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  • メガトーキョーvol.1(フレッド・ギャラガーほか)
    • WEBマンガの古株で、アメリカから見た日本のオタク文化をネタにしたマンガとしても、すでに有名。自分が知ったのは2002年くらいか。収録された“chapter0”は、それよりも以前、2000年から2001年にかけて描かれたもの。だから、ざっと流し読んだくらいでちゃんと読んだことはなかったので、ほぼ初見に近い。
    • ざっと導入部をまとめると、“ギャルゲオタクの「ぴろ(KANONの真琴のペットから命名)」と、ネトゲオタクの「ラルゴ(バブルガムクライシスの悪役から命名)」は、大学は出たけれども共に無職のオタク。オフィシャルデーのE3に相手にされず、ムカついて酔っぱらった勢いで日本にやってきたものの、オタグッズでカードを限度額まで使い果たした末に、同じく金欠の日本人の知り合いのアパートに転がり込み、帰国するための資金を稼ごうとするが――”。
    • ダメ人間である二人のダメっぷりをダメダメに描く筆致が、とにかく冴えてる。一部の人にわかりやすくいうと、ぴろは、「らくえん」(月面基地前)の主人公(にーにーちゃん)みたいな奴。マッチョなアメリカン文化の欠片も臭わせない。転がり込んだ先は、壁に貼られたギャルゲのポスターとゴミの散らかった典型的なオタ部屋ワンルーム。ぴろ「…じぶんの家に/いるみたいだ」→ラルゴ「おめーらはおめーらで/楽しめよ。/オレは強制送還される/方法探してくっから」。知り合いになりかけた日本の女子高生に興味を持つも、和風フェアリーの形をしたココロの声が“未成年に興味を持つなんて! このFREAK BOY!”とブレーキをかける。で、なんだかどうでもよくなってきて、アリ金をはたいて買ったばかりのパスネット(3,000円分)を、たまたま近くにいた少女にあげて、自分は井の頭線を吉祥寺までとぼとぼ歩く。途中、井の頭線を見下ろす陸橋の上で、「ゲームみたいに/人生にいくつも/セーブポイントがあればいいのに」と呟いちゃう。異国の町で、一人、呟く。
    • で、あげた少女が実は、興味をもった女子高生だったというオチ。当然、なんのかんのあって再会。GOOD。再会まで、ぴろも女子高生も、お互いに自分のことやら相手のことやらで、グチグチ悩む。若さ。これが4コマで毎日アップされるのをリアルタイムに追いかけてたら、そりゃ面白いわ。
    • 90年代後半のオタ文化でも、クスクスさせてくる。たとえば、“なぜ・なに・ナデシコ”のパロディ、アニメ版エクセルサーガのネタ(1話冒頭で車にひかれるエクセル)、デジキャラットのコスプレ(ぴろが!)、tinami.comまで。でも、今になって読むと、あくまで彩り。風化してておかしくない。でも、風化と感じさせない。先に書いた、面白さがあるから。
    • 2巻以降に収録される"chapter1"は、今もWEBで読める。その第1話目(通算134話目)の木造アパートっぷりに惚れるような人にもオススメ(こここまでの"ひなびた感"を外国人がよく出せる!)。ただ、B6のサイズは、もともとネームが多いところに、会話調で翻訳すると文字量が1.2〜1.3倍くらいに増えて、増えた分だけ文字サイズが小さくなってしまっていて、ちょっと、いやかなり読みづらい。A5にでかくして出しなおせ、講談社BOX