夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 Ⅰ.関東編


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 東京都写真美術館で。
 日本に写真技術が入ってきた開国から明治初期の写真を集めた企画。つまり、記録に残るもっとも写実でもっとも最古の日本の風景。改めて考えると、痺れるコンセプトであるので行ってきた。
 髷や裃をつけ帯刀した侍や、和服で髪を結い上げた女性が澄ました風に写っている人物写真あたりには、さほど興味がわかなく。町を歩く籠売りの男や人足、おかっぴきに捕まえられた囚人、開通する直前でただののっぱらのようなところに骨組みだけ出来た板橋駅大日本帝国憲法公布を記念するため神田小川町の広場に集まって「US何とかHERAT」という英語の横断幕を掲げた一団やらに、当時彼ら彼女らが実際にそこにいたのだという感慨のようなものを。
 中でも目をひいたのは、明治24年の濃尾地震で被災した名古屋市内の写真。リンク先にある「赤十字社出張仮病院丹羽郡小折村ニ於テ震災重傷患者治療ノ現況」は、震災後の市内で、露天開頭手術をしているところ。プレBJという感じで、かなり珍しい代物ではなかろうか。紡績工場が崩れおち地割れが走り橋が落ち炊き出しを受ける人々の数々の写真を見ていると、当時の日本は、ほこりっぽくて薄汚れた木と土と藁の国だったのだなぁと、腑に落ちる。来日した外国人が写していった日本の風景は、境内を綺麗に掃かれた寺や着飾った遊女や石ころひとつない街道がほとんどだが、そんなつるっとして黒光りする日本は、稀だったはずで。当時の日本を伝える絵や文からは、これらの写真に写されたほこりっぽさは分からない。
 「4月10日(火)に展示替えがあります。」ということなので、又、見にいこうか。


 5月6日(日)まで開催した後、「Ⅱ.四国・九州編」「Ⅲ.中部・関西編」「Ⅳ.北海道・東北編」「総集編」と、写真を入れ替えながら巡回するようなので、近くで開催された人は行ってみるのもいいかも。一般500円で安いし、それ以上の値打ちはあったので。