今日の事件屋稼業

 昨日、今日と4巻、5巻を読んだが、1〜3巻より抜群に面白い。

 4、5巻の連載時期はおそらく80年代中盤から後半あたり。つまり、バブルもっとも華やかなりし頃。

 私立探偵の深町丈太郎がどれだけハードボイルドを気取ろうとしても、景気のいい世間からすれば、ただのひねくれものであって、それを理解するような人間も1〜3巻の頃からすれば少なくなっている。

 ヤクザの黒崎は、シノギの一部を株取引や投資に移行させてるし、旅行してる間に地上げ屋にラーメン屋を物理的にショベルカーでつぶされた店主は、もともと流行らなかったためつぶれるしかなかったそのラーメン屋と引き換えに1億円をせしめる。同じような土地転がしの話では、警察と土建屋に後押しされた暴力団追放のマンション住民運動で、1割り増しで事務所の入ってる部屋を買い取る条件でていよく追い出される。

 それに深町もヤクザも悪徳ポリも情報屋も拳銃のレンタル屋も、みんな年をとっていく。老後のこともそろそろ考えたいし、娘だってもう高校生になった。

 終いには、深町が賃貸する部屋の家主である行かず後家の歯医者までいっしょになって、廃屋のビルで、対戦車用ロケット弾まで持ち出してドンパチごっこ。スマートにあくどく稼がなきゃならない時代になって、深町たちのような泥臭い人間には、向こうから絡んでくるトラブルもなくなって、自分らだけで何の特にもならないドンパチをして、なんだかよく分からない鬱屈を晴らすしかない。たまに海外から舞い戻ってきたアウトロー崩れをまた海の向こうに送り返すくらいしか、揉め事らしい揉め事もない。

 ハードボイルドが生きにくい時代にハードボイルドを貫くもの悲しさ、というハードボイルドものが、20年前には描けたのだな。



 で、今は、大陸系の武踏派マフィアブームも収まってきて、歌舞伎町は「安全・安心」をスローガンにするような街になってしまった。もう60前後になった深町たちは、どこで誰とハードボイルドしてるのかしら、とは思いをはせてしまうよな。