アフタヌーン 7月号 + 四季賞ポータブル 2007春のコンテスト

四季大賞「東日人民よ!」(山口甚八

 えー、おそらくだけど、一部の人に分かりやすく言うと、自分が毎度毎度コミティアに足を運んでるのは、こーいうマンガがないかなーという期待からです。こーいう、中身の詰まった強い意志を感じさせる表情とそれを支えるに見合った大柄な体つきのキャラクター造形、通り過ぎる時代としての青春、日の当たらないコンクリ、つや消し色の曇った街、何も動いていないように見えて歩き出しているココロ、etc。ですから、四季大賞でこーいうマンガが読めてしまうのは、ある意味しゃくだったりもするのですけれど、読めないより読めたほうがいいので、OKです。幾つになっても「がんばれ」と言って欲しいし「よしきた!」と答えて見たいのです。たとえ、谷岡君が西に行ってしまったような別れがくるとしても。


四季賞「囚われクローン」(太田モアレ

 死刑制度が廃止された未来、寿命を上回る懲役刑をまっとうさせるため、受刑者の死後はそのクローンを服役させることになった時代。いよいよ出所の日を間近に控えた2代目クローンの主人公は……。
 いわゆるクローン服役ネタ。まぁ、見かけるといえば見かける。ただ服役するためだけの人生を送った初代クローン、臓器移植利用といった内省SFネタも。クローンに服役させてそれを懲役年数に数えるということは、クローンに人権を認めているということになり、そのような健全な人権感覚を所有する社会がなんでクローンを合法化しているのかというパラドックスが発生していたりしなかったり。原体の記憶を直接にクローンの脳にプリントしたりするのではなく、教室と机と黒板を使った教育で植えつけるのどかな刑務所だから、そこまで気にしてもしょうがない。そういったナマの空気、生活臭さが、こーいったテーマで臭ってきておかしくない寓話っぽさを脱臭してくれて、すんなり読み込める。そこの非凡さを買われての四季賞、かな。


うえやまとち特別賞「黄色い家」(新田章)

 売れない油絵描きの父親と盲目的にその父親についていく母親を両親にもつ中学生の双子の娘が、思春期を迎えて両親に反発しはじめて……。
 ダメ両親に生活費くらい自分らで稼いでから絵描きなよ!と正論ぶちかまして、けれど一方で父親の描く絵が好きな子供心。落ち着くところに落ち着いた話の顛末を読み終えて、最初は釈然としなかったのだけど、ああ、受け継いでいくということができたのなら、それもアリなのかなと腑に落ちた。作者が“キラーネタ”と呼ぶよう、おそらく同じようなテーマで何通りもの落とし方があるのだろうけれど、その中でも体力のいる落とし方だろうとおもう。


新連載・巻中カラー「みんなのきせき」(内藤曜ノ介)

 ……だいじょうぶか? 後半、さっぱり分からんぞ? 富野セリフみたいだぞ? ……そうだ、きっと作者が作者だけに、Tシャツにプリントしたら意味が通るようになってるんだよ、きっとそうだ! 2話目に期待!


無限の住人」(沙村広明

 6/23、丸の内丸善、21巻発売記念サイン会。都内でやるの、初めてなの? そういや行ったことなかったやね。


月刊 アフタヌーン 2007年 07月号 [雑誌]

月刊 アフタヌーン 2007年 07月号 [雑誌]