「カワイコちゃんを2度見る」(福満しげゆき) 青林工芸舎


 巷の作者、作品に対する評判を耳にして、読み終われば半日は部屋の隅で膝を抱えて過ごせると思って池袋ジュンク堂で買ったのに。なんですか、これは。収められてる16の短編の登場人物たちは、後ろ向きではあるものの溢れんばかりの行動力。そこにまばゆいものを感じてしまった自分は、どうすればいいんですか。ゾンビ捕獲網や自作ダッチワイフを一生懸命自作する彼らは、人生をしっかり歩んでますよ。魚の彼女とラブホで一晩過ごしたり、ストーカーからボクサーに転向したり。生きていく希望や熱なんか、このマンガからもらいたくなかったんですよ。表紙の巨乳シャツ黒髪三つ編み少女のエロスは、ゾンビ捕り物の中で添え物程度ですか。溜まった欲求不満が明日への活力になりかねないよ!



 この作家は、滝本タイプというか、作者本人の後ろ向きさのほうがきっと楽しめるのではないか。
 文学フリマで購入した「蜂鳥微動 Vol.1」(http://www16.ocn.ne.jp/%7Esokra/)に掲載されている、福満のインタビュー。『僕の小規模な失敗』のネームが、引きちぎった後のあるよれよれのノート紙いっぱいに書かれて(1Pに8P分のネームという妙ちきりんさ)喫茶店のテーブルか何かの上に広げられた写真に、神経質さがうかがえる。そして、今年の4/3に収録したというインタビューの中で、福満はこう答えている。

――作者と主人公は違ってもいいのでは?

福満:うん。でも加減っていうか。イメージと理想と憧れだけで描いてても、そんな人間じゃないことがばれると思ってて。面白かったらいいんだけど。面白かったらなんでもいいんだけどね。…話は終わりましたけど。

――(爆笑)

(下線は本誌では太字)


 手の届く範囲での後ろ向きな行動力という枠がちょっと透けて見えたようで、安心した。





 あ、それから、ジュンク堂は即刻、「サブカルコミック」などというコーナーを廃止するか、そこから福満のマンガを排除→別の棚に移すべきだよな! 代わりに、K-BOOKS秋葉原店や翔壱書店西新宿店さえ凌駕するほどのエロマンガコーナーを! それと、福満は『僕の小規模な失敗』を上梓して描くことがなくなったなんてことを言い出す前に、もう一度エロマンガ描いてみようよ!


カワイコちゃんを2度見る

カワイコちゃんを2度見る