「HOTTA 堀田 ②」(山本直樹) F×COMICS

 山本直樹を初めて読んだのは、隔週刊金曜発売の頃のヤンサンで短期連載した、バーコード頭で40越えの教頭=叔父と、その学校に教師として赴任してきた姪の再会と近親相姦の話。確か90年か91年の連載だったか。


 この連載時期をどちらの年か特定せずに“まぁ、そのくらい前”などと済ませられないややこしさが、山本のような歴史の古いエロマンガ家について振り返ろうとする場合に無視できないこととしてあるのは、ヤンサンで連載してた「ANGEL」がいわゆる有害コミック騒動で90年の秋から約半年に渡る休載へ追い込まれてるから。
 山本の連載は確か春から夏にかけてだったので、それが90年の春か91年の春かで、エロ描写の自由度にかけられていた圧力は大きく違ってたはず。


 で、調べたところタイトル「守ってあげたい」がその作品だった。連載開始は91年に入ってから。まだ「ANGEL」は休載中だった時期。微妙な調整能力が問われる時期にやってたんだなぁ。


 ついでだからと、太田出版から出ている単行本を買ってきて読み返すと、1話で2箇所、マジックでぐしゃっと塗りつぶしたような消しが入っていた。それ以外の全4話で消しが必要になるようなセックス描写はなし。



 でも、がんがんにおったってた(はずだ)。

 夏の夕暮れ、スク水の姪がちゃぶ台の上のビール瓶、コップ、枝豆の入った深皿を押しのけながら四つんばいで迫ってくるシーンを、連続のコマで切れ切れに見せていく構成は、今読んでもぞくぞく(このシーンは、教師になった姪と8年後、2度目のセックスに至るところで、夕食のテーブルの上を使ってリフレインされる)。

 セックスの最中の「4親等以上離れていれば結婚できるから」というセリフにも、芯を熱くさせたのを覚えている。当時は血の遡り方なんて知らなくて、中盤に出てくる叔父と姪は3親等だからやっぱり結婚できなかった、と車中で姪に教えられるシーンに先読みのできなかった自分は小さくないショックを受けていた。



 その後、「Blue」が都から“指定”を受け絶版・回収の憂き目にあわされてしまうのにともない、山本もいやおうなく矢面に立たされ渦中の当事者として、反有害コミック運動問題にかかわっていくことになるのだが……(ごうりだいすけナレーションで)。



 さらにその後、スピリッツ誌上で連載された、92-93年の「僕らはみんな生きている」、94-95年の「ありがとう」まで、同じ小学館で連載した3作品におけるエロ描写が、有害運動の表面的な収束(児童ポルノ法案成立を働きかけるほうにシフト)につれ、しだいに過激さを増していく様を、またじっくり追ってみるのも懐かしかろう。




 閑話休題




 本題は「守ってあげたい」ではなくて。

 何年ぶりに手に取るか分からないこの「堀田②」を購入したのは(しかも1巻は買ってない)、“実用に耐える”“使える”レベルにあることが、新宿書店の見本をパラパラとめくった段階でも、よく分かったから。
 エロマンガ業界やマンガ業界全体における過去から今現在における山本の立ち位置をうんぬんするほどの知識は残念ながらいまだにつちかってこれていないので、とりあえず今日のところは、なぜ山本の絵はいまだにエレクチオンの普遍を獲得しえているのか、について。


 ねばり気を感じさせる膣口から染み出すように少量のみ排出される愛液、ほどよい茂り具合の恥毛。陰茎はトーンが貼られない。なまっ白い陰茎。描き込みは、体の輪郭はリアルだが、皮膚表面は真っ白と言っていい。

 そうだな、しろいらしん、白い裸身に、磨きがかかってるのかな。
 透き通るほど、ではなく、少女マンガ的なそよぐような風にもフッとのって消えてしまうような、そんなはかなげなものではなく、スレンダーな体に肉の柔らかさを伝える白さ。
 収録作“商品化された性が青少年に与える多大な影響”で黒髪眼鏡セーラー服の女子高生、つまり典型的日本人を描いていても、もうなんか、黄色人種の肌と肉じゃないね。




 ざざーん。ざざーん。ぎう〜。


HOTTA 堀田 (2) (F×COMICS)

HOTTA 堀田 (2) (F×COMICS)