COMICリュウ 8月号

第1回龍神賞・銀龍賞「ロボット残党兵」(横尾公敏)

 昨年秋に創刊したCOMICリュウの新人賞「龍神賞」が、1回目の受賞作を発表。選考委員の吾妻ひでお安彦良和、大野編集長による選考の模様が6ページに渡って掲載。半年ちょっとで186作品の応募の中から、銀龍賞(50万円)2作品と銅龍賞(10万円)5作品、選外4作品の計11作品を選出。金龍賞(100万円)はナシ。
 選考の模様と各候補作の簡単なあらすじを読む限りでは、予想していたよりはエンタテイメントよりの選び方になっているよう。ページ数は20〜30ページ台が目立ち、これも予想とは違って少ない。最終選考に残った作品の作者年齢が20歳代後半〜30歳代後半に集中しているのは、80年代テイストを溢れさせた現行連載陣の面子を考えると、リュウらしい(笑)。
 予想していたのは、コミティアで発掘した新人をたびたび掲載させていたことから、四季賞に近い路線。けれど、四季賞の受賞作に傾向としてある重厚長大さは、リュウでは目指すところではないらしい。それはそれでよくて、“神保町系”マニア的エンタテイメントで楽しませてくれるなら大いに結構。が、どうやら、20歳代中盤以下の若い才能が集まっていない様子なのがどうも。それと、吾妻、安彦の二人の講評の中に「読んでて疲れる」というセリフが一度ずつ出ているのがちょっと気になった。読みにくくて疲れる、テーマが重くて疲れる、という意味合いで言葉にしている風ではあるのだけど、どうも二人の口から出ると、なんというか、こう、……枯れてる? おじいちゃん大丈夫? と気遣いたくなるような。
 あと、作画的に達者で手馴れてプロレベルの作品がほとんどを占める一方で、「もうひと味」とか「個性が足りない」とか「すこしありきたり」とか、そういった講評が並んでいるのは、リュウの現行連載作品のテイストを分析して、傾向を合わせてきたんだとしたら、無理からぬような気も少しする。というか、連載作品のほとんどに対して毎号、そういう感想を抱いているのはこちらもいっしょか。とんがった才能が活躍の場を求めて応募してくる賞には、まあ、ならないような、今のところ。多少未熟であっても、新しいことをやらせてくれそうに思える賞ではない。もし、そーいう新人が欲しいのであれば、講評の中ではっきり示しておくべきではないのかな。別に欲しくないのかな?



 前置きが長くなったが、銀賞作品について。アフタヌーンで昔やってた「ラウドの怪人」(イワフチヤスナリ)が、そんなだったかなぁ、と思い出した。作品そのものは、ひかれるところがほとんどなかった。機械化兵士になる動機の描かれ方の弱さ、部下の機械化兵士が精神を病む背景の?さ、機械化兵士同士の戦いの冗長さ、etc。もったいないなぁ、と指摘できるのは、最終ページで眠っていた機械化兵士を再稼動させるアフリカン少年少女。この1ページの絵だけで、そこまでの42ページ分を軽く凌駕する想像の羽ばたきを予感させる。それだけのインスピレーションを詰め込まれていておかしくない。この先の物語を描ける作者であるなら、評価も変わってくる。



 ほかの受賞作品は、今のところ掲載予定がないようだけど、銅龍賞の「淡水人魚」(富村ガゼル)は、読んでみたい気がする。同じく銅龍賞の「子猫」(渡辺英)は、作者がちばてつや大賞を獲った「ブルー・スカイ・ブルー」とで、エドという金髪の少年が共通のキャラクターとして登場しているよう。





 連載作品については、「ルー=ガルー」の美緒タンの乳がどうも最近、ぱっつり感→たっぷり感→垂れ気味感な変遷をとげつつあって、それがちょっと気になりますね。


月刊 COMIC (コミック) リュウ 2007年 08月号 [雑誌]

月刊 COMIC (コミック) リュウ 2007年 08月号 [雑誌]