COMICリュウ 創刊号

 今回はだらだらいくよ。





 最近、なるべく読者アンケートを出すようにし始めている。特に創刊号から2〜3号分は、手探りの部分も相当あるだろう編集側にある程度、参考になればと思って出すようにしている。リュウでもハガキを切り取って、さぁ、書いてやろうかと見ると、最初のお題は「面白かった作品3つ」。


 ……。


 この3つが、ぽんぽんぽん、と出てこなかったのが、今のところもっとも懸念するところだろうか。「そこそこ面白かった作品」なら、ほぼすべての作品がそれに当たるので、また悩ましい。最近創刊されたマンガ誌で、すべてのマンガに及第点以上をつけられたのは、去年の少年シリウスまでさかのぼってしまう自分なので。安定してるっちゃ安定。外しはない。まさか創刊号限りの押井のDVDが、目玉? ではないだろうが(もう手元にハガキがないので確認しようがないが、面白かった作品にDVDは項目で含まれていたろうか?)。



 ついてきたい濃いマンガ読みはついてこい、な臭いは創刊情報を小出しにしていた頃や書店配布の小冊子からぷんぷんさせていたので、予想の範囲内な感触と言えばそう。ただ、これについてきたらいいかもよ、くらいの手の差し伸べ方は、もっと若手のマンガ読みに対してあってよかったんではないのかなと。



 結局、主要な面子が古臭いんだよなぁ……。それが否めないのと同時に、前アニメージュ編集長である大野修一編集長の個人的なアニメ・SF人脈でその面子が構成されてるっぽいのが、20年ぶりのリュウ復活とかいう煽り文句以上に、どこまでマンガ業界に対して本気なの?というクエスチョンを投げかけたくなる。今の徳間で、10年も前に一度キャプテンでマンガ事業を撤退した徳間に、そんなに余裕はないだろう。



 次号予告ページのコピー「マンガファンなら読まなきゃ嘘だ!!」は、頷ける。読んどくべきだし、毎号買っておいて損はないだろう。けどなぁ、最近創刊されたマンガ誌は一応、成功してるかどうかは評価のやり方がそれぞれあるだろうけど、今のマンガをもっと盛り上げていこうという大なり小なりの前向きさ(と商魂逞しさ)が、誌面にあった。それと比べると、なんかこう、リュウの枯れたカラーは、そこはとなく物悲しさを湧き上がらせる。



 枯れたカラーを心の奥底では案外好意的に受け入れている自分に、年取ったんかなぁ……、という思いを抱きたくないだけなかもしれない。もう、そこはちょっとまとまらない。まとめたくない。とりとめない。



 あぁ、あと、安彦良和鶴田謙二は趣味で描いてくつもりなら、とっとと筆を置け。 書下し単行本で頼む。その分の原稿料をコミティアから引っ張ってくる新人のために使ったほうが数段マシ。







巻頭カラー「ドリームバスター」(作画:中平正彦、原作:宮部みゆき

 ベストセラー作家の原作(徳間書店刊)を、「破壊魔定光」でSF方面から注目を集めた(ものの尻切れトンボ気味に終了させられた)中平がマンガ化。原作は未読だが、かなりうまく咀嚼してると思わせる。“悪夢”の描写は、ジブリ映画のように丁寧で分かりやすく、それでいて不定形な気持ち悪さも。その“悪夢”を滅しに活躍するRPGのヒーローのような主人公=ドリームバスターと交錯する、“悪夢”に追われる一方の登場人物=子持ちの母親の視点。そのあたりの異色な取り合わせもなかなか新鮮。


「ルー=ガルー 忌避すべき狼」(作画:樋口彰彦、原作:京極夏彦

 繊細な文学少女の動悸とスポーツ少女の汗と熱の両方を一度に描写できそうな、作画が魅力的。こちらも原作は未読。京極が読者の意見をぶっこみながら書いた実験作らしい。この第1話で読者が掴んでおくべき世界観や設定をうまく提示できてるかというと、そうでもないような。


「XENON」(神崎将臣

 前の掲載誌で未完だった神崎の代表作の復活編。さっぱり分からないストーリーなので、追いかけていきたい読み手は、近々徳間から出る前作のコンビニ用廉価版で予習しとく必要が。


「MMリトルモーニング」(安永航一郎

 商業連載は何年ぶりだ? このテンポ、このギャグ。THE80年代=バラダギかわいいよバラダギ、だった人は皆で応援しよう。


「子はカスガイの甘納豆」(伊藤伸平

 えっと、創刊号の中で一番面白かったです。この夏に子供が生まれた作者の子育て日記マンガ。これが一番ってのはどうなのと思うわんでもないけど。ちょうど「時かけ」が受けてるんだし、「はるかリフレイン」の続編的なのでもいいと思うんだけど。


「REVIVE!」(五十嵐浩一)

 かつて秘蔵のオタクコレクションを燃やした元オタサラリーマン管理職41歳(14歳の子持ち)が、好きだったマンガヒロインのフィギュアを手に入れて……。読者層を一番狙ってる感じ。フツウかなぁ。


     

読切「ネムルバカ」(石黒正数

 この作者は、作風が広いといっていいんだろうか。繋がりそうに無いネタを、うまく繋げたように見せるのがうまい。それでもって、面白い。


「三つ目の夢二」(作画:騎崎サブゼロ、原作:大塚英志

 パラレルワールドの大正時代で、亡き恋人の写真をなんとか撮りたいと願う若き竹久夢二が登場。まずはごろうじろ、といったところか。大塚原作の現実の偉人・有名人を据えた作品は「オクタゴニアン」が新現実休刊でどうなったのか追ってないんだけど、作画を担当していた杉浦守が来月号でケルベロスのマンガ版を始めるので、宙に浮いたと思っていいんだろうなあ。


巻中カラー「陽だまり少女紀行」(松本規之

 この人はこういうイラスト連作っぽい作風のほうがいいよな。阿ロ伝のモノクロエロマンガは読めるレベルじゃなかったんで。


不条理日記2006」(吾妻ひでお

 「羊 踊りだす」が図抜けて面白い。創刊号の二番手。


読切「ちょいあ!」(天蓬元帥

読切「その未来は今」(石坂ケンタ)

 アサミ・マートは、コミティアでたまに買ってたサークルの人。8/27のティアに出してた出張編集部の成果なのかも。ほんわか女中さんが膝枕の短編8ページ。ほかの2作も、おそらくそちらからだろうということで並べた。古株の作家やコアな読み手ばかりを相手にするんでは物足りなさ過ぎるので、こういった登用は断然歓迎。エイベックスとタイアップした新人賞の「龍神賞」より、出張編集部のほうで発掘に力を入れていって欲しい。



月刊 COMIC (コミック) リュウ 2006年 11月号 [雑誌]

月刊 COMIC (コミック) リュウ 2006年 11月号 [雑誌]