号に載った読切作品と同じ以上のレベルの読切を、vol.2でも維持してくれれば。



 つーか、ざちお、が載る限り買う。






読切「ルート2」(古名奏子)

 克也が死ななかった「タッチ」を三角関係方向へ前進守備したような。口元の表現がちょっと大雑把でもったいない。


読切「お伽噺の少女」(斎まや)

 暗さと歴史の積み重ねを感じさせない遺跡の様子が、少女や少年の悩みを重さをもって引き受けていないように思える。惜しい。


読切「アノニマス 鳥籠」(今村陽子)

 終盤に近づくにしたがってどんどん袋小路に入っていく物語。前半の静かなトーンは低音部のみがビブラートを効かせるように波の高さを低めていく。が、ラストで、この世を去りいく間際の彼女が見せた笑顔の高らかなことといったらどうだ。物悲しくなっていいはずなのに、その笑顔にうれしさがこみ上げる。


「まかないこむすめ」(ざちお

 ネコミミ美男子との仲むつまじい二人暮しを死守しようと家政婦志望の幼稚園児風イヌミミ幼女に素っ気ない態度を貫こうとする女性作家先生。ほのぼのした作品全体の雰囲気は、一方で、そこかしこから、譲歩しない優しさ、を滲み出させている。無条件の愛を注いでくれるストーリー進行役は一切存在しえないと思わせる。この作品を読んでアマゾンで注文した「はねむす (ダイトコミックス)」に、家政婦と同じような耳の形をしたユウ族という亜人種が出てくる。関係があるのかも。


巻頭カラー「ユイ、316歳」(星野リリィ

 美男美女共に、慎ましやかでいて艶のある口元がいろっぺぇ。落ちないリップクリームのCMで採用させたい。視線の障りにならない程度にポイントポイントに挿入されてくる刺繍レースな枠線や背景が、さらっとした絵柄が魅力のキャラクターたちを、ほどよく彩る。表紙の「リリアとトレイズ」を後回しにしてこちらが巻頭は、正解。

巻中カラー「S・L・H ストレイ・ラブ・ハーツ!」(硝音あや)

 一応、少女マンガ誌なんで、こーいうベタなのも必要と。