児ポ法改正とDr.マンハッタンのペニスについて。
- 昨日は夕方から保坂事務所での児ポ法改正問題の集まりに参加。すでに与党案、民主案とも国会に提出済みであり、早ければゴールデンウィーク前に法務委で審議が始まるようだ。
- 現行法の2号ポルノ、3号ポルノ規定のあいまいさ、文脈依存型のわいせつ定義の危うさは言うまもでないが、構成要件を厳格化したという触れ込みの民主案にしても、3号ポルノ規定を削除した一方で、2号の定義を「殊更に他人が児童の性器等を触り、若しくは殊更に児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態又は殊更に児童の性器等が露出され、若しくは強調されている児童の姿態」とし、現行法の「性欲を興奮させ又は刺激する」を除いたことで、案の作成者はこれで客観性を高めたとうたっているが、「殊更に」「強調」の解釈は結局のところ裁判官個人の判断にゆだねられる。「殊更に強調」したことで「性欲を興奮させ又は刺激する」と結論付けるなら同じことだ。構成要件の厳格化に結びついているとは言えない。
- 取得罪という名目で「有償で又は反復して取得」することを新たに罪にしようとしている。金銭を媒介する有償は証拠が残りやすく取得者の意思を見やすいが、反復については、何度、どのくらいの期間を置いて、幾つの児童ポルノを取得することが罪になるのか分からない。おそらく政令や施行規則でこと細かに定めることはせず、判例に任せることになるだろう。最低2回でもアウト、もしくは2つ以上の児童ポルノがあればアウトか? あるいは1年に1つの取得なら反復とはみなされないか? 反復の頻繁さを取得とみなすのか、それとも取得の行為を立証した上で反復要件が満たされているかを判断するのか。やろうと思えば単純所持と同等の執行は不可能でない。
- 外国の貧民外のストリートチルドレンを撮ったカメラマンが写真集を出そうとする際、貧乏で服が買えず裸同然で走り回る子どもたちの姿が児童ポルノにあたらないか、弁護士に事前に相談してくるケースが実際に起きているという。ヌードやセミヌードや芸術性・文学性・政治性を勘案されたものは児童ポルノにあたらない諸外国の規定と比べて、考えられないまでに高いハードルを自己推定しないとならない日本のおかしさ。
- 大麻や覚せい剤などの違法薬物の「所持」は「共同所持」でもパクられている。たとえばヤクザの組事務所に大麻が保管されていれば組員全員をしょっぴける。囲っている愛人のマンションに男が大麻を隠していれば、そのことを知らない愛人でもしょっぴける。いずれも最終的に起訴されるかどうかは別だが、児ポ法に単純所持規定かそれに類する規定が入れば、たとえば夫や息子や娘が自宅に保管している児童ポルノを「共同所持」していたとして妻や兄弟姉妹や祖父母が逮捕されることもありえる。現行の大麻取締法は所持規定には触れているが共同所持を明確に触れていない。よって、児ポ法に共同という言葉が入らずとも同様の執行が行われかねない。
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- 新宿ミラノ1で15:10の回を観たウォッチメンに登場する、物理法則を自在に操る超能力者であるDr.マンハッタンことジョン・オスターマンは、精緻なCGによって描かれている。全裸か全裸に近い格好で頻繁に登場し、見事なマッチョ体格と青く輝く肌を惜しげもなくさらす。そして、限りなく実物を模し、雁クビまではっきり分かり、一時停止して拡大すれば鈴口まで確認できそうな男性器も、完全無修正で惜しげなくさらす。
- 通常、一般公開される映画の男性器は、成人指定を問わず、“ぼかし”が入るはずだが、それは行われていない。ウォッチメンはR-15指定のため、高校生や一部の中学生が観ることができる。修整しない映像が、実在する男性の性器ではなく、CGで描かれた創作物のため“ぼかし”を必要としないという判断のもとで行われているなら、「淫獣学園」などのエロアニメや成人マーク入のエロマンガの男性器についてもモザイク処理をする必要を問われないはずだ。エロアニメやエロマンガは18禁指定をされるため、一部の高校3年生を除き、高校生や中学生が観ることはできない(建前になっている)。
- 刑法175条のわいせつ罪規定は、芸術性の如何をわいせつ性判断の際に問う。では、Dr.マンハッタンの男性器にわいせつ性が問われないかというと、初めてスクリーンに男性器が登場するシーンは、パートナーの女性超能力者とのベッドシーンの直後であり、写る男性器によって性欲を高められる可能性は決して低くないと思われる。その後も、少なくとも合計カットで15秒以上は男性器がスクリーンに写る。都内最大のスクリーンサイズを誇る新宿ミラノ1だから、スクリーン上の男性器を測れば、1/1サイズの男性器をはるかに上回るはずだ。平均成人男性の下半身全体ほどの長さにはなる。
- 精緻な作り物の男性器を無修正で一部中学生と高校生に見せることが許されるなら、スミベタ修整も成年マークも東京都の不健全指定図書制度も、茶番に過ぎない。もちろんDr.マンハッタンの男性器に修整を入れろというつもりは全くない。限りなくリアルなCGの男性器のわいせつ性を、松文館〈蜜室〉裁判などでやりたい放題の恣意性を発揮してきた司法や警察はどう判断するのかということだ。