今日のPICK UP――ブラッド×ファング。

 http://comics.yahoo.co.jp/promo/selection/fang/

 http://comics.yahoo.co.jp/magazine/fang_0001.html



 これはびっくりした。素直にびっくりした。そういう手があったかぁ。とりあえず良い選択だと思う。ターゲットにする読者層もなんとなく合いそうだし。




 旧少年ブラッド→現FLEXCOMIXブラッドの作品を無料配信する「Yahoo!コミック」で、少年ファングの作品が無料配信開始。「Yahoo!コミック」はもともと、休刊した少年ブラッドの作品がWEB上に移った際の受け皿として立ち上げられていた。ブラッド以外の作品も充実させていくとはしていたけど、まさか、別資本(ブラッドはソフトバンク系列、ファングはリイド社)の雑誌をまるまるもってくるとは予想していなかった。出版社が自社のサイトで最新号を毎週掲載したり(漫画アクションなど)、単行本発売や雑誌創刊に際して第1話のみを掲載とか、そういったケースは珍しくないが、有料誌を別資本のサイトで時間差無料公開は、かなり思い切った試みに思える。
 5/19のファングコミックス創刊にタイミングを合わせたプロモーションの一環であることは明らか。一般広告をうったり、主だった書店にお試し冊子を配るよりも、おそらくコストをかけずに済むことも大きいのだろうか(それとも、作品を「Yahoo!コミック」に貸し出す形なら、貸し賃が入る?)。閲覧率が高いのなら、仮にブラッドのようにファング本誌が休刊しても「Yahoo!コミック」で作品継続→単行本売上は計上していける。ある意味、ブラッドのビジネスモデルにタダ乗り。
 更新頻度を確認すると、だいたい2週間〜1ヶ月置きになる様子。ファングは月刊誌なので、2週間更新の作品はそのうち本誌連載を追い越してしまうことになるけど、そのあたりはどうするのだろう。
 作品別にバラ売りする形になるため、ファング本誌を読まず「Yahoo!コミック」のみで読む人にとっては、「Yahoo!コミック」でタダ読みできる作品が、単純に面白かったり面白くなかったりする、ということになりがちで、ファングという雑誌のイメージは持ってもらいにくくなるはず。自分もブラッドの「ヒャッコ」、ファングの「少女奇談まこら」を応援しているという意識はあまりない。まぁ、雑誌を買わない単行本派の人はだいたいそうだろうけれど。 「Yahoo!コミック」での作品配信とファング本誌の間の相乗効果などは、期待するものではないかもしれない。逆の見方をすれば、毎月雑誌形式でまとめて配信しているスピカ/GENZO/MAGNA(有料)コム・コム(有料)SEED!(無料)のやり方は、WEBが最新号の配信の場であって、かつ、その媒体をブランドに育てていきたいケースで有効と言える。
 大手出版社の集まりである「デジタルコミック協議会」の総合ポータルサイト計画に、新規参入したブラッドとマイナー出版社のリイド社が大型キャリアのYahoo!と組んで対抗していく、という図式で切り取るのも面白いかもしれない。そこに、雑誌のカラーや出版規模の似た「ブンブン」「ラッシュ」のポプラ社や、「フラッパー」「アライブ」のメディアファクトリーあたりが合流していってもおかしくなさそう。