言葉で説明されても面白くもなんともない。


 おそらく、かすみ網漁が頻繁に行われている地域にでも引っ越さない限り、もう二度と遭遇しないことと思われるので、記録のために。オチとかは別にない。



 夕方の6時頃、川口駅から徒歩5分ほどの住宅街を時速20メートルほどの向かい風を受けながら時速5キロメートルほどの速度で歩いていたとき、7メートルほど上方から額から瞼、頬にかけて「熱い何か」が。



 3-4方向程度の精緻なベクトル演算によって相対速度をぴったり合わせられた鴉の糞だった。



 呆然とした一瞬の後には、SHOCKの大きさほどには他者に対して言葉に尽くす術がないものだなということに、うつむいて途方にくれた。まだじゅうぶんに温かいままの「何か」を肌で感じながら。



 ……数時間を置いて、瞬間を振り返ってみても、おそらくだがゴルゴに狙撃されたりしたらこのような思考の顛末を辿る可能性が高いのではないか、というくらいしか浮かび上がってくるものはない。