コミティア79――新規購入した主なサークルから。

 最近、開拓したがってる少女マンガ・イラスト系からの一品。かっこいい男の子が満載。ほれぼれするのは多彩な色使い。原色っぽいんだけど暖色というか、イヤらしくならない派手さが良い。ここまでくると、女性らしい細やかさが良く出ている、なんてレベルでなく、絵描きとしてたいした仕事をしてるなと感心するばかり。


 昼間、干しておいた布団の匂いがする物語。「はねむす」の“るり”は、大都社版の1巻で、“クイーン”のような歌うたいになるため“おとうさん”のいる家を旅立つことがすでに示されている。そこまでの“るり”の成長を描いていく、長い長い春休みのような物語。


 COMICシルフで知った作者の人の。
 人気抜群の会長がバレンタインデーに新記録となる83個のチョコをもらい、原因をつくった少年二人に詰めよっていた横から、会長が本命にする少年が……。
 和人形のような登場人物たちが好きなのです。


  • 岩田鷹吉 《鷹商
    • オフセット「アイドル伝説ゴハチ 始動編」
    • オフセット「私立横島女子漫研

 原哲夫作画なゴハチ少女がアイドルを目指して奮闘する「アイドル伝説ゴハチ」が、面白い。隆々の肉体とマジメで正直な性格を武器に、着々と実力をつけていくゴハチ。誰が見てもブサイクなのに、誰も突っ込まないブサイク顔を、あえてネタにしないところが、また。


  • アザミユウコ 《mariendistel
    • ポストカード「Petasites-petal×mariendistel」

 えー、普段はイラスト集やミニポスターくらいなんだけど。あまりのCUTEさに買ってしまいました。自分、こういうのもストライクになったんだ……、と感慨深いです。3枚ともスチール製の本棚の柱に磁石で留めて日々、ニヤニヤです。


  • かわだ章吾 《かわだ区
    • オフセット「百様箱」

 COMICリュウで「三つ目の夢二」を連載したり休載したりのサブゼロが描くショタエロ読切を6本収録。すべて商業誌のアンソロ発表のもの。中の一本である“箱庭日記”が、いたく気に入った。暑い夏休み、そのケのない少年がある廃屋ビルで知り合った「おっちゃん」と仲良くなり、ナゾな仕事の内容を教えてもらうためという口実を自分に言い聞かせて、「おっちゃん」のイタズラをわざと誘発しようとする。夏休み日記につづられる、篭絡作戦とこっぱずかしく正直な気持ちが、モノローグとして深い叙情をかもし出す。こういうテーマと描き方とエロで甘詰留太が得意に思うが、この人も負けず劣らず。少年の、恋とかじゃない「スキ」(=父親の不在で満たされない父性のスキでもある)をいいようにイタズラしてしまうヨロコビ(と父親への思いを利用する背徳)。


 これまで出したコピー誌・ペーパーのまとめ本。“メイドさん”シリーズのボケツッコミのノリが良かった。日常を題材にした何気ないギャグがそのまんま何気なくて物足りないミニマンガはもっと練りこんでもらえるといいかも。


  • サトルキヨシ 《俗物屋本舗
    • オフセット「PM26:00」
    • オフセット「PM26:00 ♯2」
    • オフセット「PM26:00 ♯3」
    • オフセット「PM26:00 ♯4」
    • オフセット「PM26:00 ♯5」
    • オフセット「激短 某大漫研 小ネタ集」

 退魔師の少女とその式神二人を中心軸とした、ギャグ調の妖怪退治・除霊モノ。依頼を受けてカネのために行いながら、思いもしないトラブルに巻き込まれて散々だけど、面白ければいいかー?、といった基本路線が、巻を重ねるごとにマンガとして読みやすくこなれていくのが読み手として楽しい。メガネ+ギザ髪+クール気取りの式神の一人が、ストーリー上あまり報われない扱いをされてるのが、苦笑しながらももっとやれと。
 テーブルの上になかった無印と「♯2」は、バッグの奥からわざわざ出してもらったのを買ったら、裏表紙にボールペンで「見本紙」とあった。ありがとう。あと、新宿駅西口地下京王モールの「謝朋殿」でザーサイ粥とAセットを頼んだレシートが挟まってた。たまに行くけど小腹が空いたときちょうどいいよね。


  • 加藤旅人 《終海地点
    • コピー誌「ボクらの世界録」
    • コピー誌「ボクらの世界録 空のない街」

 結果的に、この回のティアは、この描き手を発見できたことに半分くらいの意義があった。
 ある大地の上に、もう一つの大地が広がる「ボクらの世界」を舞台にした連作(っぽい)。無印のほうは、上の大地をひと目見ようと子供たちが自ら飛行機を組み立てるお話、「空のない街」は、果てなく広がる上の大地の真下にある、日光が届かない暗闇の生活を青く光る鉱石が照らす街で、鉱石の勉学のためにまもなく日の下の土地へ旅立とうとする少女のお話。
 人懐っこい描線、という印象がアリだとすれば、それをまず当てはめたい。手を抜かず描き込まれた上の大地や飛行機、鉱石に照らされた街並みが、説得力をもってこちらを世界の中へ引きずり込む。特に、日の光は届かないけれど地下ではない「空のない街」は、頭上を閉じられてるのに地平方向には延々と開け、熱のともなわない鉱石の光しかないのに湿気を感じさせない空気といった、独特の土地柄がよく伝わってきて感心する。これも、人懐っこくて親しみやすい描線に、手柄の一部があるのだろう。研究対象にしたいほど入れ込む鉱石は、けれど、変わらない日常の象徴であり軽い鬱屈の源で、それから解き放たれると微かに思っていた旅立ちの直前、最近出会った日の光や星を知る旅人から、石の空に「ボクがこの街に/来た時に感じたのと」「同じ感動」が少女を待っているんじゃないか、と言葉を交わす機会を得る。向かい合うことに煮え切らなさを残したままだった石の空に向かって「今日も/いい天気だなぁ」とつぶやいた少女が、数日後に迫った旅立ちに向かって歩き出す締めが、とてもとても爽やか。青空も白い雲もそこにはないのに。


 いわさきまさかず+吉崎観音系のかっちりくっきりな絵柄。元気少女とペット(?)の小型ドラゴンのドタバタ1ぺージギャグ連作。次は大ゴマでぐいっと開けたお話が読んでみたい。


 アニメ絵風のイラスト集。躍動感があり、健康的な色気もちょっとある。アニメーターの人かな? クリーチャー系のイラストが、迫れるところまで近接したショットで迫力あり。こういう、ページからはみ出さんばかりの勢いは好きだ。