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西暦120年、ローマ帝国ブリタニア(現在のイングランドウェールズ)への侵略を進めながらも、北端地域に君臨するカレドニア(現在のスコットランド)の部族の抵抗に手を焼いていた。
ローマ軍最強といわれる第九軍団の兵士5000名はフラビウス・アクイラ指揮の下、黄金の“ワシ”を掲げてカレドニアに進攻したが、霧の中で忽然と姿を消し、再び帰ってくることはなかった。
激怒したローマ皇帝ハドリアヌスは、ブリタニア人の南下を防ぐため防壁の建設を命じる。
ハドリアヌスの長城”と名付けられたこの防壁はやがて、ローマ帝国の支配圏における最北端の境界線“この世の果て”と呼ばれるようになる。
20年後、誇り高きローマ軍人として成長したアクイラの息子マーカス・アクイラ(チャニング・テイタム)は、父の影を追うようにブリテン島(イングランド)の南西部に位置する小さな砦に赴任する。
赴任して間もなくのある夜、先住民族に砦を襲われ勇猛果敢に戦ったマーカスは、その功績を称えられたものの、足に重傷を負い軍人生命を絶たれてしまう。
生きる目的を失い、絶望の淵に追いやられたマーカスは、伯父(ドナルド・サザーランド)の屋敷で傷を癒しながら憂鬱な日々を送っていた。
ある日、マーカスは観戦していた剣闘試合で、奴隷戦士のブリタニア人青年エスカ(ジェイミー・ベル)の命を救う。
エスカは命の恩人であるマーカスに忠誠を誓い、奴隷として仕えることになる。
そんなとき、ブリテン島北端の神殿に“ワシ”があるという噂を聞いたマーカスは、父の汚名を晴らすため、また自らの生きる誇りを手にするため、エスカを従え、危険な北の荒野へと“ワシ”を取り戻す旅に出る。
果たしてマーカスとエスカは、消えた父と5000名の兵士の謎を解き明かし、“ワシ”を取り戻すことができるのか。
想像を絶するほど広大で厳しい荒野で、2人を待ち受ける真実とは……。

http://movie.walkerplus.com/mv49491/
    • 渋谷ユーロスペースで16:10の回。
    • 各界有名人の推薦コメント(http://washi-movie.com/comment.html)。「あたかも異世界ファンタジーのように映る。」「スコットランド奥地の荒涼たる風景等がリアルに描かれていて興味はつきない。」「蘇るのは、男たちが名誉のために死ねた時代の真実だ。」。そういう作品だったよなぁと素直に頷ける論評。ほぅそうなの?と興味をもった人は、早速ユーロスペースに足を運んでみると吉。「第九軍団」は結局どうなったのか?というミステリー要素は隠し味程度なので、映像に集中して楽しむほうが吉。
    • 自分はどうオススメしよう?と考えて、これに決めた。「スカイリム」ファンなら必見。
    • ハドリアヌスの長城”の向こう、今で言うスコットランドの土地は、まさに「スカイリム」。雪がチラつき、山岳がうねる、凍てついた荒野。ブリタニア人のエスカを「フォロワー」に、「粗悪なチュニック」という出立ちで、クエスト“名誉の奪還”に挑む、といった感じ。
    • 少なくとも、前作の「オブリビオン」の、原色主体で黄金の光沢が鮮やかな世界観に比べれば、くすんだ黒と茶と白が混ざり合う「スカイリム」はよりイメージに合っている。「スカイリム」のキャラクターの肌は、近くに寄って見ると分かるけれど、誰も彼も妙齢の女性でさえも、北の大地の厳しい風土のせいでザラっと荒れており、墨をまぶしたように薄汚れている。有志ファンの手で開発された“MOD”と呼ばれる非公式パッチをあてれば、毛穴一つないファイナルファンタジーのキャラクターのような滑らかな肌に改変できる。が、自分は荒れた肌の質感のほうが好ましいし、だから「第九軍団のワシ」にも惹かれた、と思う。
    • 映画で驚いたのが、ワシの像の行方を追ってたどり着いた、“アザラシ族”。モデルはスコットランド先住民族のピクト人ということになっている。そして、「スカリイム」の西方にある「リーチ」の先住民族「フォースウォーン」にクリソツ。

    • モヒカン頭。細い牙を数珠繋ぎにした首飾り。紐をグルグル巻きつけた武器。etc。本当にそのまんま。違うのは、“アザラシ族”の戦士が泥のようなものを肌に塗りたくっているのに対して、「フォースウォーン」は顔と体に刺青。“アザラシ族”が身に着けている毛皮は黒白のまだらなのに対して、「フォースウォーン」は薄茶。そのあたりくらい。“アザラシ族”の村で見られた、木の枠にぴっちりと引き張られたなめし皮、木の丸にずらっとぶら下げられた切り身の鮭、粗末な小屋の入り口にかざられた木の枝に刺さった動物の頭骨、素焼きの甕で回し飲みするエール、等々も「フォースウォーン」との共通項。
    • 対立の構図も似通っている。「フォースウォーン」は、豊富な鉱床を目当てに後からやってきた「帝国」の人間に土地を追い出され、険しい山中で略奪を繰り返す蛮族のような生活を余儀なくされながら、土地の奪還を伺っている(動画は、鉱山の町「マルカルス」をめぐる「帝国」と「フォースウォーン」の攻防戦)。ピクト人は、ローマ軍の侵攻を数世紀に渡って退けた。
    • というか、そもそもを言うと、似通っている順番が逆。映画のローマ軍が、「スカイリム」における「帝国」兵士の格好とそっくりなのは、「帝国」がローマ人をモデルとしているせい(http://wiki.skyrim.z49.org/?TES%C0%A4%B3%A6%A4%CE%B4%F0%C1%C3%C3%CE%BC%B1#men)。だからこそ「スカイリム」ファンなら必見。ローマ軍の駐屯地内の防備を固める先を尖らせた棒。ふいごで空気を送り込まれ赤々と燃える鍛冶場。エスカが背中に担いだ矢筒の形。脚力はさほどでもない代わり馬力のあるずんぐりした馬。「ホワイトラン」で「同朋団」の団長を務めていた「コドラク・ホワイトメイン」の火葬シーンを彷彿させるシーンも。
    • あと、防壁を越えたところにある寒村に転がっていた、かご!(これ→http://www.nullgamers.jp/entry.php?filename=20120130014045)。本当にそっくりそのままで思わず声が出そうになった。
    • 「第九軍団」が消息を絶ったのは西暦120年。映画はそれから20年後の140年。まだローマの国教はキリスト教でない。だから、マーカスが命をかける名誉は、ローマの軍人としてのそれ。キリスト教に基づく使命感でないため、自分には分かりやすかった。キリスト教が国教の時代が舞台であれば、スコットランド土着宗教のドルイドと対比されるストーリーラインが絡んできて、脚本のシンプルさがそがれていたろう。「スカイリム」のストーリーラインで重要なファクターとなっている、反「帝国」勢力の「ストームクローク」やハイエルフ勢力の「サルモール=アルドメリ自治領」にあたる集団との巴の構図もない。
    • 一部の女性には、マーカスとエスカの間に芽生える感情もポイント。
      • ストーリーの途中、マーカスとエスカの上下関係は何度か入れ替わる。最初は「ローマ軍の元部隊長のマーカス>スコットランド土着民族の奴隷のエスカ」、これが途中で「ローマ軍に立ち向かった部族の長の息子で“アザラシ族”の客人となったエスカ>憎きローマ軍の元兵士でエスカの奴隷のマーカス」に変わる。エスカにとってトーマスは、剣闘試合で殺されるはずだった自分を救った命の恩人である一方で、父の憎い敵であるローマ軍の兵士。複雑な思いを抱えながらトーマスの奴隷として仕え、壁を越えた後は、ホームグラウンドのスコットランドでもトーマスの命を敵から救ったりしつつ、「ワシ」の像につながる情報をワザと隠したり、関係は安定しない。そして、“アザラシ族”に出会ったところで、エスカが主、トーマスが奴隷、と主従関係が逆転。つまりは、関係性の上での攻め×受けが逆転。この逆転した関係が、ストーリーが進むとさらに何度か転換し、終盤のバトルシーンの直前、互いの名誉に対する考え方がぶつかり合うことで友情に火がつく。「俺を置いて、「ワシ」の像を壁の向こうに届けて、名誉の回復を図ってくれ」というマーカスに、「己の名誉に誓って、あなたを追いていけない」と告げるエスカ。個人的には、エスカが“アザラシ族”の村でトーマスをいたぶる(ことを仕方なしに余儀なくされる)シーンをもうちょっと盛り込んでもらえていたら、その後の展開の意外性が高まったと思う。
    • 脱線1。25年以上前、「鷹の探索」というゲームブックがあった。

      • ストーリーは「アルビオン王国の辺境を守るグレイリン軍団。武勇を誇るその軍団のシンボル〈鷹〉の像が、北方からの侵略者によって奪い去られてしまった。グレイリンの血を引く者は、いまや君ただひとり。騎士としての名誉にかけ、君はピクトランドをめざし出発する。〈鷹〉の像を奪い返す長い旅に―。新たな出会いと謎に満ちた冒険の幕が、いま、切っておとされる。」。25年以上経って、これが1954年に書かれた「第九軍団のワシ」を下敷きにしていたことを知った。途中で出会う女戦士がカッコ可愛かった。
    • 脱線2。「ウィンドヘルム」で「アベンタス・アレティノ」の頼みを聞き入れ、「リフテン」の「オナーホール孤児院」で孤児を虐待している「親切者のグレロッド」を暗殺したところ、就寝中を「闇の一党」の「アストリッド」に拉致され、「廃屋と化した小屋」で別に拉致されてきた街人たちを殺すよう脅されたので、ちょうど「同朋団」クエスト中だったことから「ウェアウルフ」化して「アストリッド」を鉤爪でほふり、結果的に「闇の一党」壊滅ルートを選んでしまったのは、ちょっともったいなかった。暗殺請負人を初志貫徹できるゲームに今後いつめぐり合えるか分からないのに。プレイ時間が100時間を越えた今、セーブデータをさかのぼってそこだけやり直すのも何かアレだし、前作の「オブリビオン」で2本出た拡張パックを「スカイリム」でも期待。