少年シリウス 2月号


 3号連続のホラーマンガ特集「真冬の怪奇宴」の2段目。「聊斎志異 2007 アナザースタイル」のタイトルで、新人賞出身の若手中心に中国の古典怪異短編集「聊斎志異」のエピソードをアレンジを加えながら作画させる。ほかにベテランでイダタツヒコ、新鋭でヤスダスズヒトが参加。



 さて、これまでのシリウスとはちょっと毛色が違いすぎで、いきなり感が強かったホラー特集。背景が、だんだん分かってきたような気がしないでもないのは、表紙・巻頭カラーで大PUSHの「怪物王女」のアニメ化発表を見て。ほら、「怪物王女」って一応、バイオレンスホラーでくくれるじゃん? アニメ化の打ち出しに何か雑誌全体の企画を絡ませてできないかーってところに、もういっちょ、いまいち伸び悩んでるというかタマとして数えられるほど育ってきてないんだけど何とか出番を与えて実力をつけさせたい新人賞の方々を絡めていけないか?、って前提があって、じゃあホラー特集でつなげちゃえ!ってなったんじゃないのかな、とか。

  • 怪物王女アニメ化+新人育成企画→ホラー特集


 という。大分前から進められていた「ゆうやみ特攻隊」(押切蓮介)も、ちょうどはまってくるし。
なんかホラーが後付けっぽいなぁ、と感じるのは、1月号のホラー特集感想でも書いたけど、目玉作品(1月号では「ゆうやみ〜」)以外のレベルが足りなさ過ぎるから。2月号でも、これが同じ物足りなさで。


読切「化けの皮」(零一)

読切「かわいい猟犬」(山久)

読切「宿屋の怪」(瀬川サユリ)

読切「緑衣の怪」(武本糸会)

読切「誘う手」(中村恵三朗)

読切「いつかの迷い館」(箱宮ケイ

読切「エレベーター」(大関やすただ)

読切「爪痕」(イダタツヒコ

読切「書中の美女」(ヤスダスズヒト

 以上、「アナザースタイル」での読切は9作品。
 新人による読切の中では、「かわいい猟犬」(山久)、「宿屋の怪」(瀬川サユリ)が読めるレベルに達しているけれど、ホラーとしての面白さは微か。「緑衣の怪」(武本糸会)、「書中の美女」(ヤスダスズヒト)はさすがにプロの仕事をしていたが。1月号でも予告になかった新人の読切を4作品ほどいきなり載せていたが、なんとか新人に(未熟さには目をつぶって)露出の場を与えようという編集サイドの意図が、企画を中途半端にしてないか。児童文学とのコラボはシリウスの特徴とはいえ、なんでそこで古典の「聊斎志異」なのかも、よくよく考えると分かりにくい。


 さらに指摘しておくと、シリウスのカラーとは相容れなさそうながらあえて第2回新人賞を受賞させてた倉橋ユウスを、ラッシュを経由させてエイジに逃がしちゃったのは正直、痛いんじゃないのかと思うのよ。プレ新人賞受賞の春瀬ひろきは、連載を双葉SEED!にいかれちゃったし。これが、この2人以外にも新人が育ってタマ数がそろってきてるのならいいんだけど、そうじゃないし。


 新人チャレンジ強化期間を始めたのが、ホラー特集のもう一面の狙いだったとしたなら、なんでホラーなのか、どういうホラーを描いたらいいのか、それ以前にマンガとして面白くなけりゃならないんじゃないか、そういったことを新人と意思疎通できていたのか。3月号予告のホラー特集告知は画面下にちっさく乗るだけになっちゃって、一応まだ、木静謙二とか綾坂みつねとか哉井涼とか、それなりに知名度のある作家の読切を予定しているはずなんだけど。尻すぼみか。そりゃ、志村の新連載のほうが楽しみなのは楽しみですよ、でもね……。






 ところで「四季使い」の休載告知はするのに、「スターゲイザー」の打ち切り告知はないのな。






読切「ムージャの宝石」(箱宮ケイ

 ホラー特集の読切も悪くはなかったが、こっちのほうが良い。檻に囚われた、宝石を吐き出す物の怪を助ける少年の話。少女の頼みをぶっきらぼうに断っておいて、数日後の夜中、少女のすぐ脇を全速力で逃げていく物の怪。おしおきされた少年を笑顔で迎える少女に又、強がる。シリウスの良心になれそうな作家。


「龍眼」(藤山海里

 公開訓練試合の観覧にぞくぞくと各国のおえらいさんが到着。歌舞伎モノ、中国風ちびっ娘、「AKIRA」で27号が愛用してた椅子に座った眼鏡ヒゲ。ひとくせふたくせもありそうな新キャラの登場シーンが、レイラたんの負け試合を上回って緊迫。アニメ化第2段があるなら、やっぱりこの作品だろうなぁ。


「DearMonkey 西遊記」(白井三二朗)

 一見派手だが、クライマックスは前月号の羅刹女特攻に終わっていた。悲しいエピローグな回。つーか、1月に4巻が出るのに、まだ表紙に抜擢してもらえませんか?


読切「みこたま」(友引のり)

 休載「四季使い」の代原。「もえちり!」が打ち切りになって空いた下ネタギャグの連載枠を、WEB版のルノアール兄弟と争えるか。女子の顔が可愛かったり可愛くなくなったり、コマによって安定しないのがちょっと難点。エロ背後霊のポンチさに、ちょっと気持ち悪いくらいのインパクトがある。「悪い電車男っ!!」とか、ところどころで小ネタが光る。


XBLADE」(作画:士貴智志、原作:イダタツヒコ

 刀から変身した娘は、「狼と香辛料」の狼娘のような性格だったという。士貴の女子キャラは、ヒロイン然とした待ちキャラよりも、攻性なほうがイキイキする。


月刊 少年シリウス 2007年 02月号 [雑誌]

月刊 少年シリウス 2007年 02月号 [雑誌]