King of Thorn いばらの王(監督:片山一良)

  • 角川シネマ新宿で16:30の回。初めてのスクリーン。イスのクッション、前のイスとの間隔、悪くない。ロビーは狭かったがその分、スクリーンを広々させたのだろう、と解釈。入りは3割〜4割。
  • 原作はビーム連載と単行本で既読。けれども、1〜2巻のあたりまでしか覚えておらず、「設定をあからじめ把握しており、刺青マッチョのマルコ・オーエンがSASから派遣された潜入調査エージェント的な人」ということを知った状態で観た。
  • うお、イタリアの政治家が、あっさり序盤で死んだ。はやい。悪そうだったし、あんまりガラ声を長くは聞きたくなかったのでまぁいいか。
  • 展開はやいわぁ。次々に背後の事情や裏の人間関係が明るみに。全6巻分の内容を、重要なポイントはほぼ余すところなくフォローしてる感じ。だから、とっとと話を進めないとならなくて、そうなっちゃうのだろけど。
  • 顔や上半身のアップは良い感じでセルアニメ触を再現してたんだけど、複数人の全身が映るシーンになると、途端にポリゴン人形くささが強くなる。パペット人形の宙吊り感覚が“むわっ”と押し寄せる。アップルシード映画版の1作目で顕著だったアレ。これは本当にもったいないと思った。モンスターのほうは最初から、近づいた絵と引いた絵のどちらもポリゴン人形くささをかもしていたので、人とモンスターで使い分けてるのかなーと思ったのだけど。
    • あれ? でも、ポリゴン人形くささが鼻に付き始めたのは、城の中でモンスターに追い回され始めるシーンからだ。コールドスリープカプセルに入るまでの冒頭のほうが全身シーンや群集シーンは多かった。もっと早くポリゴン人形くささを感じないといけないはず。なんで感じなかったんだろう。
  • キャサリンターナーの人の朗読で時節挿入される童話「いばら姫」の話が、途中からもういいよ、って感じで。12人の魔女の最後から2人目が死の呪いをかけて最後の1人が長い眠りの呪いに上書きするってくだりは、わざわざ入れる必要があったのか? 
    • ……あ、石化の死を逃れるためにコールドスリープするんだから必要なのか。そうかそうか、ははは……。
  • 空中浮遊をはじめる城やイバラの集合体から生まれる龍頭のディティールがいまいち。いまどきこれはOVAレベルのCG。
  • マルコ・オーエンの妹さんが激、強。モンスター相手の銃撃戦ばかしだったところに、胸のすくようなアクションシーン。バトルの出来る人間の敵(もしくは人間型の敵)って原作にも出てこなかったけど、これは映画化にあたってもう1人くらいアクションの出来る適役を配置してくれたほうが、もっと見応えが出たかも。
  • これだけ色んな伏線をはりまくって、カスミ・イシキとシズク・イシキの双子姉妹が完全な公募抽選の結果、偶然にコールドスリープ対象に選ばれましたってことはないだろうに、その点についての説明はなかった(原作にもなかった?)。抽選の際、「アリス」が操作の手を加えて、双子姉妹を城まで呼び寄せたってことにしてもよさそうだけど。
  • ……やっぱり原作ファンの補正が入った感想だなぁ、これは。
    • 単行本の何巻かに、カスミのフィギュアがついた特装版が出たことがあって、ファンとしては当然、フィギュア付きを買ったけれど、それから1年くらいして入ったまんだらけで未開封品が定価より安く売られてたのはちょっとショックだった。当時はアニメ化の話なんて影も形もなく。そういった営業の読み違えもあるようなセールス的にどうなの?状態からここまできたんだから喜ぶべきなの、か?
  • エンドロールの後、イバラから生えた一輪の真っ赤な薔薇がクローズアップされる。シズク・イシキの想念が現実化したイバラは、シズクの意識が消えうせることで石化し、消えうせた、はずだった。現実化しても結局は“かりそめの客(マルシー吸血鬼D)”でしかない……はずのイバラの一部が石化せず、薔薇=次世代に続く命を生み出した。想念が現実化したものが本当の命を与えられた瞬間のクローズアップ。そこで、シズクの想念が現実化したカスミ・イシキも単なるパペットではなく本当の命を与えられたこと、単なるカスミダッシュではないことが示唆される。イバラの形の白く長い道を歩き出したカスミの足取りに、確かな力強さが与えられる。この演出は良かった。物語が締まった。
  • そして、2015年の「いばらの王」事件から45年を経過した2060年、遺伝子変異を起こしたメドゥーサ病はクロージャー・ウイルスとして再び全世界を覆い、人類の多くをコロイド結晶と共に外宇宙へ旅立たせる「EDEN It's an Endless World!?」の物語が幕を開けた――。


公式サイト:King of Thorn いばらの王
http://www.kingofthorn.net/