「リンガフランカ」(滝沢麻耶)アフタヌーンKC

 『人気落語家の長男として生まれ、だけど落語家としての人気は弟に追い越され、ピン芸人に転向するもまったく目が出ず“寒い”と言われ続ける笑太が、父親が自殺した葬儀の当日にボケとネタ作りに特異な才能をもつ岸辺と出会い……。』

 基本的に「人間讃歌」な話が好きだ。ゲームだと「らくえん」がその系譜。で、両方とも畳み掛けるボケと突っ込みで、日常の描写をかき回す(笑いの質はだいぶん異なるが、リズムは近い)。1話目はアフタヌーン本紙で読んでなかったのだけれど、2人の出会いのシーンでの「喪服着ちゃってるよ?」のボケで一気につかまれる。つーか、このボケいつか自分でやってみたい。
 
 笑太と岸辺の2人ともに共感できる自分史が描かれていたのは、個人的なヒット要因。
 笑太は、108〜109ページの部分。もう、書き出すと思い出して辛いから単行本を読んだ人だけ分かればいいけれど、これとほとんど同じことが実際あった(笑)。
 岸辺は、以前に1年間だけ組んでた、背の低いことに突っ込むと機嫌が悪くなる相方に、舞台上で漫才の真っ最中にシークレットシューズを履いてることに突っ込んで、「なんでやねん」で打ち下ろしの右、「もおやめさせてもらうわ」でマウントポジションからの右をくらった過去にしびれる。全然憎くも嫌いでもない相手に、無神経な振りをして逆撫ですることをしてそれに対する制裁を無条件で受けてネタに昇華してみたい、という欲望は、確かにある(確かって?)。まあ、このマンガの岸辺の場合は、ボケとしての性(さが)というか、天然という設定だけれど。

 自分回復、家族回復といったある意味、くさいくなちゃうテーマは、読みたいんだけれどもあんまり正面切って読みたくはなかったところに、アフタヌーンで連載してくれたことも、タイミングがあったかなぁ。

 

リンガフランカ (アフタヌーンKC)

リンガフランカ (アフタヌーンKC)