集英社ガンガレ。
遅ればせながら、「創」2月号の毎年恒例大手出版社特集。人気マンガのデジタル配信やカラー化に力を入れてる集英社の項での、ケータイマンガ関連のある記述。
一画面で全誌面を見せることのできない携帯電話の液晶画面で複雑なコマ割りのマンガを見せるために、編集部作成の指示書をもとに、各コマ間の移動の速度や大ゴマのスクロール速度や方向、フェードインやフェードアウトなどの画面処理まで事細かに設定。このような集英社が開発したスクロールなどに関するフォーマットは、独占するのではなく、他社にも公開するとしている。共通フォーマットが普及することで、読者に対してより安価にデジタル化したマンガ作品を提供していくことができるからだ。
公開と。こりゃあいい、是非やってもらいたい。ケータイマンガの演出は、セルシスの「ComicStudioEnterprise」などが知られているけれど、このソフトの効果的使い方をレクチャーする教本みたいなものと見ていいんだろうか。
ソフトなんてのは何でもそうだろうが、あれもできますこれもできます機能満載ですといったって、使いこなせるかどうかは別問題。ケータイマンガなら、コマの切り張りや拡大縮小、スクロールのやり方を一通り覚えましたじゃあ今日はこれとこれの何本をあげてねって、すぐに出来るもんでもない(はず)。適切な演出を適切なシーンで適切なタイミングで行えるかどうかは、演出する人のセンスに負うところも大きい(はず)。でも、個人の力量の差をマニュアルで補えて、ケータイマンガ全体の演出の底上げができるなら、どんどんやっちゃってください。特に、そういった演出はなるべくなら社外秘にしときたい種類のノウハウなんじゃないかと心配してたところだったので、なおさらやってもらいたい。
また、おそらくだけど、ケータイ以外のデジタル配信でも、集英社は他社より一歩リードした演出ノウハウを蓄積してるっぽい。PSPのデジタルコミック配信でも、ジャンプ系マンガはコマの切り張りやタイミングを「分かった」上でやってるように見える。たとえば、小学館のPSP配信マンガなんかは、演出に何の手間隙もかけず1ページを上・中・下の3段分割で画面を切り替えてくだけで、味も素っ気もなく読みにくい代物だった。マイクロソフトのスマートフォン用OS「Windows Mobile 6.5」でも、集英社はマイクロソフトと出版系で唯一、直接提携(集英社7:マイクロ3の取り分設定で)しているようだし、スマートフォン配信でもある程度の演出のノウハウを持ってるのかもしれない。
まだまだ先行投資の部分が大きくて、まともな収益になるのは先かもしれないけれど、マンガでは大手3社の中で一番体力を残してそうな集英社が、もしもリードをしていける可能性あるなら、期待はしちゃうよね。配信会社が圧倒的優位にある現状に風穴をあけるくらいの。
B5〜A4サイズの電子ブックが本格的に広まって、コマを切り張りしなくてもページをまるごと表示できるようになった場合も、外国の読者はマンガの読み方が分からなかったりするので、紙芝居ビューのほうが市場を広げやすいかもしれないし、演出の技法が全くのムダになるということもおそらくないだろうし。
でも、まぁ、演出の部分ってのは、極論を言うと、放っておいてもある程度の時間をかければ「こうしたほうが読みやすいんじゃね?」というノウハウは個別に広まっていって、だいたい普及するもんだろうなーというレベルの課題ではあって。フォーマットやマニュアルがあることによて、それが早まったり効率的になったりはあるけれど。
問題は、やっぱりデバイスと導線と代金回収で。マンガは音楽産業みたいにはいかんよ(音楽はデジタルデーターになってもスピーカーとイヤホンという最終デバイスは変わらず+数メガの軽いデータを携帯電話回線でいつでもどこでもダウンロードできて+携帯電話代金とまとめ払い)。
ところで、Michao!つぶしておきながら本誌+別冊+増刊の数撃ちゃあたる物量作戦は、高い給料払ってんだからその分もっともっと働けの理屈で社員はしぶしぶ応じてるのかもしれないけど個人事業種のマンガ家は付き合ってられるもんかなぁと、講談社の項を読みながら思った。しかも数撃ちゃたるでコミックのタマ数増やしておいて、2009年11月期のコミック売上が1%しか伸びてないって、どうよ。
- 出版社/メーカー: 創出版
- 発売日: 2010/01/07
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