ヤングガンガン 20号
今回もまず断っておくが、あさって発売の21号の感想ではない。
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ダブル連載がスタートした今号。大島永遠の「同棲レシピ」と、楠桂の「ビターバージン」。
週刊アクション休刊後、新規読者層の開拓を狙ったコミックハイ!の創刊で「女子高生」が柱となった上り調子の大島と、各社各誌で様々なカラーの作品を描いてきた作家歴20年以上のベテラン楠の2人。
前号で少女サッカーモノの新連載を始めた瀬口たかひろも、作家暦は長いし「オヤマ菊之助」といった中ヒットを飛ばした実績をもつ。
大島と楠の新連載は、正確には、「同棲〜」が前後編読切からの連載昇格、「ビター〜」が集中連載から中休みを経ての連載再開。瀬口のように、しょっぱなから新連載というカタチではなく、テスト期間を経てゴーサインが出たことになるが、そこは二人のこと、きちんと好反応を得たようだ。
編集部的には、手堅い集客を期待しての当番のはず。
12号からの新連載攻勢で連載が始まった「Drop☆Kick」「あい(はーと)どる」「ドラゴンズヘブン」「死がふたりを分かつまで」の4作品は、「Drop〜」の猫井ヤスユキと「あい〜」の高瀬志帆はメジャー誌での知名度はまだ低い。「ドラ〜」の笠原夕生と「死が〜」のDOUBLE-Sは、原作者がそれぞれラノベ業界とマンガ原作で有名だが、作画担当の2人は、ほぼ無名。
ここまで読んできて、4作品に各話ごとにガーンときた印象をもったことはあっても、それが毎号はまだ持続していない。まだまだ盛り上がれる余地を残しているとも言えるし、「すもももももも」を始めとするどの作品も単行本化されてから一気に認知度と評価があがっていることを考慮すると、そこからブーストする可能性があるとも言えるが、毎号が勝負の雑誌ベースでは、そのくらいの評価。
で、ベテラン陣による3作品。
悪くない。
一方で、ベテランや中堅の掲載は、ほとんど読み切りかゲスト扱いでやってきた今までの方針から、本格登用に切り替えたように見えたりはする(単に、以前の作品が読み切りや集中連載時に人気が取れなかっただけかもしれないが)。自分のように3人のファンではない読者にとって、あまり新味をもって訴えるものはない。
それでも、一定水準はなんなくクリアしている。安心して読める、とは言える。
ただ、いつものように注文をつけてみると、現看板作品の「すもももももも」や、中堅どころの人気の「セキレイ」「BAMBOO BLADE」「MISS ウィザード(仮)」といったマンガと、作品のカラーというか雰囲気が、何かかぶってるように感じられるところ。
お気楽コメディちょいお色気アリ、なマンガをこれ以上増やしても、ちょっと食傷になってくるかな、と(「ビター〜」は昼メロ的ドロドロ設定を配してはいるが絵柄が明るいし、楠はコメディ魂が根底にある作家だと個人的に思ってるので)。
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ここから、いろいろ含んだ本音。
つーかね、前号の感想でも書いたけれど、粒ぞろいではあっても、毎号毎号を楽しみにするほどの作品が、まだねーのよ。いまさらなよっちい話をベテラン引っ張ってきて描かせても、マンガの本柱にはならないと思うのよ。こちとらは、ホントに読みたいマンガがあれば、その一作品のために雑誌を買う、わりと古めのマンガ読みなのよ。でも、それに値するマンガが正直、見当たらない。
12月で発刊から2年目に突入しようとする雑誌がそんなんで、スクエニの役員や株主的にOKなのかどうか、量りかねるんだよ*1。単行本が売れて黒字は確実に出てるだろうから、初年度としてはOKなのかもしれないけど。
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「マンホール」。
相変わらず牛歩だが、いい感じに不気味さが増してきた。目次ページの作者コメントによると、次号はさらに不気味なヤマを提供してくれるそうなので、期待。
「戦線スパイクヒルズ」。
91年当時で市販されてる高級なエレクトロニクス技術(テープ録音の盗聴装置など)を利用した騙しあいの応酬が、そのへんにロートルな自分に心地よい。前号のスウガクを助けにいく話だって、今なら携帯で連絡すれば済むことだし、忍び込んだヤクザの事務所だって容易な侵入を阻む防犯装置くらいは仕掛けられていたろう。
「BAMBOO BLADE」。
「ハイスクール奇面組」の柔道編なみに、すちゃらかな試合展開でおさめてくるとはね。予想外。きっちり着込んだ剣道衣の少女たちを可愛くかけてて、満足ですよ。
「セキレイ」。
バーズで前から別の連載をもっていることを、最近知った。立ち読みした限りでは、そちらは話の組み立ては普通にできてるようなので、なんでこっちのマンガは筋立てや世界観がすんなり頭に入ってこない話なのか不思議である。
「黒神」。
いまどき、漆黒のライダースーツがカウル付ビッグバイクで徒党を組んで倉庫街で襲ってくるんですよ。そこまで昔を懐かしむつもりはない。
*1:もちろん、上におもねる、ということを推奨するのではまったくない。増刊から独立創刊したなら、ある程度の目標ってものがあるはずで、そこのところクリアできそうな感じなのか?という部分が知りたいなぁ、という一読者の我がまま、だな。