284日目。冷温停止宣言の茶番。

NHKスペシャル|シリーズ原発危機 メルトダウン 〜福島第一原発 あのとき何が〜
http://www.nhk.or.jp/special/onair/111218.html

レベル7、世界最悪規模の放射能汚染を引き起こした東京電力福島第一原発事故。発災から8ヶ月経つが事故の全容解明は未だ道半ばだ。NHKでは福島第一原発であの時いったい何が起きていたのか、独自の取材をもとに徹底解明する。
まず、原発の命綱ともいえる電源を奪った津波はどのように発電所を襲ったのか。専門家による新知見を踏まえてCGで再現、思わぬ経路から海水が進入した事実を明らかにする。続いて、核燃料のメルトダウンはどのように進んだのか。原子炉の水位や圧力、放射線量の記録など膨大なデータを改めて検証。最新の解析ソフトでシミュレーションを実施し、全電源喪失から、燃料のメルトダウン、水素爆発にいたるまでの詳細なメカニズムを明らかにする。さらに、メルトダウンが進む原発発電所員らはどう事故に向き合ったのか。事故想定をはるかに超える長時間の全電源喪失。通信装置が壊れ連絡が取れない建屋内部。照明が消えた制御室に迫る放射性物質。取材を通して、壮絶な現場の状況も明らかになってきた。
事故直後から独自取材で集めた証言をもとに中央制御室を再現。最新のデータ分析と証言を重ねて「あの日」の“真実”に迫り、人類はこの巨大な原子力エネルギーにどう向き合うべきなのか、根源的な問いを投げかける。


さきほど9時代に放映されたNHKスペシャルメルトダウン 〜福島第一原発 あのとき何が〜」を観たが、綺麗なCGシミュレーションと当時、中央制御室にいた東電社員を演じる役者の大根振りだけが目に付いた、今更な企画だった。


番組内で焦点があてられた「非常用復水器(IC=イソ・コンデンサー)」の取り回しのまずさは、5月中旬の時点ですでにニュースとなっていた。7ヶ月も前に指摘済みのミスを、ドラマ仕立てで解説されたことの意味は、分かりやすさ以上の新事実を含まない。


そして、最大の問題点は、メルトダルンに至った理由を、津波による全電源喪失でしか説明していないこと。
今月の上旬、原子力安全基盤機構は、冷却水が通る配管に地震で亀裂が入り、そこから冷却水が漏洩、これによって原子炉内の水位が下がっていた可能性が高いという「地震起因説」を指摘している。


福島1号機配管 地震で亀裂の可能性
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011121590070039.html

経済産業省原子力安全・保安院が、東京電力福島第一原発1号機の原子炉系配管に事故時、地震の揺れによって〇・三平方センチの亀裂が入った可能性のあることを示す解析結果をまとめていたことが分かった。東電は地震による重要機器の損傷を否定し、事故原因を「想定外の津波」と主張しているが、保安院の解析は「津波原因説」に疑問を投げかけるものだ。政府の事故調査・検証委員会が年内に発表する中間報告にも影響を与えそうだ。
これまでの東電や保安院の説明によれば、三月十一日午後二時四十六分の地震発生後、1号機では、非常時に原子炉を冷やす「非常用復水器(IC)」が同五十二分に自動起動。運転員の判断で手動停止するまでの十一分間で、原子炉内の圧力と水位が急降下した。この後、津波などで午後三時三十七分に全交流電源が喪失し、緊急炉心冷却装置(ECCS)が使えなくなったため、炉心溶融が起きたとされる。
一方、経産省所管の独立行政法人原子力安全基盤機構が今月上旬にまとめた「1号機IC作動時の原子炉挙動解析」は、IC作動時の原子炉内の圧力と水位の実測値は、ICや冷却水が通る再循環系の配管に〇・三平方センチの亀裂が入った場合のシミュレーション結果と「有意な差はない」と結論付けた。圧力と水位の急降下は、〇・三平方センチの配管亀裂でも説明できるという。〇・三平方センチの亀裂からは、一時間当たり七トンもの水が漏えいする。
東電は二日に発表した社内事故調査委員会の中間報告で、「津波原因説」を展開、地震による重要機器の損傷を重ねて否定している。


番組は、いまだに東電がこだわる「津波起因説」に沿った脚本で構成されていた。その点でも今更感が強かった。
東電が「津波起因説」にこだわり「地震起因説」を忌避する理由は簡単だ。
津波が理由であれば、津波対策(防波堤工事など)を行うことで他の原発を稼動させつづけるお題目がたつが、地震が理由では、膨大な量の配管を工事しなおさねばならず、実質的に原発の停止、廃炉を余儀なくされるからだ。
さらに、「津波起因説」を唱え続ける限り、巨額の賠償責任を逃れることもできる。地震は正確な震度が計測されてり、その震度は「想定内」だが、正確な高さが測りにくい津波は「想定外」のものだったと説明可能だからだ。


オピニオン 塩谷 喜雄 氏(科学ジャーナリスト)「ぼくちっともわるくないもん」 科学技術 全て伝えます サイエンスポータル / SciencePortal
http://scienceportal.jp/HotTopics/opinion/212.html

被災原発の中では震源に一番近い女川原発で記録された揺れの最大値は、重力加速度にして570ガルほど。2007年に柏崎・刈羽原発を襲った中越沖地震の揺れ、1,300ガルの半分以下である。福島第一でも地震の揺れは地震計に自動的に記録され、最大は550ガルだったと東電の中間報告は述べている。

500-600がルの揺れでは、原陪法上の免責事項「異常に巨大な天災地変」には全く該当しない。地震国日本の原発としては大甘だと、地震学者から指摘されていた基準地震動(耐震設計で想定・考慮すべき最大地震動)程度の揺れで、機器、配管、システムが破損したのでは、電力会社の面目は丸つぶれだ。耐震基準は甘くても設計の余裕度で大きな地震にも耐えるとうそぶいてきたのに、手抜かりと備えのお粗末さが、世間に知れ渡ってしまう。地震では何も壊れていないと言い張るしか道はないのである。

免責を得るための頼みの綱は津波である。それは十分に高く人間の手に負えないほど強くなければならない。

炉心のメルトダウンや水素爆発の遠因とされる外部電源の喪失は、津波によって送電用鉄塔が倒れたためだと、東電は最初主張していた。ところが、倒れた鉄塔まで津波は到達しておらず、地震の揺れで倒壊したことが判明した。東電はやむなく訂正したが、すぐばれるような底の浅いウソをついてまで、あらゆる損傷を津波のせいにしようという姿勢は、その後も何ら変わっていない。

事故から2カ月もたって、東電は福島第一の監視カメラの映像の映像を一部だけ切り取って流した。原子炉建屋などにぶつかって盛り上がる津波を、テレビを通じて繰り返し見せつけ、高さ15メートルの津波に襲われた天災だと、人々に印象付けることにまんまと成功した。

原子炉建屋のような大きな壁に突き当たった津波が、行き場を失って上に盛り上がるのは、当たり前の物理現象である。それは地球物理学でいう津波の高さではない。科学が決めている比較検証可能な津波の高さとは、その海岸の平均潮位などをもとに決められた基準面に比べてどれくらい海面が上昇したかである。

復水器の取り扱いは確かに致命的なミスの一つではあったが、そもそも復水器の取り扱いのミスがなくとも、すでに存在した設計・構造上のミスゆえに、メルトダルンを免れ得なかった可能性が高いことを番組では触れていない。
そのことに触れてしまうと、原発の建設許可を出した国や、他の原発で起きてきた数々の差し止め訴訟で原告敗訴を判決してきた裁判所の責任に触れざるを得ないから。


それがNHKの限界だというなら、そのような立場にある放送機関であることを表明したうえで、番組を観てもらうようにしたほうがいい。



やっぱり日本の原子力の土台は腐っていた
http://www.taro.org/2011/12/post-1135.php

山本一太特命委員会で、自民党本部に九大、東工大のエネルギー、原子力関係の教授を招いて、原子力関連の人材育成についてのヒアリング。

驚いたのは、学界が果たしてきた原子力ムラのなかでの役割について、二人とも、なんら反省もなく、これからこんな開発をやる、こんな研究をやる、だからそのための人材を育てないと云々と、まるで福島の事故など無かったような能天気なプレゼンテーションだったこと。

事故後に原子力の専門家がテレビで、メルトダウンではない、大きな問題ではない云々とまるで真実と違うことを発言していたのはなんだったのかという質問が立て続けに出されたのに対して、全く答えもしない。

原子力ムラの中でも、特に腐敗がひどい分野かもしれない。

プレゼンテーションの中で、将来の原子力関連の人材の需要に関する予測として、
1.プラントの建設は各電力の供給計画による。プラント寿命は60年として即刻リプレースすると仮定する。
2.2030年までの新増設を4年に一基ずつに平準化する。
という、二つのケースでの試算が堂々と提示されていた。

あきれるというよりも、その象牙の塔ぶりに笑いが出た。

さらに、海外需要の5%から20%を受注したら技術者数の予測はこうなるという予測までついてくる。

最後のページは「将来の人材育成に関する課題(福島事故後)」という表題で、「世界の原子力利用推進の状況に対応した人材の育成と供給(産業振興と密接に関連する)」そして「電気事業者、メーカー、研究機関への優秀な人材の供給」。

シビアアクシデント対策とか、放射性物質の除去とか、核のゴミの処分や廃炉のために必要な人材を供給しよう等ということは一言もない。

もちろん、使命感や倫理感に欠けた人材を供給してきたことに対する反省など全くなし。

こういう人間達に、原子力を任せたくないし、こういう人間達に、原子力に関わる人材育成を任せたくない。

日本の原子力、根底の根底からおかしい。

自民党総合エネルギー政策特命委員会」
http://www.jimin.jp/activity/conference/weekly.html

2011年12月14日(水)
政調、総合エネルギー政策特命委員会 12時(約1時間) 702
議題:これまでのエネルギー政策、特に原子力政策について有識者ヒアリング
講師:工藤 和彦 九州大学特任教授
   齊藤 正樹 東京工業大学原子炉工学研究所教授

九大の工藤和彦
http://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K002215/

全学共通教育科目として「放射線とは何だろうか」
を担当している。

原子力工学(原子炉物理学、原子炉制御工学、原子力安全工学など)
を研究している。

(社)日本原子力学会、(社)日本機械学会、(社)計測自動制御学会
(公)日本工学教育協会 などの会員

文部科学省 原子力安全情報通報等調査委員会委員
        技術士試験委員会委員
佐賀県環境放射能技術会議委員
山口県原子力安全顧問
(社)日本技術者認定機構 技術者教育プログラム審査委員
(社)九州経済連合会 九州エネルギ-問題懇話会顧問
Nuclar Engineering and Design Editorial Board Member
などを務めている。

内閣府原子力安全委員会 原子炉安全専門審査会会長、
原子力事故・故障分析評価専門部会部会長
内閣府原子力安全委員会 緊急事態応急対策調査委員会委員
(以上2010年12月まで)
(社)日本原子力学会 副会長(2008年6月〜2010年6月)

東工大の齊藤正樹
http://www.nr.titech.ac.jp/~msaitoh/research/kenkyu.html

核分裂反応、核融合反応、核破砕反応を総合的に利用して、エネルギー生産のみならず、将来の核燃料を自ら増殖すると共に、生成された放射性廃棄物をシステム内で核変換させ、自ら消滅させる(放射性廃棄物を出さない)放射性廃棄物ゼロリリースを目指した原子力システムの研究を行っています。 →→→

超ウラン元素(Np,Am、Cm等)をウラン核燃料に少量添加することにより、核拡散抵抗性の高い(軍事転用できない)プルトニウムを生成する(Protected Plutonium Production: PPP, P3)長寿命小型原子炉の研究を行っています。核拡散抵抗性の高いこの原子炉は、世界の原子力平和利用を促進し、開発途上国等への原子炉の輸出に貢献するでしょう。→→→

長期間(10年以上)燃料補給の不要な火星等、惑星探査用の超長寿命小型原子炉の研究を行っています。 →→→

病院の地下に設置し、病院の職員が操作できる、安全で安心な「中性子によるがん治療」を目指した超小型の医療用ミニ原子炉の研究を行っています。 

九大の工藤和彦、東工大の齊藤正樹の2人の名前は覚えておこう。



国内廃棄物に大量の核物質 未計量で濃縮ウラン4トン
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011121401001888.html

政府が国際原子力機関IAEA)の保障措置(査察)の対象となっている全国の262施設を調査した結果、計量や報告をしていない濃縮ウランやプルトニウムなど核物質が廃棄物から大量に見つかったことが14日、分かった。政府は国際社会の批判を避けるためIAEAへの申告を急ぎ、水面下で協議を始めた。複数の政府高官が明らかにした。
中でも政府系研究所で高濃縮ウラン約2・8キロ、原子力燃料製造企業で約4トンの低濃縮ウランがそれぞれ未計量だったケースを重視して調べている。中部、北陸、中国の3電力会社などにも未計量とみられる核物質があり、確認を進めている。

それから先週もっとも気になった記事がこれ。
「高濃縮ウラン約2・8キロ」は、弾道ミサイル用には足りないが、小型のものであれば核弾頭が作れる。
となると、「未計量」という言い方がふさわしいのかどうか。核弾頭の原料ほど国にとって重要なものが、国の管理外とされていることは普通ありえない。
だから「未計量」ではなく、「国外に対して密かに伏せておいた」が実際のところじゃないのか。