少年シリウス 7月号 + お笑いチビウス ギャグ&ピース
振り返ってみれば、1月〜3月号のホラーマンガ特集「真冬の怪奇宴」が尻すぼみに終わってしまった印象が強い理由は、新人賞出身のタマゴ達(実態は新人未満とさえ言っていい)には荷がかちすぎたんではないかということに加えて、ベテランゲスト達にしても、ホラーは一朝一夕で描けるジャンルではなかったということがあるんではないか、と。“NEOファンタジーマガジン”をうたうシリウスでホラー特集が企画段階でズレたものではなかったろう、とは理解できるのだけど、実際に作業にとりかかってみると、勝手が違ったか。
そーいった反省点を踏まえたのか踏まえなかったのかはともかく、ホラー特集に続く約半年振りの大型企画2段目のテーマは、ギャグ。創刊2周年記念の別冊付録として「お笑いチビウス ギャグ&ピース」がついた。
えー、別冊形式*1 のお得感で割り増し評価になった分は多少あるにしても、今回の企画、面白い。少なくともホラー特集よりは断然。というか、マンガ家(やマンガ家志望者)であれば誰もが何らかのギャグセンスを持ち合わせていると思うので、ホラーに改めて取り組んでもらうよりレベルが上がったのは、それはそうかも。
新連載・巻中カラー「マコちゃんのリップクリーム」(尾玉なみえ)
ホラー特集の目玉として新連載が始まった「ゆうやみ特攻隊」(押切蓮介)の位置に、今回のギャグ特集で押されてきたのが、この作品にしてこの作家。名前だけ知りすぎるくらいに知っていて、きちんと読むのは初めてだったのだけど、確かにギャグマンガ界で爆弾扱いされるのも分かる。
何にでも変身できる禁断のアイテム=魔法のリップクリームを手に入れたフツウの小学生マコちゃん。好き勝手に使うと呪いで石になってしまうことを忠告されて「でっかい幸せ/前にして/生まれてきて/よかったなデス!」と微笑むマコちゃんに「この子・・・・/前半しか聞こえてない!?」。別冊に掲載された第2話で、跳び箱に変身して体操服男子の股間を「ずど」「マタンキ」で笑顔。その後、いじめられっ子の股間を「ずど」する意味がもう分からない。そこ、捻ろうね! ギャグマンガなんだから!、ってところであえて直進、なおかつ相手のフリを受けきらず“後の先”で打ち取るフォワード型なマコちゃんのこれからの活躍に期待。
読切「ネクロマ」(×6suke)
ゾンビ女子と青年神父の恋物語。同人でたまに買ってるフルカラー作品も、悪魔ちゃんとかそーいう可愛らしくてネクロなガジェットが好きで買ってるので、好意的に読めた。
読切「もじもじるるの」(渡辺航)
魔術書を使った実験で手に入れた花柄パンツを、持ち主だという“はいてない”少女魔女が奪い返しにきて代償に命をもらうと……。パンツから始まる小さな恋の物語。“はいてない”を覗き見ることに腐心する主人公とことなげきに関門をクリアする少女。こーいうテンポで魅せる作家、シリウスにちょっと欲しいわ。
ほかに、表2と表3のルノアール兄弟「大童貞」出張版が笑えた。シリウス本誌連載の作家や新人賞出身のタマゴ達は、4コマで参加。切れたと勝手に思ってた倉橋ユウスが描いていてちょっと驚いたり。倉橋を含めた新人賞出のタマゴ達が、ほぼ全員、新作or次回作を構想中、準備中というのは、どこまで信じていいもんやら。「アナスタシア」のtonoは結局、加藤ことの、にPNが決まった模様。
次号もつく別冊は、予告の面子が、また豪華。中村光、赤衣丸歩郎が期待をもたせる。中村は、ヤンガンの「荒川」より、モーニング2の仏陀×キリストのマンガのほうが、楽しみな最近。仏陀×キリストの出張版でもいいよなぁ。
それから、この号で「ソウルメイトツーリスト」「パプリカ」の2本が終了。次号で、「魔法使いのたまごたち」「アメフラシ」「怪談と踊ろう」の3本が終了。「ソウルメイト」は作画に助けられ続けたお話の弱さの克服ができなかったか。「怪談」は、ここ数話で俄然、作劇が向上していたのでちともったいない感じ。「魔法使い」はやっと終わってくれるという安堵が大きい。「アメフラシ」は当初の予定通りの終焉か。
次号8月号であるだろう、新連載攻勢の大々的予告が楽しみな一方、2年経って、創刊時から定期連載で生き残った作品は、「龍眼」「アヴェンテューラ」「テレパシー少女 蘭」「西遊記」の4作品になってしまった。このへんの生存率については、ほかの創刊ラッシュ組みの雑誌もからめて、また見ていきたい。
- 出版社/メーカー: 講談社
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あと、「Dear Monkey 西遊記」(白井三二朗)の5巻(asin:4063730719)は、雑誌掲載時によくわからなかった牛魔王特攻シーンの連続見開きが全面的に描き直されて、さらに泣ける度がアップしているので、いろいろ躊躇している人も、とりあえず買っておいて欲しいところデス。マタンキ。
*1:別冊にしたことで、本誌の人気作品、連載作品と同じ土俵で評価されにくい点もプラスに働いている。