君達はカウンターに座るべきだ。

 飯屋で隣の席に座った男女ペアの男(素足の黒色のサンダル、橙色のチェックのシャツ、ベージュのパンツ、眼鏡)のほう。あのプログラミング言語は使えない、誰それに助けてもらわないと1月までに仕事が間に合うかどうか分からない、などと女と話しながら、女と1秒以上目を合わせようとしない。
 女の顔を中心に衛星軌道を描くように首をゆくっりぐるんぐるんと回すようにしたり、女の顔のほうから超スローモーションで飛んでくる弾丸を避けるように首を左右に振るようにしたり。こっちが食べてるから揚げ定食に目が止まるわけでもなく。なかなかターゲッティングがうまくいかないらしい。彼だけの妖精に。
 女のほうは、受け答えをするときだけ男の顔を見て、話す順番が男のほうにターンした後は、男の胸元あたりに目線を下げて生相槌を打つことに終始していた。