ヤングガンガン 14号

 巻頭カラー新連載、猫井ヤスユキDrop☆Kick」。
 便利屋で働く男と、取立て屋をしてるその幼馴染、アイドル志望のアーパーっぽい女の子が都会で出会う。前回、新連載陣のカラーはストリート系から強化してきてるようなことを書いたが、そのど真ん中を狙った感じ。
 猫井ミィの同人誌は3年前くらいに勝ったガンパレのを最後にしてたんだけれど、その頃からすると、えらく絵柄が変わっている。ごつごつした感じもあった描線が滑らかに。上條敦士か奥浩哉か、という感じの“ぬめらかさ”が強調されてきた。同人ではほとんどトーンは使ってなかったと思うが、今回商業に出てきた絵柄は、やっぱり他の作家に比べれば白い。使ってるトーンの種類もそんなに多くない。
 で、なんだ。この絵柄で描かれたアイドル志望のユキという女の子が可愛くない。夢見がちで現実を知らない自分勝手な性格だから、ではない。そーいう性格のキャラは別に珍しくない。ただ、下膨れでまつげばっちりの造形でそーいうことを連発されると、こにくたらしい。便利屋に人間違いでキックされた取立て屋に、黒ベタのコマで「訳わかんねー」って心の声を言わせてるけれど、そこまでのやけに細かいぶつ切りなコマ割りや構図の連続はスピード感が乏しい。ほんとに分かんねー。壮快さまで届かず終わっている。
 便利屋の女社長が登場する38ページは、便利屋が入居するビルの絵でページの半分を使ってるが、これは1/5くらいのペーズ占有率で描いてる女社長の顔をもっとアップにするべきだ。ただの雑居ビル然とした概観を何の変哲もなく描くより、オシャレ眼鏡の美人社長のほうが、誰だってうれしい。

 とりあえず、次々号掲載分くらいからは、コマの数を半分に減らしてみて、アップを増やしてはどうだろう。



 巻中カラー「荒川アンダーザブリッジ」。
 カラー部分の煽り文字がくさい。ところで、サイン会にくる層が予想もつかないんだけど、どーいう層が読んでるんだろう。


 「ドラゴンズヘブン」。
 格闘シーンは楽しいなぁ。設定の適当さをうだうだ突つくのはもういいや。と、言いつつ、次号で溜まった分を書き連ねそう。


 「すもももももも」。
 要所要所で細かく入るギャグと淡いエロが、確かにのってる。作者も手応えを感じながら描いてるのではないか。
 羽目板モードで「ご謙遜を?」と返すすももが、今週の一番。画面上、手前にいるすももが、奥の方から白目を向ける主人公の視点で、のーみそ空っぽの羽目板として描かれる。羽目板は眼を表す穴=つまり節穴が2つ開くだけなので、すももが正面を向いてるとも、後ろを向いてるとも取れる。
 普通なら、主人公視点と読者視点をリンクさせるために、主人公が手前側に描かれるはずだが、羽目板を大きく描くためにあえて、主人公を奥に配置。一方で、すももを後ろ向きの構図にさせないために、前後のないただの羽目板にする。この奇抜さがあまり考えずスッと出てきてるなら、たいしたもの。


 「黒神」
 共存均衡とかいう、理不尽な死の法則に、主人公サイドで異能の力を発揮するクロも、諦めしか見せない。トラックで轢かれる少女の死を、おおよそ予測しながら、可哀想にで済ませてしまったヒロイン。あまりショックを受けてない様子を、主人公に問い詰められ、しどろもどろ。
 連載当初からなんとなく漂っていたダークな雰囲気の一端は、明るさを振りまきながらも実は、そんなにがむしゃらでもない、ヒロインの中途半端な前向きさにあったようだ。
 初お目見えでいきなりマンションから落とされる青年、という相変わらず唐突なストーリーへは突っ込みたいが、クロのダークサイドにようやく踏み込みつつあるので、相殺。


 「マンホール」。
 面白いけれどさ。この作家の人は月1連載のほうがいいんじゃないか。20ページ使って、全裸中年の移動距離が、おそらく数十メートルくらい。

 「Miss ウィザード(仮)」。
 ああ、ヤってなかったんだ。次々号の掲載は巻頭カラーのようで、どうやら人気あったらしい。


 「戦線スパイクヒルズ」。
 可愛い女の子に言い寄られてじゃあ、男のほうは実際どうするの? というところを、生まれて初めての好きを抱えて、授業をフケてキクチの学校へ走る主人公。10代の男の好きという気持ちを、マニア系の青年誌でストレートに描いてるところを評価したい。


 「死がふたりを分かつまで」。
 資金と技術と情報の調達先がすごい適当だ! 座頭市にプラス、ハングマンまで。ワイヤフレーム視点の説明が挿入される。このフレーム絵は、いまのところしびれるような構図やキメのシーンの使い方が見当たらない。アクションシーンでフレーム絵を使っても、単に安いゲーム画面みたいなるだけだろうし。なにかうまい見せ方ができれば。


 「バンブーブレイド」。
 えーと、正直、今、ヤンガンで一番最初に読んでる。気軽に読みやすい。作品単体として見るんじゃなく、この雑誌のなかのポジションとしていい位置に付けてきてるんじゃないか。猪突猛進のサヤが出てきてから、雰囲気に明るさというか救いが出てきた。今回は、レギュラー陣のなかでもっとも浮いてたと思われる、都の話。サド気質と剣道がうまくリンクして、どうやら更生の一歩を踏み出せそう。よかったよかった。


 「犬神ゲル」。
 んー、こっちもカラーとしては気軽に読める作品のはずなんだけど。ちょいとネームが多いか。



 エピソードⅢ上映記念でスターウォーズイラストコラボ企画。大和田秀樹太田垣康男ヒロモト森一。大和田のピカピカC3POの決めポーズがよかった。次号の企画2段目は、田中達之林田球が登場。田中は、いつマンガ単行本企画をフィニッシュさせるんだろう。


 あと、中川 翔子。ピンクのビキニが可愛かった。