41日目。LNG。プーチン。カタール。シェールガス。



今日は(というか今日も)特に結論めいたものやオチはありません。
福島第一原発の爆発で滞る分の電力供給を、LNG液化天然ガスでどこまで補完できるのか、現時点の進捗状況と今後の論点の整理が目的になります。





今日読んだFACTA5月号の

 プーチン「千載一遇」と日本にガス売り込み:FACTA online
 http://facta.co.jp/article/201105031.html

によれば、ロシアのセチン副首相は、LNGプラント「サハリン2」から年内に日本へ追加供給可能なLNGの量を50万トンとしている。
また、プーチン首相は、ロシア産の天然ガスをパイプラインで欧州に送り、代わりに、欧州でロシア産天然ガスからの乗換えが相次いでいた安価なカタールLNGを“玉突き式”に日本へ送る構想を浮上させており、これが成立した場合、400万トンのLNGが日本に追加で送られる可能性がある。
「サハリン2」におけるLNGの緊急増産が難しいことや、日本とロシアの間にはパイプラインが通っていないことなどが、“玉突き式”を構想する理由になる。
(余談だが、「勇午」では、日本とロシアを海底パイプラインでつなぐ「シベリア3」プロジェクトをめぐる話が描かれたことがある。ロシアと日本をつなぐキーパーソンとして登場した日本人政治家のモデルは、現在服役中の鈴木宗男。)



 米LNG相場に追い風 原発能力25%減の日本で需要増 (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)
 http://www.sankeibiz.jp/business/news/110329/bsk1103290505006-n1.htm

2007年の新潟県中越沖地震東京電力柏崎刈羽原発が全面停止した際には、日本の大西洋海盆からのLNG輸入量が5倍に増加した。

07年の原発停止でも、LNGの輸入量を緊急に増やしたことがあった。



 槍田日本貿易会長:火力発電向けLNG、各国フルサポートで不安なし - Bloomberg.co.jp
 http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aFu0aaX5s_tU

財務省の貿易統計によると2010年のLNGの輸入量はマレーシア、オーストラリア、インドネシアなどを中心に前年比8%増の7000万トンだった。

 天然ガスについて|日本のLNG液化天然ガス)プロジェクト
 http://www.naturalgas.jp/antei/LNGproj.html

平年度供給量(契約ベース)   6,806万t

輸入者   2,448万t(ガス)  4,358万t(電力・その他)

2010年11月末現在

2010年の輸入量は約7,000万トン。その約64%が「電力・その他」に回されている。



 原発事故で広がる「天然ガス特需」は本物か:日本経済新聞
http://www.nikkei.com/tech/ssbiz/article/g=96958A9C93819696E3E1E2938B8DE3E1E2E6E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;p=9694E3EAE3E0E0E2E2EBE0E4E2EB

同様にIEAによると、全量を天然ガスで賄った場合の需要量はLNG換算で年間約870万トン。東電の年間購入量が約2000万トンだから、一挙に4割増となる。JPモルガン・チェースも同様に770万トンのLNG需要増になるとの試算を出しており、妥当な水準だろう。業界関係者も東電で年間600万〜700万トン、東北電力で100万〜200万トン、他電力も含めて合計800万〜900万トンと見る。

 震災後に上がった株 建設、鉱業、金属製品が「復興銘柄」 (2/2) : J-CASTニュース
 http://www.j-cast.com/2011/04/18093447.html?p=2

格付け会社のフィッチレーティングスも、「停止した原発の能力を補う場合、年間900万トンのLNG需要の増加につながる」と試算している。

 原発事故でロシアなどに天然ガス特需:資源・エネルギー:ECO JAPAN −成長と共生の未来へ−
 http://eco.nikkeibp.co.jp/article/news/20110325/106213/

あるロンドンのLNG関係者は、ざっくりと以下のように試算してくれた。
東京電力の最大発電能力(年間)を約7000万キロワットとすると、福島原発の操業停止によって、その7分の1、約1000万キロワットが失われる計算となる。仮に、そのギャップをすべてLNGで賄おうとすると、約1000万トン分/年の追加輸入が必要となる。現実的にはLNG火力発電所の容量に限界があるので、石油火力発電と石炭火力発電も同時に使うことになる。となると、LNGの追加輸入分は500万トン/年くらいではないか」

福島第一原発の爆発によって、追加輸入が必要になると見られるLNGの量は、500万トン〜900万トン。
現在、「電力・その他」のために輸入されているLNGの8%〜21%の量が、追加で必要になる。



 ロシアから支援のガス、東電の火力発電所に : 国際 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110416-OYT1T00445.htm

大きな半球状のタンク4基を備えた専用運搬船「グランド・アニバ」は、露極東サハリンでLNG6万5000トンを積み込み、約1週間かけて東京湾まで輸送した。首都圏の電力需要をまかなうため使用される。

4/16に、ロシアから、6万5,000トンのLNGが追加で輸入された。


 インドネシア、東電などにLNG供給 5月までに40万トン  :日本経済新聞
 http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C9381959FE3EBE2E6838DE3EBE2E6E0E2E3E38698E0E2E2E2

第1弾として5月までに両社に対しLNG輸送船7隻分にあたる40万トンを出荷、年内には計100万トンを供給するとみられる。
複数の関係者によると、同国政府はカリマンタン島にあるボンタンLNG輸出基地から東北電力へ輸送船4隻分、東京電力へ3隻分を出荷することを認めた。すでに東北電力向けは出荷を始めており、東京電力向けも近く船積み作業に入る予定。
同基地では今年、長期契約に基づいた供給が決まっておらずスポットで販売する予定だった18隻分(約100万トン)がある。この中から5月までに40万トンを送り、年後半までにはさらに残りの60万トンも両社へ供給する見込みだ。
インドネシアから日本へのLNG輸出は2010年に約1400万トンだったが、生産が落ち込んだこともあり、11年は約1000万トンになる予定だった。福島第1原発の事故を受け、日本はインドネシアに対して追加で輸出するよう求めていた。

インドネシアから、年内に、計100万トンが追加で輸入されることになったが、もともと今年は輸入量を400万トン減らす予定だった(2010年の約1,400万トンに対して、2011年は約1,000万トン)ため、この輸入量の減少予定がそのままなら、差し引きで300万トンの輸入量減になるため、さらに別の国から追加でLNGを調達する必要が出てくる。


 カタール LNGを追加供給へ NHKニュース
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110417/t10015374711000.html

それによりますと、東日本大震災を受けて電力不足に陥っている日本への緊急支援策として、カタール政府の指示に基づき、今後1年間で400万トンのLNG=液化天然ガスを日本側に追加で供給することが決まりました。この追加の供給量は日本の1年間のLNG総輸入量の6%に当たり、すべてを火力発電に使用した場合、1年間で500万世帯に電力を供給できるということです。またカタール側は、「日本の複数の長期契約の顧客に販売する」としており、関係者によりますと、今回の震災に伴って計画停電の実施などの対応に追われてきた東京電力東北電力に主に販売されるものとみられています。世界最大のLNGの生産国であるカタールは、日本にとってインドネシアなどに次いで4番目のLNGの輸入元で、カタールの国営ガス会社は「日本は長年取り引きを続けている大切な顧客であり、さらなる追加供給の要望があれば対応していきたい」としています。

カタールから今年、400万トンのLNGが追加輸入されることが決まった。
FACTAの記事で紹介されていた、ロシア・プーチン首相の“玉突き式”構想で言及されていた数字も400万トンだったため、もしかしたら、このプーチン首相の“玉突き式”構想が実現した可能性があるのかもしれない。
FACTAの記事では、カタールは年間7,700万トンのLNGを生産可能な世界最大の生産国とされているため、他の国一国から400万トンを超える量のLNGを今年1年間で輸入することは難しいかもしれない。


 東京新聞:関税撤廃の重要性は不変 豪首相、資源供給に努力:経済(TOKYO Web)
 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011042001000455.html

震災による福島第1原発事故などで電力不足が予想される状況を受け、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)を含め、日本が必要とするエネルギー資源の安定供給に努める考えも表明した。

オーストラリアは、LNGの「安定供給に努める」という、微妙な言い回しにとどまっている。
はっきりとは分からないが、現状の輸出量を維持することは請け負うけれど、大きな追加輸出は難しいということなのかもしれない。



 天然ガス価格 - 先物NYMEX・チャート
 http://jp.advfn.com/commodity/natural_gas.html
 日本の年間LNG需要、最大120億立方メートル増加も−英社見通し - Bloomberg.co.jp
 http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aFe36so6Ykdg

日本が1年間に必要とする液化天然ガス(LNG)の量は70億−120億立方メートル増える可能性がある。英電力・ガス会社のナショナル・グリッドが19日、リポートで明らかにした。
このリポートによると、日本は今夏、サーム当たり約80ペンス(約108円)支払う見通し。英国は同約60ペンス、米国は30ペンスという。

 原油:国際価格が高騰 日本経済の重荷に − 毎日jp(毎日新聞)
 http://mainichi.jp/select/biz/news/20110408k0000m020109000c.html

原発事故で電力の火力発電へのシフトが進むとの見方から、天然ガスの需要も増えている。日本は液化天然ガス(LNG)の輸入が年7000万トンに上り、世界最大の輸入国。東電は夏場の電力不足への対策としてLNGを使うガスタービン発電所増設を計画。LNGの調達を急いでいることから、ロンドンの天然ガス先物価格は震災前に比べ約1割上昇した。

 エジプト首相、ガス輸出契約の見直し指示 反イスラエル感情に配慮? - MSN産経ニュース
 http://sankei.jp.msn.com/world/news/110414/mds11041407570003-n1.htm

エジプトのシャラフ首相は13日、イスラエルを含む各国との天然ガスの輸出契約見直しを指示した。同国の中東通信が伝えた。輸出価格の改定によって年間30億〜40億ドル(約2500億〜3300億円)の歳入増が見込まれるという。

 LNGタンカーの運搬レート:67%上昇か−原発事故に伴うガス需要で - Bloomberg.co.jp
 http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=a5ZLLLPfWG5k

福島第一原発の事故の影響で日本で化石燃料による発電への移行が進む中、液化天然ガス(LNG)の運搬コストが67%上昇し5年ぶりの高水準に達するとの見方が出ている。
ABGスンダル・コリア(オスロ)のアナリスト、オイビンド・ハーゲン氏は、LNGタンカーの運搬レートが10−12月(第4四半期)に1日平均10万ドルと、1−3月(第1四半期)の約6万ドルから上昇すると予想している。同氏のチームが推奨する株式投資の半年間のリターン(収益率)は16%だった。

 原発事故で広がる「天然ガス特需」は本物か:日本経済新聞
http://www.nikkei.com/tech/ssbiz/article/g=96958A9C93819696E3E1E2938B8DE3E1E2E6E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;df=3;p=9694E3EAE3E0E0E2E2EBE0E4E2EB

価格も石炭に比べれば高いが、中東情勢の緊迫などで1バレル110ドルを伺う原油価格に比べると割安だ。
(中略)
20年に向けた東電の長期計画によれば、発電容量のうち原子力の割合は今後3基建設することで今の23%が27%に高まる一方、LNG火力は34%が逆に31%に減る予定だった。原発の新設はまず難しく、水力、石油がほぼ横ばいとすれば、現実的には石炭火力の微増とLNGの拡大に動くしかない。

 原発事故で広がる「天然ガス特需」は本物か:日本経済新聞
http://www.nikkei.com/tech/ssbiz/article/g=96958A9C93819696E3E1E2938B8DE3E1E2E6E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;df=2;p=9694E3EAE3E0E0E2E2EBE0E4E2EB

震災前に10ドル/100万BTU(英国熱量単位)以下で取引されていたスポット価格は11〜12ドルに上昇している。
(中略)
もともと天然ガス価格はここ数年の需給緩和で低迷していた。1つはリーマンショックなど金融危機による需要低迷だ。2つ目は生産国の能力増強。特に世界最大のLNG生産国、カタールは昨年末、能力を一挙に倍増し年間7700万トンの生産設備を稼働させた。3つ目は技術革新だ。採掘技術の向上で、米国では岩盤層の間に存在する「シェールガス」の開発が拡大。大輸入国の米国が国内生産に切り替えたことで世界のLNG需給は一挙に緩和した。
増設後の大量供給をもくろんだ米国向け輸出がシェールガス開発であてが外れ、欧州も景気は低迷。中国やインドへの売り込みを強化していた矢先だけに日本の「特需」を長期契約に結びつけたいところだろう。「1000万トンは供給余力があるのでは」と見る関係者もいる。

 天然ガスの億万長者続出 原発事故で価格「青天井」、米で掘削ブーム (2/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)
 http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110415/mcb1104150505022-n2.htm

掘削技術の革新により、米国ではシェール(頁岩(けつがん))ガスの生産量が急拡大している。米エネルギー省が今月5日に公表した統計によると、昨年の米国のシェールガス生産量は4兆8700億立方フィートと、2000年の3900億立方フィートから急増。国内の天然ガス生産に占める割合は昨年23%に達した。

アメリカでシェールガスが大量に出回り始め、これにより、アメリカの需要を見込んで生産能力を強化したカタール天然ガスがだぶついていたため、天然ガスの取引価格は弱含みの状況にあったが、今回の福島第一原発の爆発を受けた需要増を当て込んで、取引価格は上昇している。
特に、長期契約を結んでいない、スポットの価格は高めになる。
内戦に陥ったリビアからの天然ガス供給が停止していること、ロシア産天然ガスの大口顧客であるドイツが脱原発に舵を切ったことで今後の需要が高まると見られることなども、取引価格上昇を後押しすると見られる。
このLNG価格の上昇分を、電力料金の値上げに転化しようとする動きが日本で出てくると思われる。



 天然ガスについて|日本のLNG液化天然ガス)輸入量の現状と輸入量の推移
 http://www.naturalgas.jp/antei/LNGimp.html

日本のLNG輸入量で7番手のロシアは、うまくやれば、日本に恩を売りつつ、カタール産の安価なガスによってシェアを奪われていた欧州マーケットで、再び影響力を高められる。
日本のLNG輸入量で4番手のカタールも、得意先である日本との関係を強化するチャンスになる。
生産量を拡大できるなら、5番手のブルネイ、6番手のアラブ首長国連邦、8番手のオマーンから輸入拡大の打診があるかもしれない。
一方で、アメリカからの輸入を増やすという話は、ニュースでまったく見ない。


 天然ガスについて|世界のLNG液化基地・日本のLNG受入基地
 http://www.naturalgas.jp/antei/LNGbase.html

液化プラントがアラスカに1つしかないからだろうか。


 天然ガスについて|天然ガスの輸出量と輸入量
 http://www.naturalgas.jp/antei/impexp.html

国別輸出量を見ると、アメリカは天然ガスの輸出をしていない訳ではない。
一方で、アメリカは輸入量で世界一となっている。
シェールガスによる増産は可能になっても、国内需要を賄う分に優先的にまわしていたり、あるいは、石油の輸入量を減らした分をシェールガスで賄う形になっているため、輸出に回しにくいのかもしれない。


 asahi.com朝日新聞社):東電・東芝参加の米原発増設断念へ 操業見通し立たず - ビジネス・経済
 http://www.asahi.com/business/update/0420/TKY201104200151.html

テキサス州では安価な天然ガスであるシェールガスが豊富に産出されており、今後安全対策などでコスト増が見込まれる原発にこだわるのは得策でない、との判断もあるようだ。

福島第一原発の爆発を受けて、原発増設計画が破談になったことを考えても、アメリカのシェールガスは自国内へ優先的に回されていく可能性がある。



 FOREIGN AFFAIRS JAPAN - フクシマ後の電力生産をどうするのか
 http://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/201104/Japan_Nuclear_Woes.htm

だが、エネルギー資源の輸入を増やせば、長年にわたって模索してきたエネルギー安全保障は損なわれ、コスト負担も増える。現在原油価格は1バレル100ドルを超える水準にあるし、すでに日本の電力生産の40%を担っているLNGも市場が逼迫し、価格が上昇している。ヨーロッパ諸国とアジアの各国が、温室効果ガスを排出する石炭による発電をLNGに置き換え、おそらくは、旧式の原子炉を閉鎖すると考えられるために、2011年にはLNG需要はかつてなかったレベルへと上昇すると予測されている。

福島第一原発の爆発をきっかけに、LNGの争奪戦が激化していくと見られる。