なんともいえないタイミングで自民党が『「犯罪から子どもを守る」ための緊急提言』なるものを発表

 http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2005/pdf/seisaku-019.pdf (カマヤンの虚業日記より)

今後取り組むべき課題

1.青少年の健全育成環境の整備

女子児童を対象とした犯罪増加の背景には、児童ポルノや暴力的なコミック、過激なゲームソフト等の蔓延の問題が指摘される。子供を対象とした性犯罪を封じ込めるためには、青少年のみならず、成人にも悪影響を与えるこうした児童ポルノ等が事実上野放しにされている現状を改革する必要がある。

(下線は引用者による)


 というわけで、下線部分「成人にも悪影響を与える」に改めて注目。18禁マークをつけてゾーニングするだけではもう済まない、誰の目にも触れさせてならないという間合いまで踏み込んでる。*1女子児童を対象とした犯罪増加の背景うんぬんには、なりやまない報道という状況をポリとマスコミの協力でお膳立てられている。


 では、具体的にどういう場所でこの整備目標を訴えていくつもりなのかというと、一番目立つのは国会。これもまた上手い具合に、12/16の衆議院「青少年問題に関する特別委員会」で、子どもの安全対策なるテーマについて猪口国務大臣や山口内閣府副大臣らに質疑が行われている(http://www.shugiin.go.jp/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Ugoki/seinen16320051216004_f.htm)。
 質疑者は以下の9人。


 議事録はまだアップされてないが、*2ネットテレビ(http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib3.cfm?deli_id=28711&media_type=wb)で質疑の模様を見ることができる。で、松本洋平という自民党一年生議員がやった質疑が「6.性犯罪の温床となっている児童ポルノ有害図書氾濫の現状及び取締り強化の必要性」。
 03年総選挙で落選、9/11郵政解散総選挙で初当選。東京19区(西東京、小平、国分寺、国立)で民主党対立候補に5,000票差(http://www.janjan.jp/sousenkyo/2005/shosenkyoku/0088.html)という薄氷なのか民主党が不甲斐ないのか。コイズミ人気の波に乗らなければこの特別委員会に席はなかったろう。WIKI(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%9C%AC%E6%B4%8B%E5%B9%B3)によるとチャンネル桜で番組をもってたり。そーいう肩書きがある一方で、まだ政治の場での実績は皆無のぺーぺー。日記(http://www012.upp.so-net.ne.jp/yohei/diary.html)を読んだところ、自民党がいつも言ってることとおんなじことしか言ってない。他のページも一通り見たが、児童ポルノ有害図書について何か一言でも触れた箇所もない。野田聖子がジュベネイル絡みと郵政問題で下手うったから、はやいとこ国会での実績がほしい新人が担ぎ出されて本人も乗り気、というところか。


 委員会で実際何を発言してるかというと、広島の事件を暗に示して道草で自分は成長したなんてことをひとくさり話した後、「本来犯罪者にならなくてもよかったような人がなってしまうような環境があるんじゃないか」「実際に児童に対しての犯罪を犯した加害者の自宅から児童ポルノ有害図書が数多く押収されるということがマスコミ等で報道されている」(大意)ときた。「こういうものが犯罪を生み出す温床になっているんじゃないか」「確かにスクールバスも大事。でも、バスによって犯罪がなくなってそこで終わってはいけない。我々が目指さなければいけない社会は、最終的には犯罪がなくなって……」(大意)。
 これに対する内閣府副大臣回答は、児童ポルノ法と都道府県条例で規制がされている現状を繰り返すにとどめ、警察庁生活安全局長は児童ポルノ法違反の検挙数を平成16年度177件、今年度上半期170件、平成16年に18歳未満への有害図書販売を126件検挙、とこちらも数字を繰り返すのみにとどめている。


 松本新人続けて「倫理感の喪失」「今の日本の教育に問題が潜む」「20歳そこそこの人間がそういう事件を起こす」「戦後教育を受けた世代から増えている」「過激な性教育が行われることが性に対する倫理感の喪失の一因になってる」(大意)。文部科学省青少年局長の返答で特に反応すべき部分はまたなく、通り一遍。つーか、なんだ、ジェンダーフリーバッシングと一部オタクジャンル廃絶運動はリンクしてんだなぁ、やっぱり。



 でも、この不機嫌な顔した林家三平といった感じの議員個人をどうこうあげつらっても時間の無駄かもしれない。党本部の前からの方針を必死に訴えてるだけって感じだ。16日のこの委員会から3日で党本部の方針が最初のPDFファイルとして出てきたわけだし。



 最後に質問をしていた保坂展人は、少年事件の件数のピークは戦後という言質を警察庁参考人から引き出したり、大阪の不登校半減目標が当事者のプレッシャーになってるのではないかという疑問から、「弾力のある複線型」で社会復帰できるシステムの構築を訴えていた。一部オタク陣営からの人気が高い保坂らしい内容。不機嫌林家の発言に、内心どう思っていたのか。気になるところ。

*1:毎度毎度のややこしい話になるが、ここで言う児童ポルノに「絵」を含んでるのかどうか。通常なら含まないはずなのだが、それだと別に今までと変わらないわけで、わざわざ提言というカタチで出してきていることや野田+ジュベネイルが「絵」を含む議論を始めようとしていたことを考えると、注意しておいたほうがいい。

*2:12/21付けで議事録公表。→http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/007316320051216004.htm